ネコが縄張りを主張したり、異性にアピールしたりするために壁などにかける「スプレー尿」は強烈な悪臭を放つが、通常の尿と化学的な成分に違いはないことが分かった。悪臭物質を生み出す酵素たんぱく質「コーキシン」に、尿を壁などに付着させやすくする作用があるため、悪臭が拡散するという。
岩手大農学部教授の宮崎雅雄さんらが尿の化学分析やガラス板への付着実験で解明し、10日付の国際科学誌「ジャーナル・オブ・ケミカル・エコロジー」電子版に発表した。
スプレー尿には肛門腺から分泌される悪臭物質が含まれるとの説があったが、否定する結果となった。宮崎さんは「コーキシンを分解する物質が見つかれば、スプレー尿の悪臭を消すクリーナーに応用できるかもしれない」と話している。
コーキシンはネコの腎臓で作られ、尿に放出されるたんぱく質で、日本語の「好奇心」にちなんで名付けられた。宮崎さんらが2003年に発見し、尿の悪臭物質「フェリニン」を生成する触媒として働くことを06年に解明した。
宮崎さんや岩手大大学院生上野山怜子さんらは今回、成体のネコ7匹からスプレー尿と通常の尿を採取し、揮発成分を比較したところ、違いはないと判明。ネコも臭いを嗅ぎ分けられなかった。尿から精製したコーキシンを水に溶かすと、濃度が高まるにつれて溶液の表面張力が弱まり、垂直に立てたガラス板に付着しやすくなった。