「親ガチャ」から人生をひっくり返す方法は?【里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール!】第5回

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2024年05月29日 18:10  週プレNEWS

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「逆境から抜け出すための秘策」について語った五十嵐亮太氏(左)と里崎智也氏(右)

里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール! 日本を代表するレジェンドプレイヤーの2人が、野球からの学びをライフハックに翻訳、「生き抜く知恵」を惜しげもなく大公開。連載の第5回は、「逆境から抜け出すための秘策」について語り合った!

■大命題「人間は何のために生まれてきたのか?」

――おふたりのやり取りは期せずして哲学的な話になるので、単刀直入に伺います。「人間は何のために生まれてきたのでしょう?」と尋ねられたら、どう答えますか?

里崎 何のために? それは、「競争に勝ったから」です。自分の意思で「勝ちたい」と思い、その戦いに勝ったからです。

五十嵐 競争? それって、精子と卵子とか受精の話?

里崎 そう。最初に辿り着いた精子が僕です。もし僕が負けていたら、この僕ではないわけだから。自分の意思で勝って、生まれてきた。だから決して、人生については他人のせいにできないんですよ。

五十嵐 でも、親が勝手に生んだんだよ。それは「自分の意思」とは言えないんじゃないですか?

里崎 そのレースに出場するかどうかを決めたのは自分の意思じゃないかもしれないけど、人間が本能として持っている「種の保存」という、先祖代々続いてきたレースに出場した結果、1億個以上の精子の中から、1位を目指して1位になったのは事実でしょ。それは無意識かもしれないけど。

五十嵐 まさか、精子の話になるとは思わなかった(笑)。厳密に言えば「何のために?」の答えになっていないような気もするけど、まぁいいか(笑)。よく、親子ゲンカのときに子どもが「オレは生まれたくて生まれてきたんじゃないんだ」とか「親が勝手に生んだんだろ」って言ったりするけど、サトさんの説だと、そんなことも言えなくなるね。

里崎 絶対に言えない。僕なら、「いやいや、お前が生まれてきたくて生まれてきたんだよ」って反論するね(笑)。だってレースに出て、必死に1着になっているんだから。

五十嵐 僕は、「いい人生だな」と思って生きていけるのがいちばんの理想だから、「いい人生を過ごすために生まれてきた」っていう思いですね。サトさんの言うレースに勝って、せっかく生まれてきたのなら「生まれてきてよかったな」って思えるような人生を歩みたい。もちろん、楽しいことや嬉しいことばかりじゃないけど、それも含めて「いい人生だな」って思えるように生きる。そのために生まれてきたような気がしますね。

■「親ガチャ」からの一発逆転は可能なのか?

――最近では「親ガチャ」などと言って、生まれたときの環境で、その後の将来が初めから決まってしまう。生まれたときから勝敗はほぼ決まっている。そんな考えもあります。この点については、それぞれどう考えますか?

里崎 人生をひっくり返す方法はふたつしかないんですよ。

五十嵐 人生を好転させる方法、逆転させる方法はふたつ?

里崎 そう、スポーツか勉強。この二択。このどちらかを死ぬ気で必死に頑張れば「家系」とか「家柄」とかをひっくり返す可能性が高くなる。

五十嵐 でも、スポーツにしても勉強にしても、塾に行くとか、練習環境があるとか、それができる家庭とできない家庭があるのも現実だと思うけど......。

里崎 そう、確かにそれが現実だから、スポーツに関しては難しい部分もあるけど、決して不可能じゃない。で、勉強に関しては「義務教育」という強い味方がある。授業を中心に、中学校までの勉強を全部暗記して、全部クリアできるようになったら、塾に行かなくても推薦で高校に入れる道が生まれてくる。金持ちの場合は塾に通ったり、家庭教師をつけたり、いいオプションがあるけど、それがなくても何とかなる手段は確実にあるから。

