『366日』第8話 やっと「人間」が現れた 視聴者に甘え切った創作者の性根を垣間見る

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2024年05月28日 19:11  日刊サイゾー

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 27日放送のフジテレビ月9『366日』は第8話。

 これまで、この作品についてはひたすらに美しき高校時代に思いを馳せるだけで価値観の更新を行わない“おとなこども”たちのループ映像ばかり見せられ、ストレスがたまりますねと言い続けてきましたが、今回、急におもしろくなりました。びっくりした。

 振り返りましょう。

■前半は不穏でした

 今回の振り返りの前に、まずは前回の最後から。

 故郷である龍ケ崎の花火大会を訪れた一行、みんなと別れたハルト(眞栄田郷敦)とアスカ(広瀬アリス)は2人とも東京に戻ることになりますが、ここで2人はなぜか別々の乗り物で帰京します。

「ハルトはシャトルバスだよね」とアスカ。1人で駅へ入っていきますが、高次脳機能障害を負っているハルトは急に自分がどこにいるのかわからなくなり、家に帰れません。結局、同郷の看護師さん(夏子)に見つけてもらって事なきを得るという展開がありました。

 普通に考えて、脳に障害がある人と2人で龍ケ崎から東京に帰ろうというとき、一緒に帰らない意味がわからないんです。おそらくは、単に物語の都合上、看護師さんとハルトの距離を近づけておきたいというだけの目的で行われたことだとは思うんですが、アスカの判断が非常識すぎて、なんらかの意図を感じてしまう。アスカって、実はハルトのこと見捨てたいのかな、死んでもいいと思ってるのかなという予断が生まれるわけです。こういう予断って、ドラマを追っていく上ですごく邪魔になるので、できる限り排除してほしいところなんですよねえ。

 そういう予断を一度かき消して今回、前半はまったく意図のわからない画面が続きました。ただアスカとハルトが何かしゃべってる、どこかに行ってる、まるでカラオケのバックに流れるイメージ映像みたいな時間がしばらく続きます。

 結果、ハルトが「最近、楽しいんだよね」と誰かに言うことで、ああ「最近楽しい」という描写だったのかとわかるわけですが、このへんから、今回はなんか不穏だぞという予感がしてくるわけです。第1話から行動も心情もまるっきりテンプレートばかりで、悪い意味でわかりやすいドラマだったわけですが、前回のラストから今回の前半にかけては、本当にわかりにくかった。アスカとハルトが何を考えているのかもわからないし、ドラマが何を見せたいのかもわからない。ただ、何か不穏なことが起こる予感だけがある。

■やっと人間が現れたよ

 ハルトが、ウソをついていました。アスカと一緒に隅田川のベンチに座って、夜通し話をしたこと。桜がきれいだったこと。高校の文化祭でアスカが楽しそうにクラリネットを吹いていたこと。それらを思い出したとウソをついたのです。

 本当は何も思い出していないのに、そう言えばアスカが喜ぶから。

 ウソは容易にバレてしまいます。昔のことを思い出してほしいアスカと、アスカに喜んでほしいハルト。すれちがう思いを抱えた2人はようやく「本音で話そう」と向き合うことになりました。

 ここはね、ほんとにいいシーンだったんだ。相手を思えば思うほど2人とも悲しい思いが募るから、友達に戻ろうっていう。初めてこのドラマで、人間を見た気がした。

 おそらくは、このワンアイディアだったんだろうな。ここを描くために、これまでの7話があったんです。

 7話て。長すぎるわ。3話くらいで本音で話せ。もっと早く向き合え。そんで展開作れ。

 要するに視聴者に甘えとるわけです。こういう強いシーンが待ってるから、それまで引き延ばしても納得してくれるだろうと思ってる。そういう創作者としての性根が見える回でしたね。

 あと、なんかアスカにほんのり好意を寄せてるカズキ(綱啓永)も彼女にフラれてましたけど、みんなでカレカノとかない高校時代のまんまの友達に戻ろうねみたいなのだけは勘弁してほしいと思いました。やりそうなんだよな、そういうこと。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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