『サガ エメラルド ビヨンド』プレイレビュー 脳汁が出るバトルと理解不能なシナリオが織りなす唯一無二のRPG

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2024年05月29日 10:00  Sirabee

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Sirabee

(©ニュースサイトしらべぇ)

Sirabee読者の皆さんおはようございます、一番好きなサガシリーズの楽曲は『サガ フロンティア』のCMに使用されていた戦闘曲のオーケストラアレンジ、VTuberの幽霊坂ゆらぎです。

かつては魔界塔士のエスパーギャルだったこともあり、「サガ」シリーズの最新作には触れないわけにはいかない、ということで、今回は『サガ エメラルド ビヨンド』を皆さんに紹介していこうと思います。

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■シリーズ35周年の最新作

本作は、4月25日にスクウェア・エニックスからNintendo Switch/Play Station4・5/Steam/iOS/androidで発売されました。

サガシリーズについては、1作目の『魔界塔士サ・ガ』が1989年にゲームボーイ初のRPGとしてリリースされています。

初代『ポケットモンスター赤・緑』が登場する7年も前に、携帯機であそべる長編RPGとしてこの世に生を受けた初代サガ。

既存のファンタジーRPGの枠組みにとらわれず、敵が落とした肉を食べて進化するモンスター、荒廃し殺伐とした世界観、けれん味のあるセリフ回しなど、独自色の強い要素が満載でした。

サガらしいセリフ回しは今作も健在です。

その後も同シリーズは見た目やコンセプトを変化させながら、時代ごとのゲームハードで作り続けられて今日へといたるわけです。

本作は、35年の歴史を持つ歴代のサガシリーズから、ストーリーやシステム、象徴的なアイテムなど多くの要素を受け継いだ作品です。

ひらめきや連携などのシステムは前作から踏襲しています。

それらは「チェーンソー」や「アイスソード」といったわかりやすいものから、「ひらめき」などのシステム、またはシナリオに隠された設定まで様々。

時にさりげなく、時に露骨に、ゲーム中のいたるところにちりばめられているので、シリーズファンはこういった要素を見つけてまわるのも楽しいと思います。

もちろん、これまでに全くシリーズを遊んだことの無い人でも問題なく遊べますので、ここから本作ならではの魅力を紹介していこうと思います。

 

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■複雑に分岐し、自由度が高いシナリオ

さて、どこから紹介したものか迷いますが、まずは主人公が複数いて、自由にキャラクターを選べるシステムからいきましょう。

選んだキャラクターによって遊ぶシナリオが変わるところは『オクトパストラベラー』や、最近リメイクもされた『ライブアライブ』みたいな感じですね。

ただ、他のゲームと違うところは、プレイヤーが選んだ主人公とその順番によって、別の主人公のシナリオやゲームバランスにも大きな影響を与える点です。

例えば先ほど例として挙げた『ライブアライブ』では、7人の主人公のストーリーを個別に進めた後、最終章で全員が仲間として合流するアツい展開が待っています。

ところが本作では、別の主人公がシナリオの途中で仲間として加入することもよくあることで、加入する際の性能は、その主人公のシナリオで育成した強さになります。

そうなると、以前にそのキャラクターをゴリゴリに育成していた場合、仲間にできたら即戦力どころか、シナリオがぶっ壊れるレベルの活躍をさせることもできるわけです。

メカのHPに注目。別シナリオで得たキャラや装備次第では、最初からとんでもない強さに…。

また、そういった「キャラクターが仲間になる・ならない」のフラグもそうなのですが、道中の選択肢やバトルの勝敗、ちょっとした寄り道によっても、その後のシナリオが大きく変化してしまうんですね。

