星野源が不倫デマのイメージダウンから形勢逆転できた“彼ならでは”の理由。新垣結衣と完全否定

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2024年05月30日 09:00  女子SPA!

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「逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類! 新春スペシャル! !」TCエンタテインメント
 5月28日深夜放送『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)に新垣結衣が電話で生出演し、そろって不倫騒動を完全否定しました。

◆星野源の言葉が信頼された結果イメージダウンを切り抜けられた

 二人はそれぞれ、「100%ひとつもやってません。完全なデマです。このウワサ、憶測に事実は一つもありません」(星野)、「改めて、私の口からもお伝えできればなと思いまして。今回のことでウワサされていること、騒がれていることに事実は一つもありません。安心してもらいたいなという気持ちでお邪魔しました」(新垣)と語り、インフルエンサーのSNSへの投稿とそれを受けてのユーザーのリアクションに反論したのです。

 この前には星野の所属事務所「アミューズ」も同様の声明を発表しており、迅速かつ真摯な対応に、憤りがうかがえます。

 このようにあらぬ疑いをかけられた場合にはイメージダウンを免(まぬが)れない芸能人も多いなか、星野源は無傷で切り抜けるどころか、さらに男をあげました。

 なぜこうした対応が可能だったのか? またファンや視聴者が彼の言葉を信頼する根拠はどこにあったのか? それを星野のアーティスト活動から探っていきたいと思います。

◆“言行一致のタレント、星野源”というブランド

 まず、近年の星野はメッセンジャー的な役を担っています。『おげんさんといっしょ』(NHK)では昭和のお母さんスタイルで自然に振る舞って多様性を体現したり、コロナ禍でうちひしがれる国民に「うちで踊ろう」と呼びかけ、日本を元気づけました。

 ポジティブな面を強調するだけではありません。「Same Thing」という曲では、英語の禁句「F」ワードを使うことも辞さずに社会に対して疑問を投げかけました。「アイデア」でも、<にこやかに中指を>というフレーズでパンク精神をあらわしています。

 また2020年の紅白で「うちで踊ろう」を披露した際には、<常に嘲り合うよな 僕ら “それが人”でもうんざりださよなら>との歌詞を書き加え、冷え切った厭世観のような感性もあらわにしており、これによってさらに星野のメッセージの説得力を増しているのですね。

 心の状態の明るい面、暗い面から目をそらさず、自分と向き合う。そこから発せられる言葉だからこそ、ファンは勇気づけられるわけです。

 こうして、ひとりひとりと向き合うというイメージやキャラクターが、音楽作品をはじめとした表現活動のすみずみから伝わってくる。“言行一致のタレント、星野源”というブランドを長年にわたって育ててきた成果があるので、今回の不倫騒動も即座に形勢が逆転したのでしょう。

◆アーティストとしての偏差値が急上昇

 こうした取り組みは一朝一夕でできるわけではありません。

「くだらないの中に」(2011年)の頃の星野と、「恋」(2016年ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」主題歌)の星野とでは、着ているものから表情、振る舞いに至るまで、劇的に変わっています。

 予備校生のようなスウェット、ジーンズの姿で、ごくごく個人的な日常を吐露するフォークソングの作風が、きちんと仕立てたスーツに身を包み、世の中全体に政策提案をするようなフレージングで、シャープでタイトな日本人にしかできないソウルミュージックへと進化した。

 簡単に言うと、アーティストとしてのグレードが急上昇したのです。たとえるなら、ファストファッションからハイブランドになった。音、ビジュアル、立ち居振る舞い、全ての面で目に見える形でステータスが上がったのですね。

◆エッセイの文庫化で下ネタ削除

 文筆活動においても同様です。2014年のエッセイ集『蘇る変態』(マガジンハウス)の文庫版『よみがえる変態』(文春文庫 2019年)では、コンプライアンス的に厳しい下ネタが削除されています。

 当時舞台で共演した女優に冗談っぽく、<どうだい木南さん、野波さんの女優のお二人、見てください。俺はいま勃っています。>となっていた箇所が、<稽古場の皆さん、ぜひ見てやってください。私の股間は元気ですよ!>とリライトされている。

 また、<スポーツニュースの女性アナウンサーの脚を見て「ここ三日間で抱かれたか否かを予想」したりして>という一文は、全て削除されています。

◆常に認識をアップデートして、自分の行動に反映

 このように過去をなかったかのようにする処置を批判するのは簡単なことです。しかし、キャリアのステージや社会的な立ち位置が変われば、言動、振る舞いに要求されるものは高くなります。若気の至りはそれとして、常に認識をアップデートして、自分の行動に反映していく。

 そうした時代の変化を感じ取っていることを、わかりやすくサウンドや文章で具現化していく。社会の“今”を正確に把握していることを創作を通じて世の中に訴えているので、それが彼の発言そのものに説得力を与えているのですね。

 人は変わるし、成長する。星野は、その当たり前で難しいことを身を以て証明してくれているのです。

◆率直な表現と、新垣結衣との掛け合いを披露するバランス感覚

 社会に大きな影響を与え、またその言葉が信頼を得ている星野源。清新なイメージを支えているものは、地道なシグナリングの積み重ねにあるのだと思います。

 今回の一件で世論が一気に逆転したのも、騒動自体への悲しみや憤りを率直に表現したことと、一方で、新垣結衣とのユーモラスな掛け合いを披露することでクールダウンさせる絶妙なバランス感覚があってこそ。

 それは、ミュージシャンや役者としての星野源が見せる顔と共通した点でしょう。

“作品と人格は別”では済まなくなった時代のアーティストとして、星野源の振る舞いは大きな指針となっているのです。

<文/石黒隆之>

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

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