Huaweiの新ハイエンドスマホ「Pura 70 Ultra」を試す 制裁下でこの性能は“魔法を使っている”と思わせるほど

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2024年06月03日 11:01  ITmedia Mobile

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Huaweiの最新スマートフォン「Pura 70 Ultra」を試す

 GalaxyやXiaomiといった新型スマートフォンに沸き立つ中、中国ではHuaweiの最新スマートフォン「Pura 70」シリーズが話題を集めている。Puraシリーズは、従来の「P」シリーズから名称を変更したハイエンド系のシリーズ。


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 今回、筆者は「Pura 70 Ultra」の実機を入手したので、レビューしよう。今回のレビューは電波法第103条の6の解釈のもと「海外で開通した携帯電話」を持ち込んで確認を行った。


●中国製造のKirin 9010を搭載して制裁を回避 十分なパフォーマンスを発揮


 まずは、主なスペックを見ていこう。


・プロセッサ:HiSilicon Kirin 9010


・メモリ:12GB


・ストレージ:512GB/1TB


・画面:6.76型 フルHD+ OLED 120Hz対応


・アウトカメラ:メイン:5000万画素 27mm相当 F1.4-4.0超広角:4000万画素 13mm相当 F2.2望遠:5000万画素 95mm相当 F2.1


・インカメラ:1300万画素


・バッテリー:5200mA/h 100W急速充電 80W無接点充電対応


・衛星通信対応


 Pura 70 Ultraが採用しているプロセッサは、HiSilicon Kirin 9010を搭載していることが判明している。中国の半導体ファウンダリーであるSMICにて製造されており、製造プロセスは7ナノメートルと判明している。


 これはMate 60 Proに採用された「Kirin 9000S」とは異なるもので、新型の製品と考えられる。HuaweiのPuraの前にあたる「Pシリーズ」で新型のプロセッサが採用された例はまれだ。


 プロセッサのコア数は1+3+4の8コアだが、プライムコアとビッグコアの4コアが1コア2スレッドを担える仕様と判明している。Intelのプロセッサにある「ハイパースレッディング・テクノロジー」と同じようなものだ。そのため、システム情報表示アプリでは「12コア」と表示される。Kirin 9010はスマホ向けプロセッサとしてはKirin 9000S同様の8コア12スレッドのSoCと考えるべきだ。


 このような書き方をする理由として、メーカーの公式サイトなどの情報にはプロセッサの記載が一切ないからだ。加えて、プロセッサに関しては発表会も行われることなく発売されたため、購入者が調査する必要がある。


 そんなKirin 9010の基本性能は決して低くなく、昨今のハイエンドスマートフォンに匹敵する性能を持ち合わせる。名称から察するにMate 60 Proに採用されたKirin 9000Sのマイナーチェンジと思いきや、コア構成が一部変更されていることも判明した。グラフィックスに関しては、GPUにKirin 9000S同様の「Maleoon 910」を搭載していることが判明している。


 気になる性能について、簡単にベンチマークテストを行った。筆者が計測したベンチマークスコア(パフォーマンスモード)では、GeekBench 6でシングル1435点、マルチ4414点だった。これはGoogle Pixel 8などに採用されるTensor G3よりも高いスコアで、マルチコアではKirin 9000Sの20%増のスコアが出ている。


 グラフィック性能は3D Markで計測した。結果はWILD LIFE(Vulkan)で5710という結果で、これはTensor G3に迫るスコアだ。


  また、「原神」などの一部ゲームでは高度な最適化も行われていることが判明している。ベンチマークテスト上での数字で劣るプロセッサながら、原神の動作感はSnapdragon 8 Gen 2クラスを採用する機種にも引けを取らないのだ。


 スマホとして使ってみると、上記のような性能を持つだけあって、動作にストレスは感じない。パフォーマンスモードで使用してもバッテリー消費はさほど多くなく、問題なく利用できる。メモリは12GBで、8GBが多かったHuaweiとしては大容量の構成だ。


