WRCチャレンジプログラム2期生がタフなサルディニア島のグラベルに挑戦。厳しいステージの洗礼を受ける

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2024年06月05日 07:40  AUTOSPORT web

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山本雄紀/マルコ・サルミネン組のトヨタGRヤリス・ラリー2 2024年WRC第6戦イタリア
 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である小暮ひかると山本雄紀が、5月31日から6月2日にかけて、イタリアのサルディニア島で開催されたWRC世界ラリー選手権第6戦『ラリー・イタリア・サルディニア』にトヨタGRヤリス・ラリー2で参戦。小暮はクラッシュによりデイ2にリタイアを喫したが、山本は同じくデイ2に喫したデイリタイアの後に再出走し完走を果たしている。

 地中海に浮かぶサルディニア島を舞台とするこのラリーは、島北西部の都市アルゲーロを起点としたグラベル(未舗装路)ラリーだ。競技区間となるスペシャルステージ(SS)の多くはハイスピードでありながら道幅が狭く、道のすぐ近くには木や大きな岩が迫り、小さなミスが大きなアクシデントに繋がる。

 また、サルディニア島の路面は目の細かい砂状のグラベルに覆われているが、その下には硬い岩盤があり、同じステージでも1回目の走行と2回目の走行ではタイヤのグリップレベルが大きく変化する。路面温度も比較的高く、タイヤの消耗に厳しい路面も少なくないことから、タイヤマネジメントも非常に重要なラリーとして知られている。

 前戦、WRC第5戦ポルトガルで初めて四輪駆動のラリー2カーでグラベルラリーに挑んだ小暮と山本は、どちらもデイ2でリタイアを喫したが、貴重な経験を得ることとなった。そして今回のサルディニアでは、ポルトガルでの経験を活かし、さらに多くの距離を走ることを目標としていた。

 彼らは確実性の高い走りを心がけ、競技初日となった金曜日の4本のステージを順調に走行。小暮はWRC2クラス18番手、山本は同19番手でデイ1を終える。続く競技2日目、3日間で最長の1日となるデイ2に、ふたりはさらに多くの経験を積むべく臨んだ。

 しかし両名は1本目のSS5で戦列を去ることとなってしまう。小暮はコーナー進入時のブレーキングがわずに遅れ、アウト側の土手に激突。マシンはサービスで修復を受け翌日に再出走できる状態だったものの、小暮は右肩に痛みを感じ検査を受けることに。結果、骨折こそしていなかったものの大事をとって再出走を断念し、ここでリタイアとなった。

 一方の山本はコーナー内側の茂みの中に隠れていたコンクリート片にヒット。これによってサスペンションを壊してしまう。スペアパーツを搭載していたため自力での修理を試み、ふたたび走れる状態となったが、次のステージの出走リミット時刻を過ぎてしまいデイリタイアに。翌日再出走を果たした山本は、日曜日の非常にトリッキーな4本のステージを走破し、貴重な経験を積んでサルディニアでのラリーを終えた。

 元WRCドライバーで、ふたりのインストラクターであるユホ・ハンニネンは今回のラリーを次のように振り返っている。「金曜日はふたりともミスも問題もなく走り、いいスタートを切った。土曜日に関しては、1本目のステージが大きなチャレンジになるであろうことは、我々もドライバーたちも充分理解していた。恐らく、今回もっともトリッキーなステージだったと思う」

 同氏はふたりの挑戦がとても大きなものであること認めつつ、小暮と山本の両名が今後のレベルアップのためにいかに経験を積むかを考えなくてはならないと語った。

「非常に残念なことに、とても貴重な経験になったであろう、その後の150km近いステージを彼らは走ることができなかった。ただし、経験が充分ではない時は、いくら注意をしていてもミスをしてしまうものだ。彼らにとって、今回のようなテクニカルなグラベルラリーへの出場は、クルマの種類に関係なく初めてだった」

「またラリー2は、これまで彼らが乗ってきたクルマと比べるとかなり大きなステップアップだ。そのため、現時点では大きなチャレンジであることは間違いなく、今後、さまざまな路面やタイプが異なる道で経験を積むためにはどうするべきか、考えなくてはならないね」

「(山本)雄紀は日曜日に再出走し、独特なコンディションのステージを経験することができた。きっと驚くようないい経験になっただろうし、知らない道やコンディションを学ぶためには、ただ普通にステージを走り切ることがいかに重要かを気づいたのではないかと思うよ」

「次戦のエストニアは彼らが知っているステージにより近いラリーだし、ふたりにとってイージーかつ、いいイベントになることを願っている」

■「次はもっと我慢強く、そして賢く」ドライバーコメント全文

●小暮ひかる(GRヤリス・ラリー2/リタイア)
「サルディニアの道は幅がとても狭く、急なコーナーが連続して現れるなど、ポルトガルとはまったく異なる難しさでした。アイテナリーは通常のWRCイベントよりも少し短かったのですが、それでも選手たちがやるべきことは多くありました」

「自分はSS5の狭いセクションでミスをしてしまいました。その直前にハイスピードな区間があり、ペースノートに記していた情報が少し甘かったため、ブレーキが遅れてコーナー外側の何かにぶつかってしまいました」

「メカニックたちは素晴らしい仕事でクルマを直してくれましたが、ラリーに復帰することはできず、とても残念でした。次のラリーに向けて、何が起こったのか分析し、学ばなくてはなりません」

●山本雄紀(GRヤリス・ラリー2/WRC2クラス31位完走)

「ラリーを最後まで走り切ることが最大の目標だっただけに、複雑な気持ちです。土曜日の朝、レッキでは見つけることができなかった、茂みの中に隠れていたコンクリート片にぶつかってしまいました」

「ステージの途中で止まり、何とか自力でクルマを修理したのですが、次のステージのスタートリミットに間に合いませんでした。ポルトガルでは長い距離を走るチャンスを失い、サルディニアではすべてのステージを走り切ることがとにかく重要だっただけに、ダブルで失望を感じました」

「日曜日に再出走したときは、すべてのコーナーから学び、パワーステージはこれまで走った中でもっともラフな道でしたが、より良いフィーリングを感じて走ることができました。距離は短かったとはいえ、いい経験になりました」

「次回はもっと我慢強く、そして賢く走らなければならないと実感しました」

 小暮と山本、両名が出場する次なるラリーは7月5〜7日に開催されるERCヨーロッパ・ラリー選手権第5戦『ラリー・エストニア』だ。エストニアのステージは流れるようなコーナーが続くハイスピードなグラベルで、南ヨーロッパのラフで速度がやや低いラリーとは大きく異なるイベントとなる。彼らにとっては初めて出場するERCイベントとなり、ラリー2が最上位クラスとなるERCにおいて、ふたりがドライブするGRヤリス・ラリー2は、総合優勝を狙うことも可能なトップカテゴリーのマシンとなる。

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