五十嵐 あまり裕福ではない家庭の場合は、自力で頑張るしかない。DVだとか育児放棄だとか、それすらできない家庭もあるのかもしれないけど、まだ「自力」の余地があれば、生まれながらの環境をひっくり返すことができる可能性はありますよね。

里崎 数学なんて100パーセント答えがある。歴史の年号も人の名前も、あやふやなことがない。答えがあるものならば、その答えを覚えればいい。死ぬ気でやれば絶対にできるから。

五十嵐 問題は、その「死ぬ気でやれば」ができるかどうかというところですよね。どうしても、「どうせオレなんか......」「うちは貧乏だから......」とか、ネガティブに考えがちですからね。

里崎 そう、言い訳ばっかりしてるから。日本人はダメな理由、できない理由ばかりを探そうとするのが本当によくないですね。だから、声を大にして言いたい。「まずは、どうやったらできるかを考えろよ!」「全部、否定から入るなよ!」って。

五十嵐 確かに否定から入ったほうがラクだし、妙にクールぶってカッコつけたりする傾向はありますよね。

■「できない理由ではなく、できる方法を考える」

里崎 江戸時代の隣組制度の頃からそうだけど、日本人は「全員で不幸になっていこう」というシステムが強すぎるんですよ。全員で不幸を共有して耐えていく。特に地方でその傾向が強いように感じるけど、それよりも前向きに努力して幸せになる道を考えたほうがずっといいじゃん。

五十嵐 それって、土地柄的なことだけじゃなくて、社会全体にも言えることだよね。やっぱり、自分がそれまでやってきたこと、慣れ親しんできたことって、なかなか変えたがらないもの。世の中には一定数、変わらないこと、安定を求める人が多いってことは僕も感じています。

里崎 だからこそ、さっき言ったように、「まずは、どうやったらできるかを考えろよ!」ってことなんですよ(笑)。僕がプロ入りする前の出来事だけど、1995年にボビー(・バレンタイン)が千葉ロッテマリーンズの監督になって、いろいろ変えようとしたときも、反対勢力、抵抗勢力が強かったって言うからね。それこそ、広岡達朗GM派とボビー派とに分かれて、球団内がゴタゴタしたって、当時の人はいつも言っていたから(苦笑)。

五十嵐 僕自身は比較的に「新しいものをどんどん取り入れて、新しい刺激の中で生きたい」というタイプの人間だけど、監督やコーチが代わったときに、新しい方針や指導方法に抵抗を示す選手は一定数いますからね。

里崎 僕は入団当初、本当に守備が下手で、パスボールやワイルドピッチで後逸してばかりだったんだけど......当時コーチだった山中潔さんにつきっきりで指導を受けて、構え方から始まってフルモデルチェンジして、ようやく自信が持てるようになった。でも、当時の首脳陣から「その構え方だとピッチャーが投げづらいからやめろ」っていきなり言われてね。ピッチャー出身でもないのに......。

五十嵐 そういうことは、ままあるよね。それでどうしたんですか?

里崎 ランナーがいないときとか、試合の大勢に影響がないときには首脳陣からの言うことを聞いたけど、絶対にワンバウンドを止めなくちゃいけないときとか、相手が盗塁しそうなときには自分のやり方を貫きました。「結果を出せば、こっちのもんやろ」っていう思いで。

五十嵐 さすが、それがサトさんだよね。でも、自分にとって「いい首脳陣」「悪い首脳陣」っていうのも確かにありますよね。人間同士だから、好き嫌いとか相性とかは避けられないものね。

――さて、ちょうど時間となりました。ぜひ次回は、今五十嵐さんが口にした「いい上司」「悪い上司」について伺いたいと思います。

里崎・五十嵐 また次回も、よろしくお願いします!

構成/長谷川晶一 撮影/熊谷 貫

【写真】里崎智也×五十嵐亮太 対談フォトギャラリー

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