●5G通信に対応している可能性が極めて高い


 さて、今回のPura 70 Ultraも海外で試した限りでは“5G通信に対応している可能性が極めて高い”スマートフォンと結論付ける。既知の通り、米国のHuaweiに対する制裁は今もなお続いており、2023年の「Mate 60」シリーズの登場以降はより厳しくなっている。そのため、5G対応機器や最新プロセッサ、先端半導体の製造機器調達には大きな制限がかかっている。Pura 70 Ultraはそれを自国製造という力業で米国の制裁を回避した形と考えられる。


 5G対応について曖昧な表記としている理由は、Huaweiも公式にはPura 70シリーズが「5G通信対応」とは明記していないからだ。今回もメーカーサイトには5Gどころか4Gの対応周波数バンドの記載すら一切ない。


 この機種も例にもれず、アンテナピクトは4Gまでは示すものの、5Gの電波を受信している可能性がある場合はアンテナピクトに4Gなどの表記がなくなる。もちろん、端末側にネットワークの優先受信設定などはない。


 そんな端末が本当に5G通信に対応しているのか。筆者も実際に試してみたところ、日本の通信網でも安定して200Mbpsを記録した。瞬時値では1Gbpsを超える値を計測するなど、一般に4Gの理論値といわれる1Gbpsに迫る値を複数回計測した。


 日本未発売の海外端末かつ、中国本土以外の4Gキャリアアグリゲーションへの対応や最適化も不十分なことを踏まえると、この数字は4Gスマートフォンとしては考えにくい。実測で1Gbpsに迫る高速通信が可能なことから、今回のPura 70 Ultraも「5G通信に対応している可能性が極めて高い」と結論付ける。


●本体に合成皮を採用、衛星通話にも対応


 ここからはスマートフォンとして見ていこう。6.8型の有機ELディスプレイは120Hzのリフレッシュレートに対応している。少し前のトレンドであった3Dガラスのような仕上げとなっており、質感や画質に関しては価格相当の良質な仕上がりとなっている。自社開発の強化ガラス「Kunlun Glass」を採用し、高い耐久性も備えている。


 また、画面ベゼルは上下左右面均等配置の構成だ。ディスプレイの輝度も向上しており、手動でも比較的明るい「iPhone 15」や「Galaxy S24 Ultra」を上回る輝度を出せる。


 本体は合成皮を採用しており、ガラス製のボディーを採用したスマホとは異なる上質な仕上がりだ。日本円で20万円を超えるグレードの商品だけあって、価格に見合った高級感も兼ね備えている。実は過去のPシリーズでもレザー仕上げのものはなく、今回のPura 70 Ultraが初めて。同シリーズ内でも異色の存在感を示している。


 Pura 70 Ultraではバッテリー容量も5200mAhへ増加。こちらも競合他社の製品と比較しても遜色のない仕上がりだ。この他に100Wの急速充電に対応。ワイヤレスでも80Wの急速充電が可能で、ワイヤレスイヤフォンなどを充電できるリバースチャージにも対応する。


 Pura 70 Ultraの大きなアピールポイントとしては、衛星通信対応とHarmonyOS 4.2になる。この衛星通信機能は中国版GPSの「北斗」を用いており、緊急発信やSMS送信は同衛星の双方向通信を利用している。


 Mate 60 Proシリーズ同様に「天通」による衛星通話にも対応するが、上位モデルのPura 70 Ultraでは北斗と天通の電波を同時に利用することができる。このため、通話しながらのメッセージ送信、SOS信号の発信が可能だ。


 北斗ではテキストの他、HarmonyOS 4.2で画像送信にも対応した。今のHuaweiのスマートフォンはある種の衛星携帯電話といえる存在なのだ。


 OSはHarmonyOS 4.2を採用。同社が提唱する“シームレスな接続”を売りにしており、対応している家電や自動車などとの連携機能がより強化されている。システム情報表示アプリではAndroid 12と表示され、一般的なAndroidスマートフォン向けのアプリが動作する。


 なお、中国ではハードウェアに限らずソフトウェアの内製化も進めている。2024年中に発表される見込みのHarmonyOS 5.0は「Harmony Next」とも言われており、AndroidベースのOSではなくなると予告されている。このため、Pura 70シリーズがHuawei最後のAndroidスマートフォンとなる可能性が高い。


