夫が老齢年金の繰り下げ受給している場合に亡くなったら、妻がもらえる遺族年金には、繰り下げて増額した金額が反映されるのでしょうか?

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2024年04月04日 18:31  All About

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年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、夫が老齢年金を繰り下げているときに亡くなった場合の遺族年金について、専門家が解説します。
老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、夫が老齢年金を繰り下げているときに亡くなった場合の遺族年金についてです。

Q:夫が老齢年金の繰り下げ受給している場合に亡くなったら、妻がもらえる遺族厚生年金には、繰り下げて増額した金額が反映されるのでしょうか?

「遺族厚生年金についての質問です。夫が老齢年金の繰り下げ受給(5年間の繰り下げ)をしている場合に亡くなったら、妻がもらえる遺族厚生年金には、繰り下げて増額した金額が反映されてもらえるのでしょうか?」(生きてきた様に死んで逝く人さん)

A:夫が老齢年金を繰り下げ受給していても、妻の遺族厚生年金は繰り下げしない本来の年金額で計算されます。繰り下げ増額した分は反映されません

老齢厚生年金をもらっている夫が亡くなり、妻が自身の老齢厚生年金を受け取る権利がある場合、妻がもらえる遺族厚生年金の金額は「夫の老齢厚生年金の4分の3の額」と「夫の老齢厚生年金の4分の3の額と妻自身の老齢厚生年金の2分の1額を加えた金額」を比較し、有利な方となります。

前述のように計算された遺族厚生年金が、妻自身の老齢厚生年金の金額より多い場合は、自身の老齢厚生年金は全額支給されたうえで、遺族厚生年金から妻自身の老齢厚生年金を差し引いた差額も支給されます。

もし夫が老齢厚生年金を70歳で受け取れるように繰り下げ受給していても、遺族厚生年金の計算に使う夫の老齢厚生年金は繰り下げ受給による増額がない本来の老齢厚生年金の金額です。
例えば70歳で老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに繰り下げ受給している夫が71歳で死亡し、死亡時の老齢厚生年金213万円、老齢基礎年金113万6000円だった場合で考えてみます。この場合、老齢年金は5年間繰り下げていますので、42%(0.7%×60カ月)増額していることになります。

夫が死亡した場合、妻がもらえる遺族厚生年金の計算には42%(0.7%×60カ月)増額した老齢厚生年金213万円は使いません。213万円のうち、繰り下げ受給の増額率42%が乗じられる前の本来受け取れる老齢厚生年金額が150万円、繰り下げ増額分63万円ですので、遺族厚生年金の計算に使うのは本体の150万円です。

夫の死亡時、仮に妻が老齢厚生年金を20万円受給しているとすると、夫の老齢厚生年金の4分の3の112万5000円から20万円差し引いた92万5000円が妻の遺族厚生年金額となります。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。(文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士))

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