「ひき肉にしちまうよ!」『特攻の拓』ネット民にはお馴染み、クセが強すぎる名言といえば?

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2024年05月30日 07:00  リアルサウンド

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 1990年代のヤンキー漫画の金字塔『疾風伝説 特攻の拓』。原作の佐木飛朗斗と漫画(作画)の所十三の黄金コンビによる本作は、「湘南純愛組!」「カメレオン」など数々のヤンキー漫画が連載されていた当時の「週刊少年マガジン」で熱狂的に受け入れられた傑作である。


(参考:【写真】見ているだけでテンション上がる! 特製「ブッコミ」ステッカーや復刻版の各表紙


  同作品は外伝やスピンオフ作品も多く出ているが、オリジナルの単行本はこれまで新装版など様々な形で何度か刊行されている。今回の復刻版の刊行で、作品の変わらない人気の高さを裏付けることなった。


 なぜ、『特攻の拓』は人気があるのだろうか。実際の暴走族やヤンキーが嫌いという人でも、『特攻の拓』のファンは多いのだ。魅力は尽きないが、強いて挙げるとすれば、個性が強すぎるキャラクターたちと独特のセリフだろう。作中の名言の数々はネットで定着しており、作品を読んだことがなくても聞いたことがあるセリフが多いのではないだろうか。


「“待”ってたぜェ!! この“瞬間”をよォ!!」
「“事故”る奴は・・・・“不運”(ハードラック)と“踊”(ダンス)っちまったんだよ・・・・」
「テメー“ベコベコ”にしてやるよォ!!」
「気合いブリバリだあ!!」
「あんまチョーシくれてっと ひき肉にしちまうよ!」
「!?」
「オレが手に入れてやる・・・・! その“領域”・・ “スピードの向こう側”を・・!!」


 ネット住民なら、一度は見た&聞いたことがあるセリフがひとつはあったのではないか。これらの元ネタはすべて『特攻の拓』なのである。登場する不良全員のキャラクターが立っているため、独特のセリフが生まれるのだろう。そして所十三のインパクトのある絵が、その魅力を高めているのだ。


 少年漫画としての魅力が高い点も忘れてはいけない。いじめられっ子の浅川拓が転校生で暴走族「外道」を率いる鳴神秀人と出会い、その強さに憧れてツッパリデビューを決める……という少年漫画の王道を行くストーリー。そして、榊龍也、一条武丸、どう見ても高校生には見えない鰐淵春樹など、一癖も二癖もあるキャラクターたち。登場する暴走族の名前も「外道」「爆音小僧」「魍魎」「朧童幽霊」「夜叉神」など、いちいちかっこいい。喧嘩のシーンは迫力満点だし、それでいて仲間との友情も丁寧に描かれているのだ。


 また、本書を読むとバイクの知識もつく。単行本の巻末には、キャラクターの単車を紹介するページもあったので、熟読した読者も多いだろう。筆者はホンダの名車CB400FOURを知ったのはマー坊君の愛車だったためである。中盤の増天寺ライブでは音楽漫画の要素も含まれているなど、ヤンキー漫画という枠だけでは語れない楽しさがあり、当時の中学・高校生を熱狂させたのだ。


 若い世代にもファンが増えているそうだが、それは和久井健の漫画『東京卍リベンジャーズ』のヒットが与えた影響も大きいだろう。『特攻の拓』が復刊した際には、和久井がコメントを寄せているが、暴走族を知らない世代にもヤンキー文化を知らしめた『東京卍リベンジャーズ』の功績は大きいといえよう。一時期、コミックマーケットでは特攻服をまとったコスプレイヤーが数多く出現していた。


 ところで、『東京卍リベンジャーズ』をきっかけに『特攻の拓』にハマった10代の女性に話を聞くと、暴走族の全盛期を知らない世代にとっては、暴走族という存在そのものに“異世界感”や“非日常感”があるのだという。土曜日になると、至るところで暴走族やローリング族が走り回っていた時代を知る世代としては驚きだ。もはや暴走族は、昭和〜平成レトロな文化として見られているのだろうか。時代の流れの早さを感じてしまった。


 現在復刻版も刊行されているので、この機会にヤンキー漫画の不朽の名作を蔵書に加えてみてはいかがだろうか。


(文=山内貴範)


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