【F1第8戦無線レビュー】「その言葉を待っていた」後方を抑えて走っていた角田にようやくペースアップの指示

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2024年06月04日 13:20  AUTOSPORT web

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2024年F1第8戦モナコGP 角田裕毅(RB)
 2024年F1第8戦モナコGP。今年はスタート直後に2カ所でアクシデントが起き、赤旗中断となる波乱のスタートを切った。再開後は各車タイヤマネーコメントに徹する展開となったが、そんななかホームレースを迎えたシャルル・ルクレールが悲願の優勝を果たしたのだった。モナコGPを無線とともに振り返る。

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 スタート直後、ボー・リバージュの全開上り区間で、ハースの2台とセルジオ・ペレス(レッドブル)が絡む大事故が発生した。

ギャリー・ギャノン:ニコ、大丈夫か?
ニコ・ヒュルケンベルグ:なんてこった。(しばらくXXXを連発)あれは意味がなかったね。

 ケビン・マグヌッセンとペレスの接触事故の巻き添えを食ったヒュルケンベルグ。放送禁止用語を連発しているわりには冷静な口調だったが、やりきれない思いは十分に伝わった。

 そして直後には、ポルティエでアルピーヌ2台の同士討ちも起きた。

ピエール・ガスリー:あいつ、何してるんだ、何のつもりなんだ! なぜ僕にアタックしてくるんだ!
カレル・ルース:赤旗だ!
ガスリー:クルマがひどいダメージを受けた!

シャルル・ルクレール:みんな大丈夫か?
ブライアン・ボッツィ:大丈夫だけど、カルロスはパンクだ。

ピーター・ボニントン:赤旗だ。
ルイス・ハミルトン:だから言ったじゃないか。言ったよね。

 ルイス・ハミルトン(メルセデス)はおそらく、ミディアムタイヤでのスタートを主張したのだろう。そうすればレース序盤に赤旗中断になった時に、ハードに履き替えられると。その意見が容れられなかったことに、ハミルトンは明らかに不満げだった。

 そしてレース再会後は、1セットのタイヤでチェッカーまで走り切るべく、超スローペースの周回が続いた。

12周目
ジョージ・ラッセル:ポケットに3秒あるんだけど。
マーカス・ダドリー:この段階で速く走っても意味がない。
ラッセル:了解。

 渋滞にハマり、予想以上の戦闘力の無さに苦しむ6番手マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、自虐的なジョークで気を紛らわせるしかなかった。

18周目
フェルスタッペン:めちゃくちゃ退屈なんだけど。枕を持ってくればよかったよ。

 一方、3番手のカルロス・サインツ(フェラーリ)は、すぐ前でシャルル・ルクレール(フェラーリ)を追うオスカー・ピアストリ(マクラーレン)の動きに警告を送る。

サインツ:ルクレールはマネージメントしてるんだろうけど、ピアストリがすごく近づいてる。突っ込んで来るかもよ。

 実際、その2周後、ポルティエでルクレールを刺しに来たが、抜き切れなかった。

 サインツの背後にはランド・ノリス(マクラーレン)。5番手ジョージ・ラッセル(メルセデス)のペースがかなり遅く、ノリスとラッセルのギャップはピットロスタイムの20秒を越えようとしていた。

32周目
サインツ:20秒(ギャップが)開いたら、ランドがソフトに替える恐れがあるよね。
リカルド・アダミ:その通り。
サインツ:そしたらちょっとヤバいよね。

 マクラーレン2台の状況を受けて、レースエンジニアのブライアン・ボッツィがルクレールにペースアップを指示した。

39周目
ボッツィ:もうちょっとペースを上げたほうがいい。
ルクレール:どうして?
ボッツィ:マクラーレンがピットストップウインドウに入るのを防ぎたいからだ。

 その後のルクレールはややペースを上げ、背後のピアストリとの差を1.5〜2秒ほどにキープしながら周回を重ねた。それでもかなり遅いペースに変わりはない。当然ながらルクレールの本心としては、速く走りたくてしょうがない。

48周目
ルクレール:僕にマージンがどれくらいあるか、伝えようか?
ボッツィ:いや、必要ない。わかってるから。
ルクレール:いらないって、言った?
ボッツィ:その通り。
ルクレール:ひどいね。
ボッツィ:ごめんよ。

 51周目、6番手フェルスタッペンを1.5秒前後で追走していたハミルトンが、アンダーカット狙いでピットに向かった。コース復帰の際のペースについて、ボニントンが指示を出す。

52周目
ボニントン:通常のアウトラップだ。ラップタイムはそれなりにね。
ハミルトン:どれくらいプッシュすればいい?
ボニントン:ひたすらプッシュだね。鈴鹿の時みたいに。フェルスタッペンは今、ピットレーンだ。

 結果的にフェルスタッペンが先行し、アンダーカットは失敗してしまう。

54周目
ハミルトン:どうしてアウトラップが勝負を決めると言ってくれなかったの?

 フェルスタッペンをアンダーカットできなかったことに、ハミルトンは盛大に不満を訴えた。ボニントンは一応「プッシュしろ」と指示していたが、ハミルトンには響かない表現だったようだ。レース後にトト・ウォルフ代表は「チーム側のミスだった」とコメントした。

 中団勢では8番手の角田裕毅(RB)がアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)以下を抑えるべく、スローペースで走り続けていた。しかし終盤になってようやく、本来のペースで走っていいという指示が出た。

66周目
マッティア・スピニ:戦略的にマージンがあるから、プッシュしていいよ。
角田:その言葉を待ってたよ。

 その後の角田はみるみるアルボンを引き離し、14秒差で8位チェッカーを受けた。

 そしてルクレールが、ついにモナコを制した。さすがに興奮冷めやらない。

ボッツィ:やったぞ。ついに勝った!
ルクレール:イエ〜ス!!! イエス!! イエス!! クールダウンさせなきゃいけないのは、マシンだけじゃないね、ハハハ。
ボッツィ:クルマのクールダウンは、こちらに任せてくれ。
ルクレール:今夜は盛り上がるぞ〜
ボッツィ:僕らも延泊を決めたよ。

 いつもならスタッフは決勝日の夜にイタリアに戻るが、この日ばかりは滞在延長を決めた。

アダミ:P3だ。
サインツ:よかった。素晴らしい週末だった。おめでとう。特にシャルルにおめでとうだ。

 チームプレイに徹し、3位表彰台のサインツ。これまでモナコでは2度、2位表彰台に上がり、なかでも一昨年のそれは優勝まであと一歩だった。ルクレールに先を越されたことが悔しくないはずはないが、それでも心からの祝意を送っていた。

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