モラハラ毒父と絶縁したのに「今度は私がモラハラしてる…」29歳女性の悲鳴。“毒親の血”は連鎖するのか<漫画>

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2024年06月13日 16:01  女子SPA!

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『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(漫画:龍たまこ、原作:中川瑛/KADOKAWA)より
モラハラ加害者の視点を描き大きな反響を呼んだコミック『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』。その続編『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(漫画:龍たまこ、原作:中川瑛/KADOKAWA刊)は、父親のモラハラ・DVが原因で絶縁した「父と娘」の物語です。

社内で“仏の鳥羽さん”と慕われながら、大手商社で管理職を務める男性・鳥羽。その過去の顔は、厳しすぎるハラスメント上司でした。家庭でもモラハラとDVを繰り返した結果、離婚しています。

その後、同世代の男性3人でルームシェアをする鳥羽と、「許せない毒父」のトラウマを抱え続ける娘・奈月。娘は父を許すのか? 娘もまた、毒親になってしまうのか? ハラスメントの連鎖は断ち切れるのか――? 仕事と家庭、家族のつながりについて考えさせられる話題作を、出張掲載。

さらに、3人の子どもを育てるマンガ家でシングルマザーの龍さんと、モラハラ・DV加害者のための変容支援コミュニティGADHAを主宰する原作者の中川さんに、本作について語ってもらいます(以下、KADOKAWAの寄稿)。

◆「自分も同じ事をしていないか、振り返るきっかけに」

――前作『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』は加害者側の心理を描いて話題となりましたが、前作発売後の読者の反応などいかがでしたでしょうか。

漫画・龍たまこさん(以下、龍):反応は様々で、「自分もモラハラ・DVに遭ってきた」「うちの夫(父)のことかと思った」「今どきこんな昭和な夫いるわけない」という声や、「スカッと系だと思って読み始めたら加害者心理がしっかり描かれていて、いい意味で裏切られた」と言う声が多く聞かれました。意外にも女性側から「自分も同じ事をしていないか、振り返るきっかけになった」という意見も多かったです。

男性は手に取りにくいだろうな、と思っていましたが、意外と男性からの感想も多く見られました。思っていたより凄い反響で驚きました。

◆「加害者は変わることができる」というメッセージ

原作・中川瑛さん(以下、中川):加害者側の心理を描いて多くの話題を呼んだことに対し、非常に嬉しく思っています。Amazonのレビューが1000件を超えた際には、加害者変容についての内容がこれほどまでに多くの方に届くとは思ってもみなかったため、驚きました。

表紙のイメージから、最近流行の復讐劇や加害者が報いを受ける物語(ざまぁ系)と見なされがちだったと思います。しかし、実際には読者から「全然違う結末になって驚いた」「感動した」「DVの根本的な解決には加害者の支援も重要だ」といった肯定的な反応を得られたことが、非常に嬉しかったです。私が伝えたかったのは、「加害者は変わることができる」というメッセージでした。

しかし、漫画にも繰り返し書いてある通り、被害者には加害者を支援する義務や責任はなく、加害者が必ずしも変わるわけではないという点には注意が必要です。その点を指摘するコメントも多くありました。「逃げるべきだ」とか「こういうのはほとんどありえない」といった意見もあり、それは重要な指摘でもあると思っています。

◆モラハラ・DVの加害は“連鎖”するのか

――今回は「加害の連鎖をどう断ち切るか」というテーマが描かれています。今では会社で“仏の鳥羽さん”と慕われる男性の娘・奈月(29歳)が、彼から受けたモラハラが傷になり、大人になっても自身の感情を制御できずに苦しむシーンに心を揺さぶられました。この「加害の連鎖」についてご意見をお聞かせください。

龍:子どもの頃に安心安全な環境で育つことができないと、自分の本心を抑圧した状態がデフォルトになってしまい、大人になっても、自分の本心がどこにあるのかわからないままです。いわば自分の基礎工事がしっかりできないまま、グラグラの状態で社会に出ていくようなものなので、これは本当に不安定で生きづらいんですよね。