これに関しては、「プレイヤーごとに同じ体験は無い」と言えるほど展開に幅があり、時にはシナリオのボスや結末さえも全く別物になってしまうほどです。

私個人の話になりますが、同じ時期に本作を始めた人とある主人公のシナリオについて話をしていた時、そこでの話が全くかみ合わないという不思議な体験をしました。

その時は同じ主人公、同じシナリオの話をしているのに、登場人物の行動や性格が全く違っており、お互いに「別のゲームの話をしているのか?」と思ってしまうほどでした。

同じシナリオでも、遊ぶ度に全く展開が変わることがあってビックリ。

さらに、それらの要素は「周回数」や「クリア済みのキャラやシナリオ」によっても変化するというから、本作で最初から最後まで他人と同じ体験をする、というのはほとんどありえません。

インターネットにより攻略情報が簡単に入手できるこの令和の現代に、「同じゲームを遊んでいて話がかみ合わない」という不思議な体験ができるのも、本作ならではの魅力の一つと言えると思います。

 

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■快適なバトルのための最適化

具体的なゲームプレイに話を移しますが、本作は前作にあたる『サガ スカーレット グレイス』の系譜でありながら、前作にあった様々な要素をパワーアップさせています。

例えば、プレイアブルキャラに人間しかいなかった前作に対して、メカやモンスター、傀儡、眷属など、本作では実に多様な種族が登場し、その世界観も様々です。

SFやファンタジー世界、現代日本、さらには人間の体内を旅することも。

それでいて「バトルの準備のためにバトルをする」ような、バトルに振り切ったシステムは健在で、バトルを快適に遊ばせるため、他の要素は最小限に抑えられています。

先ほどのストーリーについての紹介で、かなり複雑な印象を抱いた人も多いと思いますが、じつはストーリーの進行そのものは非常に簡単で、展開もあっさりとしています。

主人公たちの目的は違えど、基本的に「連接世界」という枝分かれしたエリアから様々な異世界を訪れ、そこで出会った人たちと交流するという部分は共通しています。

様々な世界とつながる「連接世界」。どこにいくかは完全に自由です。

ただし、必ずしもそこで起きた問題を解決する必要はなく、自分の目的さえ果たしてしまえば、その世界のピンチを見捨て、ボスをスルーすることも時には可能なのです。

なんなら、最初からずっといる仲間達や、新規メンバー加入時によくある個別エピソードの掘り下げなんてものも、(基本的には)ありません。

時には、本当に意味不明なシナリオを体験することもあります。

人によっては「手抜き」と感じそうな部分ですが、これらは前作から一貫してそのように作られていて、全てが極力バトルの邪魔をしないように設計されています。

例を挙げると、プレイヤーが次にどこで何をすればいいかは、すべてマップ上に表示される緑や青の線がつながった扉で表されているため、迷うことがありません。

シナリオの進行は、線が出ている先から好きな場所に行くだけでOK。

マップ上に表示されている建物などはすべてペラペラのハリボテで、中に入ることすらありません。

シナリオの進行は短い会話パートでのみ進行するので、バトル以外でやることはマップの移動と、会話で決定ボタンを押すことくらいでしょう。

一つ一つの会話パートは非常に短いので、シナリオは基本サクサク進行です。

さらには後述する「周回」を前提としたゲームシステムのため、長めのカットシーンやムービーが入るということもなく、ポンポンと非常にテンポよくバトルを行っていくことが可能です。

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■一戦一戦がヒリつくバトル

本作で最も力の入った部分は何かと聞かれたら、それはやはり間違いなくバトルだと思います。

戦闘は味方全体で共有のコストであるBPを消費して、1ターンのうちに敵と味方が入り乱れて行動するターン制のコマンドバトルとなっています。

画面下部、タイムラインの左から順にキャラクターが行動していきます。

画面上のタイムラインが時間の流れを表していて、早い者から順番に行動するため、攻撃される前に集中して一体を倒したり、敵の厄介な行動を阻止するのもポイントになります。

