『ぼっち・ざ・ろっく!』vs『けいおん!』13年で何が変わった? 超名作バンドアニメを徹底比較

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2024年06月08日 08:40  クランクイン!

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『ぼっち・ざ・ろっく!』vs『けいおん!』13年で何が変わった? 超名作バンドアニメを徹底比較
 「まんがタイムきららMAX」(芳文社)にて連載中の、はまじあきによる漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』通称『ぼざろ』。“陰キャ”な主人公がガールズバンドに入り活躍するという青春ストーリーで、2022年にアニメが放送されると、アニメファンからバンドファンまでザワつかせ人気を博した。本日からは、劇場総集編の前編も公開されている。ところで、ガールズバンドを主人公としたバンドアニメといえば、2009年より放送した『けいおん!』が思い出される。放送時期に13年の開きがあるこの2作だが、それぞれが青春バンドアニメの金字塔として語られ、比較されることもしばしば。今回は、『けいおん!』と『ぼざろ』が社会に何をもたらしたのか、考えてみたい。

【写真】邦ロックファン「ニヤリ」な小ネタ満載『ぼざろ』キャラ達をチェック

■主人公取り巻く環境から見る時代の変化

 まず、2作品の主人公とその環境について見ていこう。『けいおん!』は、廃部寸前の桜ヶ丘高校軽音楽部に主人公の平沢唯を含め4人の女の子が入部するところからスタート。唯の入部理由は、軽音楽を「軽い音楽って書くから簡単そう」と思ったから。部室でおしゃべりをしたりお茶会を開いたりしながらゆる〜く過ごす日々を中心に、4人がバンドとして少しずつ成長していくさまを描く日常系に近いストーリーだ。

 一方『ぼざろ』は、友達0なので毎日押し入れの中でギターを1人黙々と練習し続けていた女子高生・後藤ひとり(あだ名は「ぼっち」)が、メジャーデビューを目指すガールズバンドに半ば強引に加入させられることから物語が動き出す。コミュニケーション能力が著しく低いぼっちが、キャラの全く異なる他3人のバンドメンバーに振り回されながらも「結束バンド」のメンバーとして徐々に“バンドマン”になっていく姿を描く。

 どちらも原作は4コママンガであるため、基本的にはゆるっとしたギャグが豊富なアニメに仕上がっている。しかし、『けいおん!』が緩く楽しく青春をおう歌する女子高生たちを描くのに対し、『ぼざろ』はあまりぼっちたちの学校での姿は描かれず、拠点とするライブハウスやスタジオでのシーンが多い。『ぼざろ』は『けいおん!』に比べ、より具体的にバンドとしての夢を追いかけているという印象だ。

 これは、SNS等の発達により誰でも“見つかり”さえすればスターになる可能性がある近年のエンタメ界を表しているように感じる。実際、ぼっちはバンド加入前、顔を隠して1人でギターを弾く姿を動画サイトに投稿し、まあまあネットで有名になっていた。夢の実現がより身近になり、その分ライバルも増えた今だからこそ、緩いギャグの中に若干のヒリヒリ感が加わったのが『ぼざろ』といえるのではないだろうか。

■ライブシーンが超進化! 手書きの革命vsこだわりまくりモーションキャプチャー

 続いて、バンドアニメの要ともいえるライブシーンの描き方について見ていきたい。『けいおん!』は、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』などを手掛けた京都アニメーションが製作。2000年代当時、手書きアニメーションでキャラクターが楽器を演奏するなど不可能に近いとされていた中で、多数のオリジナルソングを活き活きと演奏。意地悪に見れば、工数のかかる手元のカットなどはなるべく少なくしているようにも思えるが、当時のアニメシーンからすれば革命的な名場面を量産したことは間違いない。アニメらしい表現やキャラクターの表情の豊かさといった点では『けいおん!』のライブシーンは今なお語り継がれるものだ。

 2022年の『ぼざろ』は『アイドルマスター』シリーズや『四月は君の嘘』で知られるCloverWorks製作。こちらはモーションキャプシャーを使用してライブシーンを描いているため、キャラそれぞれの動きが独立している印象だ。手元など複雑な動きをする個所も見事に描き出している。音響にも非常にこだわっているようで、シーンに合わせてわざとズレた演奏を収録したり、弦の切れたギターを使用したりすることで執念すら感じるほどに素晴らしいライブシーンを数々生み出した。

■『けいおん!』『ぼざろ』が社会に与えたものとは

 緩いガールズトークと、それまで不可能とされていた高レベルのバンドシーンの実現で爆発的な人気を博した『けいおん!』。放送当時中学生だった筆者は、高校に入学し普通にバンドに憧れて軽音楽部に入ったら、周りには『けいおん!』ファンだらけで驚いた経験がある。当時、『けいおん!』メンバーとコラボした音楽機材なども多数発売され、バンドに興味のなかった学生たちを音楽の道へと導くほど、多大な影響力を持っていた。まさに“社会現象”と言って過言ないだろう。

 一方、『ぼざろ』はというと“社会現象”とまではいっていない印象ではあるものの、NetflixやAmazon Prime Videoなどで配信もされていたことで、じわじわと国内外で人気が広がりファンを獲得していった。

 また『ぼざろ』は各話タイトルが人気バンド・ASIAN KUNG‐FU GENERATION(通称「アジカン」)の楽曲タイトルに毎度なぞらえていたり、「結束バンド」メンバーの苗字がアジカンメンバーと同じだったりといった邦ロックファンをくすぐる仕掛けも。劇場総集編後編のサブタイトル「Re:Re:」もアジカンの人気曲名と同じだ。アジカン以外にも、邦ロックファンにはピンとくる小ネタが満載なので、探してみてほしい。

 筆者が『ぼざろ』の影響を感じたのは、アニメ放送後にアジカンのライブを訪れたとき。集まったファンたちの中に、ぼっちのぬいぐるみや『ぼざろ』の缶バッジを付けている層を少なからず発見したのだ。『ぼざろ』はアニメファンを邦ロックに引きこんだし、邦ロックファンにアニメのパワーを知らしめたかもしれない。『ぼざろ』によって新たな世界を開いた人が確実にいる。これは、実にすごいことではないだろうか。

 アニメファン、そしてそれ以外の層まで広く支持されているバンドアニメ、『けいおん!』と『ぼっち・ざ・ろっく!』。2つの作品にはその時代の背景が少なからず反映されていて、それぞれが“音楽”への間口を開いたことは間違いない。続編も期待される『ぼざろ』はこれからどんな世界を見せてくれるのか、そして次の時代にきっとまた新たに生まれるであろうバンドアニメにも思いを馳せながら、私たちは凍てつく世界を転がるように走り出すのである。(文・小島萌寧)

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