親子関係というのは人生最初の「親密で安心な関係」なのに、そこでうまくいかないと、大人になってから恋人などと親密な関係を持とうとしたときに、過度に依存的になってしまったり、逃避的になってしまったりします。とにかく人との距離感が上手く掴めない、自分の子どもにもどう接してあげて良いかわからない。「愛する」って何なのかわからない。そんな状態で子どもを持って育てていくことがどれほど困難かわかりますよね。

自分は絶対に親と同じような親にならない、と決意しているのに、気付いたら親と同じ事を繰り返してしまう。加害の連鎖を断ち切るのって本当に難しいことだと思っています。

◆連鎖する加害を止めるのは簡単なことではない

中川:私は加害が連鎖すると思っています。よく「加害は連鎖しない」「虐待は連鎖しない」という言葉を耳にしますが、これはおそらく、虐待を受けていた人が親になる際の不安や恐怖に対して、「必ずしも連鎖するわけではないから、子どもをちゃんと育てられますよ、安心してね」という励ましや応援の文脈から生まれた言葉だと思います。

加害、支配、虐待、トリートメントなどの定義は時代によって変わりますが、変わるからこそ、それが連鎖していないように見えることもあると思います。自分がされて嫌だったことを、子どもにはしない、という形で、連鎖を止めることができるからです。しかし、それは学び変わろうとする意思あってのことであり、決して簡単なことではありません。連鎖自体は起きてしまうが、それを止められることもあるといった性質のことなのではないかと思います。

実際、自分が受けていたことが良くなかった、許せないものだと理解していても、ストレスを抱えた時にどう振る舞えば良いのか、その代替手段を知らないために、被害者自身が加害者になってしまうような連鎖もよくおきます。イライラしたら物に当たるという親を見て育つと、イライラした時に、他にどんな手段でそれを緩和できるかがわからないということです。ダメだダメだと思いつつ、親と似たようなことを自分もしてしまっている……と絶望する方はたくさんいます。

◆愛情表現のつもりで家族を傷つけていることも

中川:また、これよりもさらに難しい連鎖は愛されていると受け取ったものを、愛しているつもりで他人に伝える際、それが加害や支配になるパターンです。普通のこと、当たり前のこと、自然なこと、家族だからこういうものだと思っていたことが、現代においては加害だということもよくあります。教育虐待などは典型だと思いますし、体型を馬鹿にしたり、「からかい」が実は人を深く傷つけるものだということがわからず、愛情だと思ってしまって、子どもを傷つけることになったりすることもあります。

しかし、どのパターンであっても、人は学び変わることができるため、連鎖もまた、起きることを前提とした上で、それを止めることもできると思います。連鎖という言葉が強すぎるのかもしれません。それは社会的学習、生まれ育った中で身につける人間関係のコミュニケーションのパターンであり、それを学習しない、それから影響を受けないということはありえない、と考えると当然のことであるとさえ思います。しかし、その学習を学び直すことは可能なのだ、ということが僕の思っていることです。
【龍たまこ】
3人の子どもを育てるマンガ家。1981年生まれのシングルマザーで、保育士の資格を持つ。ライブドア公式ブログ「新・規格外でもいいじゃない!!-シングルマザーたまことゆかいな子ども達-」をほぼ毎日更新中。著書に『規格外な夫婦~強迫症夫と元うつ病妻の非日常な日常~』(宝島社)、『母親だから当たり前? フツウの母親ってなんですか』(KADOKAWA)。X(旧Twitter):@ryutamako、Instagram:@ryu.tamako2

【中川瑛】
モラハラ・DV加害者変容に取リ組む当事者団体「GADHA」代表。妻との関係の危機から自身の加害性に気づき、ケアを学び変わることで、幸せな関係を築き直した経験から団体を立ち上げる。現在は加害者個人だけではなく、加害的な社会の変容にも取り組んでいる。著書に『孤独になることば、人と生きることば』(扶桑社)、『ハラスメントがおきない職場のつくり方 ケアリング・ワークプレイス入門』(大和書房)。X(旧Twitter):@EiNaka_GADHA

<構成/女子SPA!編集部>

【女子SPA!編集部】
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa

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