X(旧:Twitter)などでたびたび注目を集めている「緑のフクロウ」を見かけたことがあるだろうか? 語学学習アプリ「Duolingo(デュオリンゴ)」の公式キャラクター、「Duo(デュオ)」だ。
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語学学習アプリのアカウントと聞くと真面目なイメージを思い浮かべがちだが、同アカウントの投稿はそうしたイメージとは無縁だ。日本のネットミームに敏感で、一般ユーザーからのリプライ(返信)にはフランクに対応し、時には“かみつく”こともある。一方、アプリの宣伝はほんの申し訳程度にとどまる。
一体どのような戦略の下、公式SNSアカウントを運用しているのか。DuolingoのCMO(最高マーケティング責任者)、マニュー・オーサード氏に単独取材を行った。
●日本で最も「稼ぐ」教育アプリ
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Duolingoは英語のほかに、中国語、スペイン語、フランス語など42言語で100以上のコースを基本無料で提供している。リリース以降成長を続け、グローバル月間アクティブユーザー数は8800万人、日次アクティブユーザー数は2600万人を突破。現在では語学学習アプリのシェア9割を占めている。
日本に本格進出したのは2020年。米モバイルデータ分析ツール「Data.ai」の調査によると、日本国内における2023年のダウンロード数および収益で、教育アプリカテゴリーランキング1位となった。
成長を支えるのは、同社の「ソーシャルメディアファースト」なマーケティング戦略にある。米国では、アメリカンフットボールの優勝決定戦「スーパーボウル」で行った“5秒間のCM”や、出演者全員が異なる言語を話す恋愛リアリティーショーを模したエイプリルフールキャンペーンなど、ソーシャルで話題を集める施策を打ち、ファンを増やすことに成功している。
2023年のSNSにおける年間インプレッション数は30億超、特にTikTokの影響力は大きく、フォロワー数は1000万人を超えている。
Duolingoの公式SNSアカウントの特徴として、徹底的に親しみやすい人格を作り出したことが挙げられる。通常、ブランドには「一貫性を持たせる」のがマーケティングの定説だ。一方、Duolingoでは“一貫性”とは一つのトーンや一つのパーソナリティーではなく、もっと多くの面があると定義。
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キャラクターには人と同じように多様な側面を持たせ、ある日はハイテンションだったり、またある日は穏やかであったり、レッスンを行わない人を追いかけ回すクレイジーさを持ち合わせていたりもする。
●「ネタ全開」の公式アカウント、その裏側は
DuolingoのSNS戦略について、重要視している考えは何か。なぜ「ネタ全開」の投稿を繰り返すのか――。マニューCMOに聞いた。
――Duolingoの急成長を牽引(けんいん)しているマーケティング戦略について教えてください。特にSNS活用の観点から、成功の要因や大切にしている価値観は何でしょうか。
われわれにおけるマーケティングの役割はブランド構築にあります。特に注力しているのは「ブランドの人格化」です。メインキャラクターのふくろう(デュオ君)はインフルエンサーとして、一人の人間のアカウントかのようにSNSでふるまいます。
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このアカウントをフォローした人がコミュニケーションを取ったり、面白い投稿を楽しんだりすることで、Duolingoのブランド構築とブランドイメージの浸透につなげることを目指しています。こうした人格はプロダクトを売りつけるために動かすのではなく、見ている人に楽しさを提供することに重きを置いています。
まずはブランドを知ってもらい、楽しい印象を持ってもらう。そして語学の勉強をしようと思い立った時に、Duolingoを思い出してもらうことを目指しています。
――Duolingoはグローバルに展開しているが、人格は統一させているのでしょうか?
人格は各市場のトレンドや関心事に合わせ、適合させています。また、SNSアカウントに対するユーザーの声を聞きながら、何を楽しいと感じるのかについてインスピレーションを受け、投稿するコンテンツに生かしています。
各市場には責任者を配置しており、コンテンツを展開する上での判断や、オーディエンスの反応をとりまとめる役割を負っています。収集したデータは本国に集約し、ユーザーのインサイトを導き出しています。
●日本のユーザーならではの、ある特徴
――日本市場についてはどう見ていますか?
日本市場は、ユーザーにおけるアプリの利用時間が最も長く、有料版といったマネタイズへの転換率も非常に高いです。われわれのビジネスモデルに非常に合致していると感じています。
そして、テレビの影響力が非常に高いことも日本市場の特徴です。他の国ではそうでもなくなってきているのですが、日本では依然としてテレビが「キング」です。そしてやはり、Xの影響力も高いと感じます。
――日本におけるX公式アカウントを見ていると、ネットミームに非常に敏感な印象を受けます。日本人の中でも、届けたいターゲット像があるのでしょうか?
必ずしも特定のターゲットを絞っているわけではありません。言語を学習するというサービスは、全ての人がターゲットになり得ると考えています。
また、ソーシャルメディアで注目されている話題にうまく自社のブランドを絡めることで、ユーザーの関心を集めやすくなることが分かったため、ネットミームを取り入れています。われわれのブランドは遊び心を大切にしているため、そういったブランドイメージともうまくかみ合っていると感じています。
●SNSでバズることによる「2つ」のメリット
――SNSのアカウントを運営する上で、KPIとしていることはなんでしょうか?
オーガニックインプレッション(アカウントの投稿などを自然に見た人の数)を重視しています。どれだけの人に拡散・反応されたかを知ることで、投稿したコンテンツがブランド構築にどれくらい寄与したかという品質を計っています。
また、オーガニックインプレッションには、2つの相関があることが分かっています。一つは新規ユーザーの獲得です。ユーザーに楽しんでもらうことを一番の目的にしていますが、SNSに投稿したコンテンツが大きく拡散されると、新規ユーザーの獲得数も増えることが分かってきました。
もう一つはリテンション(既存顧客の維持)です。公式アカウントの投稿を目にした既存ユーザーはその内容を楽しんだあと、「今日のレッスンがまだ終わっていない」と気付きます。従って、SNSでの投稿やキャンペーンは、既存ユーザーへのリマインダーとしての働きも担っているわけです。
――日本市場に対する取り組みと今後の展開について教えてください。
引き続き、ソーシャルメディアチャンネルをつかったマーケティングに注力していきます。先ほども言った通り、日本はテレビが持つ影響力が強い市場です。そのため、われわれが展開している市場の中で唯一テレビCMの露出も行っています。こうした領域にも投資をしていく予定です。
また他企業とのパートナーシップや、他ブランドとのコラボレーションも検討しています。日本市場は、特にわれわれのプロダクトが受け入れられていると感じており、さらに幅広いユーザーにリーチさせたいと考えています。
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