4万円台からの「Nothing Phone (2a)」は誰向けか Phone (2)との比較で分かったこと

0

2024年05月05日 10:31  ITmedia Mobile

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia Mobile

「Nothing Phone (2a)」と「Nothing Phone (2)」

 英Nothing Technologyによる最新のスマートフォン「Nothing Phone (2a)」。アイデンティティーといえるLEDの「Glyphインタフェース」により、通知や音量調整が視覚的に分かるのが最大の特徴だ。価格はメモリが8GB/ストレージが128GBのモデルで4万9800円(税込み)、メモリが12GB/ストレージが256GBのモデルで5万5800円だ。


【その他の画像】


 日本においては他に類を見ない見た目のNothingのスマートフォンは「Phone (1)」「Phone (2)」と続いていたが、どちらもハイエンドモデルだった。Phone (2a)はそれらとは異なり、よりお手頃な価格にNothingならではの機能をつめこんだような製品だ。製品の命名に関する考え方はGoogleのPixelシリーズに似ている。


 Phone (2)とPhone (2a)は何が違うのか、Phone (2)ではなくより安価なPhone (2a)を購入した場合に満足できるのかなど、気になる疑問について、2モデルの実機を比較しながら考えてみたい。


●グリップ力が増し、より持ちやすく 地下鉄の路線図に似たデザインは踏襲


 まずはデザインと持ち心地について確認する。最大の特徴である背面LEDとアウトカメラの配置はPhone (2)から大きく変わった。Phone (2)は中央に、大きなワイヤレス充電コイルに似た、iPhoneのりんごの形のように配置されている。対して、Phone (2a)はワイヤレス充電には対応しておらず、LEDがアウトカメラを囲むように配置されている。アウトカメラはPhone (2)が左斜め上にあるのに対し、Phone (2a)では本体上部に移動し、目玉おやじ感がある。


 本体下部に敷き詰められたパーツは「ニューヨーク地下鉄の路線図をシンプルでエレガントに図案化したマッシモ・ヴィネッリのデザインから着想を得ている」という。手帳型のケースなどを装着してしまうと、この外観は見えなくなってしまうが、クリアケースならこの象徴的なデザインを堪能できる。パーツの配置といい、LEDによる通知といい、個性の光る1台といえる。


 背面のパネルはPhone (2)とPhone (2a)ともにサイドフレームにかけて丸みを帯びている。素材はPhone (2)がガラスなのに対し、Phone (2a)は樹脂となっている。とはいえ、外からパーツが見えることに違いはなく、街中のビルや看板、空模様がガラスに映り、常に違った雰囲気の背面を楽しめるのも面白い。


 実機を手にして気づいた変化はこれだけではない。それはサイドフレームだ。Phone (2)はサラッとした質感のため、手汗で滑り落ちてしまうことが何度かあり、あまり気に入っていなかったのだが、Phone (2a)はザラっとした質感に。ヤスリで削られたような質感ではないが、Phone (2)より滑りづらくなりグリップ力が増している。


 Phone (2a)では待望の「モバイルFeliCa(おサイフケータイ)」に対応したこともトピックだ。Phone (2)では対応していなかっただけに大きな進歩といえる。FeliCaマークの印字はないが、FeliCaの位置はアウトカメラの左側なので、本体の上部を決済端末に近づけるようにして使えばよい。


●超広角カメラによる画像はゆがむも、ピクセルビニングで2倍でもきれいな仕上がりに


 続いてPhone (2)とPhone (2a)のカメラを比較する。アウトカメラのスペックはPhone (2)もPhone (2a)も同じで、2眼構成となっている。インカメラは前面上部のパンチホール(ディスプレイをくり抜いた部分)に配置され、こちらも単眼で変わらない。


・アウトカメラ


・広角:1/1.56型で5000万画素のイメージセンサーと、F1.88のレンズ(光学式/電子式手ブレ補正に対応)


・超広角:1/2.76型で5000万画素のイメージセンサーと、F2.2のレンズ


・インカメラ


・単眼:1/2.74型で3200万画素のイメージセンサーと、F2.2のレンズ


 作例も掲載する。撮影場所に「KITTE丸の内(東京・千代田区)」を選び、この建物の6階にある屋上庭園「KITTEガーデン」から東京駅にカメラを向けて撮影した。0.6×では超広角カメラによりワイドな絵<画、写真ですか?>を撮影できるが、下に収まった赤色の車がゆがんでしまう。


 1×、2×に切り替えると、ゆがみはなくなり良好な仕上がりとなった。東京駅舎のれんがの色や西陽による影は再現性が高く、青空の色も自然だ。特に満足できたのは2×での撮影だ。日頃からハイエンドモデルの望遠カメラを多用しているユーザーにとっては物足りないかもしれないが、被写体に寄れない環境でも少しズームしたい場合に役立つ。


