LINEMO新料金プランは“楽天モバイル対抗”を強く意識 ただし経済圏やLINE連携には課題も

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2024年06月08日 06:11  ITmedia Mobile

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LINEMOは、7月中旬以降に新料金プランのLINEMOベストプラン、LINEMOベストプランVを導入する

 ソフトバンクは、オンライン専用ブランド「LINEMO」の料金プランを7月下旬に刷新し、「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」を開始する。“2択”の料金体系はそのままに、段階制の仕組みを導入することでユーザーごとに異なるデータ使用量に対応する構えだ。料金プランのスタート自体は7月下旬だが、6月14日には先行キャンペーンも開始。現行のミニプランに7GBを上乗せすることで、データ容量をLINEMOベストプランの上限と同じ10GBに引き上げる。


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 LINEモバイルを引き継ぐ形で登場したLINEMOは、料金の安さやLINEとの連携を売りにしてきた。一方で、新規契約者数の獲得では、メインブランドのソフトバンクやサブブランドのY!mobileの後塵を拝していたのも事実だ。LINEMOベストプランは、そのLINEMOをテコ入れし、他のブランドと差別化する狙いがある。同時に、楽天モバイル対抗も強く意識した料金体系に仕上げてきた。ここでは、その料金の仕組みやソフトバンクの狙いを読み解いていく。


●2つの段階制料金プランを導入し、10GB以下の低容量を強化


 LINEMOベストプラン、ベストプランVは、ともに段階制の料金プラン。料金は2段階で変動する形で、前者は3GBまでが990円(税込み、以下同)、それを超えると2090円に料金が上がり、10GBを超えると通信速度が300kbpsに制限される。LINEMOベストプランVは、20GBまでが2970円で、超えた時の料金は990円上がって3960円になる。こちらも30GBを超えると制限があり、通信速度は1Mbpsに低下。Y!mobileなどと同様、公正性のための2段階制限も用意されており、LINEMOベストプランは15GB、LINEMOベストプランVは45GBを超えるといずれも速度は128kbpsまで下がる仕組みだ。


 LINEMOベストプランは現行のミニプラン、LINEMOベストプランはスマホプランを置き換えた料金プランで、下限のデータ容量は変わっていない。これらに2段階目が加わり、2つのプランで4つの容量をカバーできるようになった格好だ。ただし、LINEMOベストプランVに関しては5分間の音声定額がセットになり、料金そのものは上がっている。スマホプランに5分の音声定額をつけるより安いため、人によっては値下げになる一方で、音声定額が不要な人には値上げになる点には注意が必要だ。


 LINEのデータ通信を通信量の計算から除外する「LINEギガフリー」や、「LINE MUSIC」を6カ月間無料にするサービスなどは継続する。ただし、スマホプランの特典として用意されていた「LINEスタンプ プレミアム for LINEMO」は、どちらの料金プランにもつかない。これは、LINEの有料スタンプが使い放題になるサービス。別途契約することは可能だが、スタンプ目当てでスマホプランを契約していた人は考慮しておきたいポイントといえる。


 ソフトバンクが主力と考えているのは、990円から2090円に変動するLINEMOベストプランだ。現状のLINEMOは、「ミニプランの方が多く売れている」(ソフトバンク 専務執行役員 コンシューマ事業推進統括 寺尾洋幸氏)。市場全体でも、「10GB以下の方は、全体の4分の3」(同)と数が多い。「この辺を狙うと、市場的にはLINEMOベストプランの方が多くなる」(同)という。もともとLINEMOは20GBプランでスタートしたが、より低容量のユーザーにターゲットをシフトした格好だ。


 小容量であれば現行のミニプランでフォローできそうだが、データ通信のトラフィックは年々増加しており、容量が足りないユーザーも増えてきた。寺尾氏によると、2024年4月時点で実に34%のユーザーがデータ容量を超過しているという。こうしたユーザーが増えると、「ご満足いただけていないので、解約率が高くなる」(同)。新規契約の獲得だけでなく、解約抑止の観点でも現状の3GBよりデータ容量が多い料金プランを導入することが必要だったというわけだ。


●LINEMOベストプラン導入の狙いは? ソフトバンクが示す3つの理由


 ソフトバンクがLINEMOの新料金プランを導入した狙いは、主に3つある。1つ目が、先に挙げたデータ使用量の増加に対応し、解約を抑止すること。2つ目が、Y!mobileとの差別化だ。Y!mobileが2023年に導入した「シンプル2」は、Sが4GB、Mが20GBで、4GBと20GBの中間がない。シンプル2 Sは、「データ増量オプション」をつけても6GBまでしか増量できず、6GBを超えると選択肢がない状況だった。3GBから10GBに変動するLINEMOベストプランは、この間を埋める料金プランといえる。


 もう1つのLINEMOベストプランVは、データ容量が20GBから30GBに変動するが、このデータ容量はそれぞれY!mobileのシンプル2 Mやシンプル2 Lと同じだ。どちらも中容量という点では、Y!mobileとバッティングするようにも見える。


