『化け猫あんずちゃん』カンヌの小学生に個性豊かなキャラクターが大ウケ 「監督週間」で世界初上映

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2024年05月22日 14:21  cinemacafe.net

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『化け猫あんずちゃん』カンヌ・フォトコール (c)Kazuko Wakayama
森山未來が“あんずちゃん”を演じ、第77回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出された映画『化け猫あんずちゃん』が現地時間5月21日にワールドプレミアとなる公式上映が実施。地元カンヌの小学生180人を招待した上映も行われ、スタンディングオベーションが巻き起こるなど盛況を博した。

カンヌ国際映画祭に併設されている「監督週間」は、作家性を重視した作品が選出され、世界で活躍する映画監督の登竜門として知られる非常に注目度の高い部門。

過去にはソフィア・コッポラ、スパイク・リーやアキ・カウリスマキ、日本人では大島渚、北野武、西川美和らが選出されており、日本の長編アニメーション作品としては高畑勲『かぐや姫の物語』、細田守『未来のミライ』に続く6年ぶりの選出で、久野遥子監督・山下敦弘監督ともに本作で初のカンヌとなった。

実写からアニメーションを作り出す手法に注目集まる
監督週間のメイン会場であるクロワゼット劇場で2回の上映が行われた。まず、朝8時45分から行われた1回目の上映会は、約800席が満席に。世界中のプレスや映画ファンが訪れ、注目度の高さが伺える盛り上がり。あんずがバイクでやってくる登場シーンでは場内が笑いに包まれた。

登壇を前に久野監督は「日本でもまだお客様には観てもらってないのでどんなリアクションがあるかワクワクしています」とコメント。山下監督は「とにかく楽しみ。どんな質問がくるか緊張もしますが難しい映画でもないので(笑)楽しんでもらえていたらいいなと思います」と感想を述べた。

上映後に大きな拍手の中、両監督が登壇。俳優による実写からアニメーションを作り出す手法はとても新鮮だったようで司会者からのあんず役・キャスティングについての質問に、山下監督は「森山未來さんは俳優であり、ダンサーでもあるので、身体能力も高い。あんずは、おっさんのダラダラした面もあるが、時に猫らしい動きも表現したくて依頼しました」とキャスティングについて明かした。

あんずの魅力について聞かれた久野監督は、本作の創作のタイミングで自身も猫を飼い始めたといい、「猫を見ていると人間が気にしてしまうことに対しては雑だったり、それでも必要な時にそばにいてくれることがある。あんずにもそんな魅力があると思います」と語る。

また客席からは、豊かな色彩について、原作がそもそも色彩豊かな作品なのかという質問が。それに対し久野監督は、「原作はモノクロ漫画なため、映画の色味は美術監督と色彩設計を担当されたジュリアン(・ドゥ・マン)さんのアイディアから出た色味で、日本の風景を鮮やかに表現してくれました」と答え、日仏合作で作られた本作ならではの表現について観客も興味深く聞き入る様子がみられた。

そして舞台挨拶終了後には両監督が沢山のファンに囲まれ、サインに応じた。1回目の舞台挨拶を終え、久野監督は「皆さん熱心に質問してくださったり、とても嬉しかったです。カンヌですがアニメーションに興味がある方も多いのかなと思いました」と感想をコメント。

山下監督は「みんな真面目に観てくれていて嬉しかったですね」と語り、またカンヌ初参加について「僕は昔『山田孝之のカンヌ映画祭』というドラマを作っていた身としては、本当は来ちゃいけないんじゃないかと思ったんですけど(笑)。みんなが憧れるとか、参加した人が興奮したと言うことがよくわかる気がしました」と、カンヌ初参加について改めて語った。

あんずの行動、カエルちゃんや貧乏神など、カンヌの小学生に大ウケ
「次の回はお客さんと一緒に観るのでとても楽しみです」と久野監督が語っていた14時45分からの2回目の上映では、カンヌ国際映画祭「監督週間」にとっても初の試みとしてカンヌの地元の小学生180人を招待。

満席で賑わう場内に呼び込まれると会場は大喝采。山下監督、久野監督どちらも「ボンジュール!」と仏語であいさつし、山下監督は「呼んでもらえたことに本当に感謝しています。僕らも一緒に見るので一緒に楽しみましょう」と話し、久野監督は「日本ではまだ大人の方にしか見てもらっていないので、お子さんたちのリアクションがすごく楽しみです。一緒に楽しみましょう」と挨拶すると、会場はさらに大きな歓声と拍手が。

上映が始まると、あんずの登場にはまたもや場内は笑い声につつまれ、あんずの行動や、カエルちゃんや貧乏神といった個性豊かなキャラクターの登場には沢山の子どもたちが大ウケ。大人からも、ときに子どもたちとは違ったポイントで笑い声が沸き起こっていた。

そしてエンドロールが始まると場内は割れんばかりの拍手喝采。4分に及ぶスタンディングオベーションが巻き起こり、監督たちはあんずのぬいぐるみと立ち上がると感激の面持ちで場内全体に手を振り返して、声援に応えていた。

上映後の囲み取材では観客と一緒に観た感想を聞かれると、久野監督は「お客さんと観ること自体が初めてだったので、映画も初めて観るもののようで染み入りました」と話し、山下監督は「ドキドキしながら見たんですけど、途中からは自分も客になって感動してました。よかったです」と感想を語る。

「カンヌでの上映で得た、今後の活動に持ち帰るものは?」という質問に、山下監督は「今年48歳なので、これを20代でくらったら人生狂うかもなという感覚ですが、今は数日したら普通の淡々とした日々に戻るだろうなと思いつつ、でもまたカンヌで上映できたらという可能性がお互いにあるので、これからの決心が変わっていくかなと思います」と回答。

久野監督は「私にとっては長編初作品だったので、本当にくらってしまったような気持ちがあります。これはある種ラッキーだと思って、もしこのラッキーが、この景色がまた見れたら嬉しいと思うので、これを糧に頑張りたい」と話し、両監督ともにこのカンヌでの出来事が今後の創作に向けても刺激となった様子。

映画を観た観客たちからは、絶賛の声が続々と上がっている。

「とても楽しかったです!世界に向けて心を開かせてくれる作品だと思いました」(フランス人・20代男性)、「美しくて心温まる作品でした。カラフルな映像と人間性豊かなドラマが素晴らしく、とても大きなテーマを描いた作品だと思いました」(ロシア人・20代男性)。

「美しくて、レトロな雰囲気もある作品でした。現代のアニメとは一線を画しており、古い映画のような精神性も感じました。猫の動きなどディテールが素晴らしかったです」(オランダ人・30代女性)、「子どもと一緒にみた『となりのトトロ』のような日本のアニメーションの伝統を継承して、ファンタスティックな世界を作り上げていました」(フランス人・40代女性)。

「色彩のクオリティが高く、デッサンも丁寧でとても良かった。日本のアニメの伝統的なテクニックとオリジナリティが共存していて素晴らしかったです」(フランス人・40代男性)と興奮冷めやらぬ様子。

本作は世界最大規模のアニメーション映画祭である「アヌシー国際映画祭 2024」のコンペティション部門にもノミネートされており、6月に久野監督・山下監督が現地を訪れる予定。

『化け猫あんずちゃん』は7月19日(金)より全国にて公開。





(シネマカフェ編集部)

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