採用を頑張っても若手がどんどん辞めていく……企業が今すぐ確認すべき3つの要素

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2024年04月16日 09:41  ITmedia ビジネスオンライン

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なぜ若手が辞めるの?(写真はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

Q: せっかく新卒採用を頑張っても、若手がどんどん辞めてしまい困っています。待遇も悪くないと思いますし、なぜこんなに離職が多いのか分かりません。このままでは管理職候補も育たず、どうしたらいいのか……。


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 若者の早期離職は、どうやったら止められますか?


●若者の早期離職が増加 背景に3つの理由


A: 一昔前は、転職は早まらず「3年は我慢しろ」という風潮がありましたが、今は我慢する必要はないという風潮に変わっています。


 「石の上にも3年」「長く続けていけば、会社にも慣れて、自然と仕事もできるようになるから」――そんなことを口癖のように言っていた時代から現代は大きく変わりました。


 企業が抱える悩みごとで常に上位を占めるのは「優秀な人材が確保できない」「人手が足りない」「採用してもすぐ辞めてしまう」といった人材にまつわる課題です。その中でも特に「若手が育たない」「新卒で採用してもすぐ辞めてしまう」といった問題を抱えている企業は数多くあります。若者が早期離職する理由は次の通りです。


(1)将来のキャリアパスが見えない


 早期離職をする若者は、入社後、会社に慣れ始める3カ月目ぐらいから、何らかの違和感を覚え始めます。そしてそれが払拭できずに、おおよそ半年〜1年ほどで離職してしまうといった傾向が見られます。


 希望に満ちあふれた気持ちで入社した若者は、実際の職場で本来活躍しているはずの世代の先輩たちが作業に忙殺されている様子や、最前線で活躍しているのが幹部層やハイキャリア層ばかりであることを目の当たりにします。それにより、入社前に思い描いていた将来像と現実とのギャップに直面します。


 そのような会社では、「大変そうでああはなりたくない」「あまりに凄すぎて自分は同じようになれない」など、若手社員の間で「憧れない現象」が生まれてしまいます。将来のキャリアイメージが全く湧かなくなってしまった若手社員のモチベーションは低下し、その結果、彼らに残された選択肢は離職一択。瞬く間にドロップアウトして、新たな道を歩み始めるのです。


(2)若者の離職理由1位は「人間関係」


 調査機関が実施しているどの調査結果を見ても、若者が早期離職する理由として「職場の人間関係」が最も多く挙げられています。


 起こりがちなケースとしては、今まで身を粉にして働いてキャリアを積んできた上司が、多様性やワークライフバランスを重視する若手社員に対して、全く信頼関係を築けていない状態で、自分のポリシーや「こうあるべき論」を押しつけて育成してしまう失敗例があります。そのような上司に指導を受けた若手社員は「仕事がうまくいかない」「この仕事は自分には合っていない」「相談できる人が誰もいない」と一人で悩み、やりがいや成長を感じられずに、入社後数カ月で退職してしまうのです。


 人間関係は歯車同様で、育ってきた環境や時代が異なる同士の行動や思考は最初からうまく?み合うはずがありません。調整しないままにむりやり回し続けると、あっという間にその人間関係は崩壊してしまうのです。


(3)脆弱なストレス耐性


 「将来成功したいから」「使命感」といった動機で、プライベートを犠牲にして熱心に仕事をし続けることが当たり前とされた時代はかなり昔のことです。


 現代の若者は、時間外労働や休日出勤などの長時間労働で自分を犠牲にすることを望まないのはもちろん、労働時間が長時間に及ばない場合でも、ストレスを感じることに非常に敏感です。


 そのため「自信がない」「プレッシャーがある」いった不安や恐れを感じながら、自分の健康や安全を危険にさらしてまで熱心に働こうなんてこれっぽっちも思いません。自分の身に危険信号が点滅すると即回避しようとするのです。「自分の身を犠牲してまで働く意味なんてない。そうなる前に辞めたほうがマシだ」と考える傾向にあります。


 その一方で、ホワイト過ぎてやりがいをなくす、ホワイト離職も話題になったのですから、塩梅(あんばい)が難しいですよね。


●どうすれば食い止められるか 企業に求められる3つのアクション


 不景気時代や就職氷河期を生き抜いた世代からすれば「ただの甘えだ!!」「仕事をなめるな!!」と激怒したくなるかもしれませんが、多様化の令和時代に一昔前の価値観は全く通用しません。


 それでは、どうやったら若者の早期離職は止められるのでしょうか? 会社としてどういった点に着目して対策や見直しをすべきか、それぞれのポイントを見ていきましょう。


心理的安全性を重視する


 心理的安全性とは、組織の中で自分の意見を不安なく表現できる状態のことです。心理的安全性の高い組織では、自分の発言が否定されることがないため、メンバー間での意見交換が活発になり、コミュニケーションが良好になります。


 また、失敗しても非難されたり責められたりしないという安心感が組織全体で共有されているため、積極的にチャレンジできる環境なのです。心理的安全性の確保できている会社こそ、若手社員がモチベーション高く成長していける組織になります。


キャリアイメージができることが大事


 若手社員が自身のキャリアパスを見据えるためには、明確なキャリアプランが必要です。


 会社の中長期ビジョンを示していくことで、従業員は会社がどのように成長していくのか理解できます。そして、それにあわせて「自分たちはどのように成長できるのか」とキャリアプランをデザインできるため、結果として若手社員が成長できる組織の環境が整っていきます。


 若手社員の成長を促進するためには、明確な人材育成プログラムやスキルアップのための研修制度も重要なツールとなります。


 また、将来の成功像をイメージさせるためには、会社で活躍している人の仕事ぶりや行動パターンなどを文書化しておくことも有効でしょう。またそれらを人事評価制度の評価要素に入れておくことで、仕事での活躍と評価がリンクするため、公平に人事評価することができます。


人間関係が何より一番大切


 そして何より重要なことは日頃の上司との関わり合いでしょう。キャリアプランや人材育成プログラム、研修制度、人事評価制度といった成長土台を明確にしたうえで、実際の現場のマネジメントでは、明確な目標設定行い定期的な1on1を実施し、達成度をチェックしていきます。チャレンジして成功した場合には積極的に承認し、小さな成功体験を積み重ねて成長を実感させ、モチベーションアップを意図的作り出すのです。若手社員と良好な関係性をつくり、彼らの自己実現を支援するマネジメントすることが大きなカギとなります。


 このような取り組みにより、組織全体で新人を育成し、若手社員および組織全体を「働かなければならない」から「働きたい」に転換させることで、若者の早期離職を食い止めることができるのではないでしょうか。


●著者紹介:薄井 崇仁


2007年社会保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所入所、特定社会保険労務士。


2017年3月執行役員に就任。採用定着士、ジョブオペ認定コンサルタント、仕組み経営コーチ等の資格も保有。


入社以来、HRコンサルタント・アウトソーシングスペシャリストとして様々な規模、業種の企業を150社以上支援。また、IPO・M&A領域では40社以上の企業に対して、労務監査及び労務コンプライアンスチェックを実施。


研修講師としても、大手企業の人事部門担当者向け講座を数多く開催し、人事担当者のスキルアップを支援。


クライアント企業様が安心してビジョンの集中できるよう、HR領域全般でサポートしている。


このニュースに関するつぶやき

  • 「やりがい搾取」という手法が有効だったけど、これももう使えなくなったので・・。まず、採用を頑張りすぎると、会社の身の丈に合わない人が来るので、すぐに辞めてしまうのは当たり前。良すぎる人材はダメ。
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