●制裁下でも今期トップクラスのカメラ性能 Huaweiスマホのカメラは期待を裏切らない


 Pura 70 Ultraでも高いカメラ性能は健在だ。メインカメラに5000万画素のものを採用し、特許取得済みの可変絞り機構も備えている。これに加えて4000万画素の超広角カメラ、5000万画素の3.5倍望遠カメラを搭載している。


 メインカメラには1型のイメージセンサーを採用。ついにHuaweiも1型センサーを採用したかと思えば、感慨深いものがある。メインカメラのレンズは沈胴式の設計にすることで本体の厚みを抑えることにも成功した。


 手ブレ補正にはiPhone 15 Proと同様のセンサーシフト方式を採用。高度なAI処理を駆使して時速300kmで走行する車両すらも捉えることができるという。ちなみにこの補正はメインカメラの他、望遠カメラでも利用できる。


 望遠カメラは5000万画素のペリスコープ方式。レンズはF2.1と明るく最短撮影距離は5センチという驚異的な数字だ。超広角から換算で200倍の望遠域をサポートする。マクロモードでは最大35倍までズームしてのテレマクロ撮影が可能だ。


 独自の画像処理技術として「Huawei image XMAGE」も採用している。ライカとの提携が終了したHuaweiにおいて、技術革新、撮影体験の革新を目的に新たな画像処理技術のブランディングとして展開するものだ。


 Pura 70 Ultraの写りを見て感じるのは、HDR補正が大きく入り、白飛びがかなり抑えられている。いわゆるAI補正重視の機種となるため、撮影時のプレビューと撮影後の写真では異なる描写となることが多く、体感的にはPixelシリーズなどに近い。


 売りの動体撮影機能は時速280kmで走行する新幹線から撮影した車窓でテスト。実際に撮影すると、高速走行している割には背景と手前の車両無線用のアンテナが同時に描画できるという驚異的な補正を見せつけた。人物やペットでもしっかり補正するため、不規則な動きをする子どもなどを捉える際に役立つ。


 13mm相当の超広角カメラもきれいに残せる。このカメラが強化される仕様は同社ではフラグシップのみなので、上位モデルであることを実感できる


 望遠性能も見事だ。3.5倍のペリスコープ方式の明るい望遠カメラを備えるので、構成的には先代の「P60 Pro」に近い。最大で100倍の望遠が可能だが、実用域は10倍といったところになる。


 マクロ撮影も優秀だ。Pura 70 Ultraはマクロモードでの最大35倍ズームも可能で、あらゆるものを拡大できる。1枚目はiPhoneのディスプレイ、2枚目はキーホルダーを拡大したが、かなりきれいに残せている。強力なAI補正と物理的な手ブレ補正機構だからこそ可能な作例だ。


 Huaweiが得意な分野はやはり料理の写真。AIが料理を認識するとF3.5やF4と絞って撮影するので、変にボケたり流れるといった描画が少なくきれいに撮影できる。大型センサーでも可変絞りを生かした表現といえる。


 アパチャーモードで絞りを自由に調整して撮影するのも面白い。環境がそろえば手持ちながら光線を持つ写真が撮れるなど、今までになかった撮影体験ができる。特許取得済みの可変絞り機構と高度な画像処理の組み合わせはHuaweiならでは。


 夜景モードについても比較的きれいに撮影することができる。Mate 60 Proで見られたフレアやゴーストといった部分も改善され、使いやすく進化している。


 画像編集では「AIレタッチ」内の機能が強力だ。HuaweiでもPixelでいうところの「編集マジック」に相当する機能が利用できるが、Pura 70 Ultraではオブジェクト消去と消去面の再構成を同時にできる。違和感こそ残るが、変にぼかしたりはしない。


 大きなオブジェクトを消去した場合は、全く異なるものを再生成するが、このあたりはPixelやGalaxy AIよりも優れていると感じる。


●制裁下でもここまでの製品を出してくる驚き Pシリーズ改め「Pura」シリーズはグローバル版も再展開へ


 2023年まで10年以上続いたPシリーズから名前を改め、より進化した“カメラ特化スマホ”となったPura 70シリーズ。カメラ以外のスペックの多くは“ブラックボックス”として発売したものの、発売当日分は公式ストアで2分もたたないうちに完売した。改めてHuaweiの人気の高さ、中国市場での強さを感じさせられた。