 なお、どちらのモデルも4つの画素を1つとして扱うことで、受光量を増やしノイズを抑制する「ピクセルビニング」を採用している。通常の撮影モードを利用した場合は1250万画素で出力される。シャッター速度やISO感度などを変更できる、いわゆるマニュアル撮影が可能なエキスパートモードでは5000万画素で出力されるが、0.6×の超広角レンズは利用できない。


 2×での撮影でもきれいな仕上がりとなったのは、5000万画素のイメージセンサーで捉えた中心部を切り出すことで、画質を落とさずに撮影できるからだ。この技術は「クロップ」という言葉で説明されることもある。スマートフォンの中にはPhone (2)とPhone (2a)のようにサイズの制約やコンセプト、価格設定などにより、望遠カメラを搭載しない機種がある。倍率や表現力では望遠カメラにかなわないが、クロップにより望遠カメラなしでもきれいな仕上がりとなるわけだ。


 夜景も確認したい。場所を「東京ミッドタウン日比谷(東京・千代田区)」に変え、どちらも三脚やリモートシャッター機能付きリモコンなどを使用せず、あえて手持ちでフォーカスをオートにし、完全にカメラ任せにして撮影した。


 日中と違って0.6×、1×、10×では手ブレがあまり補正されていないことが分かった。一見するときれいに撮影できていると思うが、ビルの看板の文字や木々に粗さが出てしまう。特に10×ではビルの壁面に設置されたロゴがPhone (2a)だとやや不鮮明だ。Phone (2)では塗り絵のようになるが、ディテールははっきりとしている。


 一方、場所をネオンやライティングが激しい飲み屋街に変えて撮影してみると、2倍で撮影した写真がかなりきれいな仕上がりになることが分かった。店のネオンや電球などで明るい環境なら夜でもきれいに撮影できるようだ。飲み屋でNothing Phoneを自慢して、そのまま外で記念撮影するときは、2倍での撮影をおすすめしたい。


 日本らしい作例を見たい方は英Nothing Technologyのカール・ペイ(Carl Pei)CEOがPhone (2a)で撮影した画像をポスト(旧ツイート)しているので、参考になるかもしれない。余談だが、同氏は日本法人の立ち上げと、新製品発表会でプレゼンテーションを行うため、来日していた。


●プロセッサはミッドレンジ向け WebやSNS閲覧程度なら十分


 性能についても見ていこう。プロセッサはPhone (2)がQualcommの「Snapdragon 8+ Gen 1」、Phone (2a)がMediaTekの「Dimensity 7200」を搭載している。両モデルに「Geekbench 6」アプリをインストールし、ベンチマークを計測したところ、次のような結果となった。


・Phone (2a):シングルコアのスコアが1140/マルチコアのスコアが2601


・Phone (2):シングルコアのスコアが1742/マルチコアのスコアが4619


 結果から分かるように、性能はPhone (2a)よりもPhone (2)の方がよい。アプリの起動や切り替えなどはどちらもスムーズだが、Dimensity 7200のPhone (2a)はプロセッサに負荷のかかるゲームには向かない。とはいえ、ブラウザやSNSの閲覧など、一般的な使い方ならストレスを感じないはずだ。


 OSについては「Nothing OS 2.5」を採用。Android 14をベースにNothingが独自にカスタマイズしている。例えば、電話やブラウザなどのアプリアイコンはモノクロで表示され、時計などはドットを使ったデザインを採用している。Phone (2a)の製品ページにはPhone (2)の製品ページで案内されていなかったOS/セキュリティに関する記述もある。アップデートはOSが3年間、セキュリティが4年間、行われる。


 防塵(じん)・防滴性能についてはどちらもIP54となっており、「あらゆる方向からの水のしぶきに耐えられる」ように設計されているが、水没やシャワーには耐えられない。これから迎える夏、Phone (2a)を持って海へ出かけたいが、不安な人はスマートフォン用の防水ケースを持参した方がよさそうだ。


●Phone (2a)はコスパ良好も、さらなる個性に期待


 Phone (2)はハイエンドモデルの中でもお買い得とは感じつつも、おサイフケータイが使えないことが弱点だったが、Phone (2a)でそこを解消した。Phone (2a)は望遠カメラや高いパフォーマンスを期待する人には向かないが、これからミッドレンジモデルの購入を検討するなら、Phone (2a)は有力な選択肢の1つになるはずだ。


 1つわがままをいうとすれば、そろそろ背面LEDだけではない新しい要素が欲しい。着信や通知がスマートフォンのディスプレイではなく、背面で確認できるのは確かに便利だ。それゆえに「Nothing Phoneの大きな特徴はそれに尽きてしまう」感がある。板状のスマートフォンで個性が光るのは、他製品との差別化になるものの、日常生活シーンに踏み込んだ便利な機能も欲しい。次期モデルの有無は分からないが、Nothing Phoneがさらにユニークな個性を持つことに期待したい。


    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定