水原一平だけじゃない…日本では違法なのに「スポーツ賭博」に手を出す人が増加中。海外に流出する“日本の賭け金”

0

2024年04月18日 09:01  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

元通訳・水原一平氏
「自分はギャンブル依存症」――。大谷翔平選手の銀行口座から巨額の不正送金が発覚し、元通訳の水原一平氏はこう告白した。そのギャンブルというのが、スポーツ賭博。違法にもかかわらず日本でも流行している!?
◆G7で日本のみ違法。解禁を待たずに利用者増

 元通訳・水原一平氏の一連の報道で注目を浴びることとなったスポーツ賭博。米ドジャース・大谷翔平選手の銀行口座から約24億円もの巨額を送金し、水原氏は4月11日に詐欺の疑いで告訴された。

 日本を除くG7では、ライセンスを供与された民間業者によるスポーツ賭博自体は合法だ(米国は州による)。だが、スポーツ賭博が違法の日本からも簡単にブックメーカー(スポーツ賭博の会社)のサイトにアクセスでき、入金して実際に賭けることが可能であるため、世界的な人気に釣られるように国内ユーザー数は増加傾向にある。

「スポーツは古代オリンピックの時代から賭けの対象でした。もともと賭けとの相性が非常にいいんです」

 こう解説をするのは、米国のスポーツビジネスなどに詳しい元プロ野球選手で桜美林大学教授の小林至氏だ。

「’23年時点で米国の賭け金の総額は年間18兆円。’18年以前はほぼゼロだったところに、新たな税収を生み出しています。単に勝敗予想だけではなく、設定された得点を超えるか、下回るかを予想するなど、さまざまな賭け方があり、『大谷翔平選手が出塁するか否か』といったリアルタイムで細かく賭けられるため、試合の視聴時間や没入感も倍増すると言われています。

その恩恵はマイナースポーツにも及び、深夜などメジャー競技の試合がない時間帯には、ベッティングありきで開催される地下卓球大会が、欧米で人気です」

◆八百長行為や依存症を誘発するリスクも

 税収増のみならず、ファン層や楽しみ方の多様化によるスポーツ産業活性化といったメリットがある一方、八百長行為や依存症を誘発するリスクは合法化に踏み切った諸外国でも議論が尽きない。

「1960年代からスポーツ賭博の民営化が進んできたイギリスでは、ギャンブル委員会という全国組織を設置し、ライセンス事業者の監査、依存症対策、不正行為の予防のため、関連事業者や国内外のスポーツ団体、警察組織と連携する体制が整備されている。

ただ、米国で解禁されたのは’18年とごく最近で、まだ黎明期。州単位の管理が基本で賭け金額など厳しく管理されているものの、ギャンブル依存症の相談は急増しています」

◆すでに2兆円が海外へ。日本での法制化は?

 欧州の大手ブックメーカー3社のうち、2社は日本からの顧客も受け付けている。試しにユーザーの多いアプリをダウンロードしてみると、日本語表示でわかりやすく、違法なサイトとは一見思えない。小林氏曰く、日本から海外のブックメーカーを通じて賭けられている金額は、すでに2兆円近いとも言われるそうだ。

「日本では公営競技が独自に発達し、中央競馬は4兆円を超える産業となっていますが、メジャー競技におけるスポーツ賭博は、より幅広い需要が見込めます。スポーツ賭博を合法化した場合、売り上げは5兆円を超えるとの試算もあり、そうすると1兆円程度の税収は見込めるのではないでしょうか。

ただし、解禁されると、公営競技の売り上げは減少する可能性は高いでしょう。スポーツ賭博の解禁に脅威を感じ、強く抵抗するのは、公営ギャンブル関係者かもしれません。

 現状、日本ではスポーツ賭博に関する民間ロビー団体が結成された段階です。くじの一環として法制化されているスポーツくじ『toto』は、法律成立まで6年。カジノは法律成立まで15年掛かっているので、近い将来での解禁は望めないでしょう」

 見えないところでスポーツ賭博のユーザー規模は拡大している。海外に日本の賭け金が流出している現状をどう考えるか。慎重な議論が求められる。

◆<スポーツ賭博の主な賭け方>

マネーライン……勝敗予想。最も一般的な賭け方

オーバー/アンダー……設定された得点を超えるか・下回るかを予想

ポイントスプレッド……どれだけの点差で勝つ・負けるかを予想

プロップベット……得点を入れる選手など、試合中の出来事を予想

◆<各国のスポーツ賭博の状況>

○ 合法
・イギリス(1961年〜)
・ドイツ(2012年〜)
・フランス(2010年〜)
・イタリア(2006年〜)
・カナダ(2021年〜)
・アメリカ(2018年〜 一部州は非合法)

× 非合法
・中国(香港とマカオは合法)
・韓国(一部施設では合法)
・日本

【小林 至氏】
桜美林大学健康福祉学群教授。元プロ野球選手。引退後はMBAを取得。球団経営の道へ進む。スポーツ経営やスポーツビジネスを専門に執筆・講演も多数

取材・文/週刊SPA!編集部 写真/産経新聞社
※4月16日発売の週刊SPA!特集「[スポーツ賭博にハマる]最新事情」より

―[[スポーツ賭博にハマる]最新事情]―

    前日のランキングへ

    ニュース設定