この時の行動順はキャラクターの性能や装備による補正で決まるだけでなく、キャラクターが使用する技によってプラスにもマイナスにも変化します。

これを利用することによって、素早いキャラであっても行動順を遅らせたり、その逆を行って味方の行動が連続するようにつなげると「連携」が発生します。

連携すると、使用した技の名前が繋がって一つに合体。変な名前を狙いたくなりますね。

このシステムが非常に重要で、連携を繋げると「連結率」がアップし与えるダメージが上昇するだけでなく、一定確率で「オーバードライブ」という実質的な二回行動が発生することもあります。

逆に言えば敵も全く同じことをしてくるので、行動順を変化させ、間に割り込んで敵の連携を止めつつ、こちらは連携していくことが何よりも重要です。

このゲームで一番楽しい瞬間の一つ、それはイケメンが使う失礼剣だと私は思います。

一方、この連携と対をなすシステムもあり、周囲に敵も味方もいない孤立した状態になると、たった一人で怒涛の連続攻撃を行う「独壇場」に入ります。

このため、敵が残り一体になったからと言っても決して油断できず、また味方が壊滅的な状況に陥っても「独壇場」で逆転するチャンスが残されているため、戦いは最後までどう転ぶかわかりません。

独壇場を狙って出せると脳汁がドバドバ出て最高です。

このバトルシステムと、敵の強さがこちらの強さによって変動する仕様が合わさり、一見すると攻略不能に見える強敵すらも工夫次第で撃破可能、という絶妙なバランスになっています。

他にも特徴的な戦闘システムを挙げると、過去のサガシリーズにも登場した「ひらめき」がいい味を出しています。

例えば片手剣の技を使っていると新しい片手剣技をひらめくことがあり、人間の場合はさらにそこから派生した「我流技」を覚えることがあります。

この時に覚える技はランダムになっているので、新しい技をひらめきたくてついついバトルを繰り返してしまうんですよね。

またメカは基礎ステータスこそ成長しないものの、装備品で他種族以上のステータス補正と新たな技を獲得できます。

しかもこれらはメカ専用技となっているため、装備さえ充実していれば序盤からでも圧倒的な戦力で敵を蹂躙できるのが魅力ですね。

味方のモンスターは残念ながら過去作のように肉を食べて進化する要素はないものの、撃破した敵から技を吸収することが可能です。

他にも、選んだ主人公によっては特殊な種族が仲間になることがあり、それぞれ個性的な外見や能力を有しているので、仲間を集めるのも楽しみの一つだと思います。

 

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■クセの強い主人公たち

さて、基本的な部分は紹介することができたので、実際に私がプレイした時のことも語っていきましょう。

私はサガ2のメカが好きだったこともあって、メカキャラである「ディーヴァ ナンバー5」から始めたのですが、正直言って序盤はかなり大変でした。

缶のようなボディがかわいいディーヴァ ナンバー5。ホントは人型なのですが…。

このキャラクターは一周目からかなり分岐が複雑で、ハブとなる「連接世界」から多くの世界に行くことが可能でした。

一方、ある事情によって装備品のスロット数が大幅に制限されているため、装備で強くなるメカとしては早期に成長が頭打ちになってしまいます。

にもかかわらず寄り道で多くの仲間を集め、相応に敵も強くなっていきますので、後半はディーヴァが敵にワンパンされるのを味方でフォローするゲームになっていました…。

もちろん最後には装備制限もなくなり、その分カタルシスもすごいですが、周回するとまた制限状態からやり直しなので、ちょっぴり上級者向けのキャラクターかもしれません。

当然ながら最初に選ぶ主人公はプレイヤーの自由ですが、もし誰を選ぶか迷っている人がいたら、私は「御堂綱紀(みどうつなのり)」くんから始めてみることをオススメします。

御堂くんは関西弁のイケメンキャラなのですが、シナリオが簡潔でわかりやすく、オチまでの展開がしっかりと描かれていて、それでいて一周があまり長くありません(ここ重要)。

