組み込みハードウェアの祭典「embedded world 2024」で中国勢が躍進

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2024年05月14日 18:10  Techable

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embedded worldは世界的な組み込みハードウェア、マイコンの祭典で、2003年からドイツ・ニュルンベルクを皮切りに、上海・テキサスなど各地で行われている。基本的にB2Bの展示会で、マイコンメーカーと製品メーカー、それらを使って製品を製造するソリューション企業などのための展示会だ。
Raspberry Pi、Arduinoも産業向け製品を展開
組み込み向けマイコンは、ドローンや電気自動車などの最終製品に組み込まれることもあれば、工場の自動化機械を構成する部品となることもある。かつてはメカ的な機構で検知や振り分けが行われていた工場での自動化機械に、カメラなどのセンサーやロボットアームなどのインテリジェントな機械が進出するようになって久しい。

[caption id="attachment_233541" align="aligncenter" width="1024"] Raspberry Piブースで工業関係のパートナーを紹介するCEOのエベン・アプトン(中央)[/caption]DIYやプロトタイプの場面で多く使われていたRaspberry Piは、そうした工業自動化分野への進出が著しい。embedded world 2024でもブースを構え、CEOのエベン・アプトン氏が自ら取引先とやりとりしていた。Raspberry Piは工場の制御装置に使われるPLC(Programmable Logic Controller)関連や、今回のイベント中にSONYと連携して発表したAIカメラなどにおいて、パートナーを増やしている。

[caption id="attachment_233540" align="aligncenter" width="1024"] 産業向けツールを展開していたArduino Proブース[/caption]同じくDIYや教育向け分野での活用が多かったArduinoも、作業向けのArduino PROシリーズの一つとしてArduino PLC Starter Kitを発売(産業用機器メーカーのFinder社と協力)するほか、高性能なプロセッサを搭載したArduino Portentaシリーズを展開するなど、産業界へのアプローチを続けている。

embedded worldでもArduino PROのイメージカラー(Arduinoのブルーと違い、黒とレモンイエロー)で固めたブースを設置し、CEOのファビオ・ビオランテ氏を中心にさまざまなパートナーとミーティングを行っていた。
中国勢の躍進会場の各所に「China New Connection」という、中国のスタートアップや中小企業ブースが固まったコーナーが配置されていたが、そうしたコーナーを超えて中国勢の出展が目立っていた印象だ。Hall 5は台湾コーナーとしてMediaTekといった台湾企業が集められていたが、そのHall 5も中国大陸からの出展企業がより目立っているほどだ。

[caption id="attachment_233544" align="aligncenter" width="1024"] オンライン・安価で注文できるPCB製造サービスJLCPCB[/caption]深圳に本社を置く小ロットPCB製造サービスJLCPCBもembedded worldに初出展。同社は世界各地からオンライン・安価でPCB製造や3Dプリントなどのサービスを発注できることで、欧州でも多くのユーザを獲得している。

[caption id="attachment_233546" align="aligncenter" width="1024"] 中国のFPGAチップ大手GOWINも出展[/caption]GOWINは4年連続でブースを展示。同社のFPGAチップは中国含むアジアでの電気自動車市場で大きなシェアを持ち、車載向けを含めたシリーズを増やしている。FPGAが多く使われる分野である高速インターフェースやディスプレイ制御などのデモ含め、新型のArora Vシリーズを使用したデモを数多く展示していた。
人気のツールキットM5Stackも初出展深圳に本社を置き、日本にもユーザの多いIoTツールキットM5Stackもembedded worldに初出展。中国の新興企業を集めたChina New Connectionの一つである、Bluetoothモジュールを販売する深圳のMINEWや、Raspberry Piを使ってPLCカスタムソリューションを構築する上海のEDA TECなどと固まってブースを配置。

EDA TECブース。欧州の顧客といっしょに、YouTubeほかで公開するための事例インタビューや、テックYouTuberによる動画を撮影していた。

会場を回って営業していた、オランダのプロモーション会社。二人共テクノロジー分野でフォロワーを抱えるインフルエンサーだという。工業向けのembedded worldだが、コンシューマに近いブースを回って営業していたようで、M5Stackブースにも訪れた。

[caption id="attachment_233548" align="aligncenter" width="1024"] ブースを訪れたSeeed Studio CEO エリック・パン氏と話す M5Stack CEO ジミー・ライ氏[/caption]もともとembedded worldには多くの深圳ハードウェア企業が出展していたが、今年はM5Stackのような初出展企業がさらに増えていた。

アイデアに溢れたCEO ジミー・ライ氏のもと、1年で60以上、毎週金曜日に新しいハードウェア製品をリリースするM5Stackは、今回のembedded worldでも現在開発中の新製品だけを集めたパネル「M5Future」を展示。既存品を並べたデモも含め、工業系の多い来場者に製品ラインナップをアピールしていた。

M5Futureパネル。欧州では省電力で広範囲の無線通信規格の一つLoRaへの関心が高く、M5Stackブースを訪れた来場者からもLoRa絡みの質問が多く、多くの来場者やパートナーと話したCEOジミー・ライ氏は、3日間のイベントを通じて新製品のアイデアも見つけたようだ。
embedded worldのさらなる拡大に期待2023年の出展950社に比べて1100社と拡大し、会場もホール1、2、3、3A、4、4A、5と会場全域の7ホールを埋める規模に拡大している。コンピュータの進化に伴い、マイコンで制御される機器は増えつづけ、他の製品を置き換えている。

たとえば電気自動車には数百のマイコンが使われ、充電システムや発電システムを含めると数千・数万というオーダーになる。今回、規模が拡大した背景にはそうした影響がうかがえる。

消費者家電に比べて、産業用機器の切り替えは時間がかかり、情報化は今も重要なテーマだ。来年のembedded world 2025はさらに拡大が見込まれそうだ。

(文・高須正和)

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