 一方で、Y!mobileのシンプル2は、従来以上に家族契約や光回線などのセット契約を重視した料金体系になっており、割引の比重が大きい。20GBのシンプル2 Mも、「おうち割 光セット」や「PayPayカード割」がない素の料金は4015円に跳ね上がってしまう。これに対し、LINEMOは当初から「おひとり様でもお得になる料金を心掛けてやってきた」(同)。こうした特徴は、新料金プランでも健在。データ容量をY!mobileとそろえたことで、それがより明確になった。


 データ容量の設計は、「悩みに悩んだ」(同)という。「3ブランドをうまく差別化していかないと、どこかに雪崩が起こってしまう」(同)からだ。想定以上にソフトバンク内でのブランド移行が進むと、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)が落ち、経営の不確定要素になる。逆に、LINEMO自体の契約者数はソフトバンクやY!mobileほど伸びておらず、テコ入れの必要もあった。LINEMOベストプランは、その答えだったというわけだ。


 3つ目の狙いが、ユーザー数を伸ばす楽天モバイルへの対抗だ。LINEMOベストプランという名称からも、この料金プランが楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」を強く意識して設計されていることがうかがえる。「10GB以下では業界最安」(同)とうたっているのは、そのためだ。寺尾氏も「意識してないと言ったら、そんなことはない」と認める。


 実際、Rakuten最強プランで3GBを超えると、次に料金が変わるのは20GB。間が大きく空いており、使用したデータ量が10GBでも料金は2178円かかる。LINEMOベストプランはここを突き、3GB超20GBで2178円のRakuten最強プランより安い2090円という料金を打ち出した。もともと3GB同士の比較ではLINEMOの方が安かったが、その上の階段にいるユーザーを狙う戦術だ。ソフトバンク内でLINEMOの比率が上がればARPUは下がるが、他社からユーザーを奪えれば収益は純粋なプラスになる。新料金プランの導入で、対楽天モバイルの色をより濃くしたといえる。


●経済圏をどう生かすか 課題が残るLINEMOのサービス連携


 もっとも、楽天モバイルには、Rakuten Linkを介した音声通話やSMSが無料になるサービスがあり、この点を加味するとLINEMOベストプランの方が料金は高くなる。また、LINEMOベストプランには10GBを超える設定がない。LINEMOベストプランVを選ぶ手もあるが、こちらは少々割高。楽天モバイルの場合、20GBを超えると3278円で無制限になるため、LINEMOベストプランが全てのユーザーにピッタリとは言い切れない。


 これに加え、楽天モバイルは、家族割引や若年層へのポイント還元プログラムを充実させている。「最強家族プログラム」を適用すると料金は各容量帯で110円下がり、LINEMOベストプランを下回る。LINEMOベストプランが“最安”になるのは、あくまで1人で契約した場合という限定条件がつく。逆に言えば、LINEMOは、単身で契約しており、かつ比較的データ使用量の少ないユーザーを奪おうとしていることが分かる。


 通信以外では、SPU(スーパーポイントアッププログラム)で楽天市場のポイント還元率が4%上がる楽天モバイルに軍配が上がる。6月からは楽天ペイと連携した新規ユーザー向けのキャンペーンも展開するなど、さまざまな特典を多数用意している。楽天グループの巨大な経済圏を生かし、楽天モバイルの魅力を高めているといえる。


 経済圏がないのは、LINEMOの弱点にもなっている。もともとLINEとの連携を売りにしていたLINEMOだが、先に挙げたように、LINEMOベストプランVではスタンプの特典もなくなってしまった。同じソフトバンクでも、ソフトバンクやY!mobileは「LYPプレミアム」が無料でつく。また、ソフトバンクではPayPayでお得になるクーポンが手に入ったり、PayPayの還元率が上がるペイトクを主力にしていたりと、自社グループのサービスを上手に連携させている。


 LINEギガフリーや6カ月間のLINE MUSIC無料がこれに相当するものの、LINEらしさは希薄だ。グループであるYahoo!JAPANやPayPayなどとの連携もなく、LINEの名を冠しているのとは裏腹に、より“土管”に近い通信サービスになってしまっている。この点を問われた寺尾氏は、「LYPプレミアムをLINEMOに導入することを検討している」と語る。LINEスタンプ プレミアムをLINEMOベストプランVから外したのは、そのためだという。


 LINEMOなどの通信サービスを通じて「LINEなり、PayPayなりにアクセスしていただくことは、われわれにとっても大きい」(同)。ただし、LYPプレミアムはまだ検討の段階。「そのまま(ソフトバンクやY!mobileと同じ形で)入れるかどうかは分からない」(同)とする。とはいえ、ソフトバンクやY!mobileと特典が同じでは、差別化にならない。LINEMOならではの、工夫したサービスが求められそうだ。


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  • スマホで7Gて即死やんww
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