一周目をクリアすると、もう一周したらどうなるんだろう?という引きが用意されているのもいいですし、周回前提のゲームシステムに慣れるにはうってつけと言えますね。

裏を返すと、一周目では「何も…分からん…」となるキャラもいます。ただ、それも含めてそのプレイヤーの体験ですし、好きに初めるのが一番だと思います。

他のキャラクターで遊んでいても、比較的簡単に仲間になってくれる御堂くん。いい人。

とりあえず迷ったら御堂くん、これを覚えておいてください。

ちなみに、個人的なお気に入りキャラクターになったのは、この記事のために新しく始めた「シウグナス」ですね。

彼は「闇の王」を自称する正体不明の人物なのですが、独特の美意識や判断基準をもっていて、行く先々でトラブルを解決、あるいは起こす側になります。

倫理観がぶっ壊れていて、破壊や力の行使にためらいがないシウグナス。

シウグナスは一般的な倫理観や善悪にとらわれない性格のため、他のキャラでは選びにくい選択肢を率先して選びたくなってしまう、不思議な魅力があります。

現代世界で、女子高生に不審がられるシウグナス。

また、彼の種族は「吸血鬼」となっているため、仲間の種族を強制的に「眷属」に変えてしまうことも可能。つまり、他の主人公を仲間にした上で眷属化することも…?

眷属システムはシウグナス固有。バンバン仲間を眷属に引き入れましょう。

 

■オマージュ要素を探す旅

先ほども少し触れましたが、本作には過去のサガシリーズ作品から、かなり多くのセルフオマージュ要素が取り入れられています。

例えばロマサガシリーズからは「アイスソード」や「アヴァロン」、死んだ英雄を集めて戦い続けるディン王は「オーディン」のアナグラムなど、他にも大小様々なネタがあちこちに隠されています。

オーディンみたいなことをしているディン王。いずれ本人と戦うことになりそう。

中でも本作の根幹部分を構成する、世界同士をつなぐ「連接世界」周辺の設定からはは、特にゲームボーイ2作目の『サ・ガ2 秘宝伝説』との繋がりを強く感じました。

過去のシリーズ作品では神をバラバラにするチェーンソーなど部分的なパロディは多く見られたものの、ここまでベースの世界観に食い込むようなことはあまりなかったような…?

扉から異世界に渡る演出は、サガ2を彷彿とさせます。

なので、これまでにサガシリーズを多くプレイしてきた人は、オマージュ要素を探したり、あれこれ考察を巡らせるのも楽しいと思いますよ。

また、歴代のサガシリーズの音楽を手掛けている「イトケン」こと伊藤賢治さんのサウンドは相変わらず非常に素晴らしく、本作で何百、何千回と繰り返すことになるバトルを一層魅力的にしています。

中でも、一部の強敵とのバトルで流れる「心踊らせて」という曲は、名曲「熱情の律動」の雰囲気を感じさせる最高にカッコいい曲なので、これが流れるだけで「この周回は相当ラッキー!」と思ってしまうほどです。

 

■ヘンテコだけどオススメしたい…

最後になりますが、過去作に触れたことがなく、本作を「初めてのサガ」としてこれから遊ぼうと考えている人は、かなり癖のある作品であることは念頭に置いたほうがいいかもしれません。

他のJRPGで培った「お約束」は通じませんし、たまたま最初に選んだルートが後味の悪いものや、肩透かしになる可能性もあります。

また、進行不能になるほど致命的なバグはないものの、テキストのスキップ機能が無い、カーソル移動が遅い、もっさりしたUIなど、あまり現代的とは言えない部分も気になります。

ただ私にはそれ以上に、本作にしかない魅力がたまらないんですよね。これは、人に珍味を食べてほしい時の感じに近いでしょうか。

決して王道ではないけど、これでしか味わえないものがある。「サガエメ」はそんな作品でしょうか。

そんなわけで、『サガ エメラルド ビヨンド』は、永遠にヒリヒリするバトルを続けたいバトルマスターの人や、サガシリーズは未経験だけど変わり種のゲームが好きという人に是非オススメしたい一品です。

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(文/Sirabee 編集部・幽霊坂ゆらぎ)

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