働く高齢者の「年金を減額」…『在職老齢年金』見直しは必要か? 現在の制度、論点を専門家が解説

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2024年04月14日 06:20  TOKYO FM +

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働く高齢者の「年金を減額」…『在職老齢年金』見直しは必要か? 現在の制度、論点を専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)。4月10日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「在職老齢年金の見直しは必要か?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


※写真はイメージです



岸田文雄首相は4月4日(木)、日経新聞のインタビューで一定の給与がある高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金」の制度改革に言及しました。

◆「在職老齢年金」とは?
60歳以降に在職(厚生年金保険に加入)しながら受ける老齢厚生年金。賃金と年金額に応じて年金額の一部、または全部が支給停止される場合がある。

賃金と年金額の合計額が50万円(※)を超える場合、50万円(※)を超えた金額の半分が年金額より支給停止(ただし、老齢基礎年金は全額支給)。

また、70歳以降についても、平成16年(2004年)改正により平成19年(2007年)4月から同じ取扱い(ただし保険料負担は無し)。
(※)令和6年度の支給停止調整額

塚越:あまり聞き慣れない「在職老齢年金」という制度ですが、これは一定の収入がある高齢者の「厚生年金受給額」を減らす仕組みです。この減額分は、受給を遅らせて年金を増やす「繰り下げ制度」の対象にもなりません。

ただし、カットされる部分は厚生年金であって、「基礎年金」は全額支給されます。ちなみに、この50万円は賃金の変動に応じて毎年度改定されます。昨今の賃上げの影響で2年連続の引き上げになっています。また現在、この制度に該当している方は49万人で年4,500億円の年金がカットされています。

◆なぜ制度の見直しをする?

吉田:この「在職老齢年金」の見直しについて、どういったことが議論されていますか?

塚越:年金をめぐっては、5年に1度の財政検証があり、今年が検証の年にあたります。それを受けて来年(2025年)に制度の改正を予定しています。これに先立って、厚生労働省は去年の10月から、社会保障審議会の部会でこの制度の廃止や減額基準の変更を含めて議論を進めています。

大きな論点としては、3つあります。

1つ目は、日本は少子高齢化で、高齢者にもできるなら働いてもらいたい。ただ、「在職老齢年金制度」は高齢者にとって働くほど損になる制度なので、労働を控えるようになってしまう懸念があります。

あるいは、厚生年金が適用されない事業所に移ったり、短時間の働き方に転じたりする方が増えるのではないかという意見があります。実際、厚労省がおこなった意識調査では、年金額が減らないように「就業調整する」または「している」などと回答した方は、60代後半の会社員で45%を占めました。

2つ目が、不動産や顧問契約といった給与以外の収入は対象外=つまり年金支給停止にならないので、この制度は不公平という意見もあります。このままいけば給料以外の方法で収入を得ようとする方も出てくるかもしれませんが、それはそれでいろいろな手続きが面倒という点もあります。

3つ目は、この制度は保険料に見合った給付を得るという原則に反しており、諸外国にも同種の仕組みはないという意見もあります。基本的には、制度の廃止を求める意見が多かったとのことです。

一方で、この制度の廃止や見直しについて反対する意見としては、高所得者の高齢者が優遇されるという意見や、年金給付額が増えて将来世代の給付が減るという理由が挙がりました。この制度の改正については、過去に何度も議論されていて、廃止は見送られてきた経緯があります。「年金込みで月額50万円の収入を超える高齢者」をどう捉えるかというところですが、いずれにしてもいろいろな意見があるので、結論までには慎重な議論が必要になります。

◆制度調整の検討など、議論の継続を

ユージ:「在職老齢年金」の見直しについて、塚越さんはどのようにお考えですか?

塚越:私は、廃止で良いと思います。65歳以上の給与所得者は、2007年に282万人だったのが、2019年で589万人になっています。全員が厚生年金の対象ではないにせよ、働く高齢者は増えています。

また、日本老年学会、日本老年医学会の調べでも、10〜20年前の高齢者に比べて現在の高齢者は身体機能が5〜10年若返っているといいます。さらに、昨今は物価高もありますし、長く働きたいという方もいれば、働かなければならないという方もいます。いずれにしても、働く高齢者が増えてきています。

そして、政府としても(社会が)人材不足と言われていますので、高齢者の労働を促進していこうと動いています。

そう考えると、在職老齢年金という制度は、長く働こうとする高齢者にとってペナルティを科すことになってしまわないかということになります。将来の年金財政も大事かもしれませんが、これまで働いてきた方の年金をカットするのは「ちょっとな」と思います。

いま(厚生年金と給与収入を合わせて)50万円を超えると、50万円を超えた分の半分が年金カットになります。例えばこれを、80万円など高収入の方を対象にするなり、5割でなくても2割カットするなど、もう少し制度を調整する方法はあるのではないかなと思います。

いずれにしても、世代間で対立するのは良くないと思います。さまざまな意見はあると思いますが、働く方のことを考えると、私は廃止の方向で良いと思います。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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4月10日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月18日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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