 筆者が5月の連休に中国の深センを訪れた際もPura 70シリーズの存在感は大きく、フラグシップストアは平日ながら多くのお客さんでにぎわっていた。どこのお店でも在庫はなく、予約して購入する必要があった。


 Pura 70 Ultraを使った感想は、Huaweiが制裁を受けてもなお、ここまで高いレベル製品を出せるのかという驚きだ。特にアピールしたカメラ性能はXiaomi 14 UltraやOPPO Find X7 Ultraといった同世代の競合に全く引けを取らない。カメラハードウェア、ソフトウェア含めた「技術のHuawei」をまざまざと見せつけられる格好になった。


 基本性能もプロセッサの進化で不自由ないくらいまで高められており、ベンチマークスコアなどからも2023年のP60シリーズなどに迫る高性能を見せつけている。制裁下でも高性能なスマートフォンを出し続けられることに驚きを隠せない。もはや何かの魔法でも使っているのではないかと思わせるレベルだ。


 一方で制裁の関係からGoogleサービスは満足に利用できない。全く利用できないわけではないが、われわれが普段から利用するスマートフォンに比べると使い勝手は大きく劣る。購入を考える場合は“使えないもの”と考えた方がよさそうだ。


 Pura 70シリーズではプロセッサやディスプレイ、バッテリーに加え、DRAM(メモリ)やNANDフラッシュ(ストレージ)をはじめ、各種計測センサーや指紋センサーなども中国製造の部品で構成されていることが判明している。


 このため、構成部品の60%が自国製だったMate 60シリーズよりも多くの中国製部品が採用されている可能性が極めて高い。今回レビューのPura 70 Ultraでもメインカメラの1型センサー(ソニー製)を除き、主要コンポーネントは全て中国メーカー製のもので構成されていることが判明している。最終的にHuaweiは、スマートフォンを構成する半導体や各種部品の自給自足を目指しているものと考えられる。


 さて、Pura 70 Ultraの存在は晴れて“復活のHuawei”と筆者は評価したい。Mate 60シリーズは「制裁を回避した商品」という意味で復活だが、Pura 70 Ultraは「スマホカメラのイノベーション」という意味での復活。かつてのP20 ProやP30 Proと同様の「ワクワクさせてくれるスマートフォン」なのだ。


 このPura 70シリーズは中国以外でも欧州や中東、東南アジアをはじめとした20を超える国と地域で販売されることが決まっている。これは自国製プロセッサを安定供給できることの現れであり、SMICの歩留まりが悪いと指摘される報道をはねのけることを意味する。


 一方で、グローバル版は中国大陸向けとは一部仕様が異なる状態で発売されるようだ。OSはHarmonyOSではなく、EMUI14.2に変更され、衛星通信機能などにも対応しない。加えて、香港キャリアのCMHKのサイトでは「Pura 70 Ultra 4G」とあることから、5G通信にも対応しないものと思われる。


 最後になるが、今回のPura 70シリーズの価格はPura 70で5499元(約11万7000円)から、Pura 70 Proで6499元(約13万9000円)、Pura 70 Pro+で8999元(約19万1000円)から、今回レビューしたPura 70 Ultraは9999元(約21万3000円)からとなる。


 Huaweiのスマートフォンは他の中国メーカーの製品と比較すると全体的に高価ではあるが、中国向けのiPhone 15 Pro Maxが9999元。Galaxy S24 Ultraが9699元(いずれも256GB)であることを考えると、最上位のPura 70 Ultraの価格も特別高価ではないことが分かる。中国メーカーの製品は品質や性能で劣ると指摘され続けたが、このスマホを見せつけられると、他国の高品質な製品に真っ向勝負できるところまで進化したことを痛感させられる。


 日本ではGoogle系サービスが満足に利用できない関係で「あえて買うか」と問われると微妙な選択になるが、Huaweiのスマートフォンのカメラに感じた「わくわくさ」をずっと追いかけ続けたファンを決して後悔させない仕上がりだ。


●著者プロフィール


佐藤颯


 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。


 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。


・X:https://twitter.com/Hayaponlog


・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/


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