「おまえ、お荷物だって自覚ある?」部下を潰すパワハラ上司。家庭でも同じことを続けた“ヒサンな結末”<漫画>

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2024年06月15日 09:00  女子SPA!

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モラハラ加害者の視点を描き大きな反響を呼んだコミック『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』。その続編『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(漫画:龍たまこ、原作:中川瑛/KADOKAWA刊)は、父親のモラハラ・DVが原因で絶縁した「父と娘」の物語です。

社内で“仏の鳥羽さん”と慕われながら、大手商社で管理職を務める男性・鳥羽。その過去の顔は、厳しすぎるハラスメント上司でした。家庭でもモラハラとDVを繰り返した結果、離婚しています。

その後、同世代の男性3人でルームシェアをする鳥羽と、「許せない毒父」のトラウマを抱え続ける娘・奈月。娘は父を許すのか? 娘もまた、毒親になってしまうのか? ハラスメントの連鎖は断ち切れるのか――? 仕事と家庭、家族のつながりについて考えさせられる話題作を、出張掲載。

さらに、3人の子どもを育てるマンガ家でシングルマザーの龍さんと、モラハラ・DV加害者のための変容支援コミュニティGADHAを主宰する原作者の中川さんに、本作について語ってもらいます(以下、KADOKAWAの寄稿)。

◆子どもを自分の分身のように扱っていないか

――娘・奈月が大人になっても苦しむさまを見て、親から子へのハラスメントは被害が甚大で抜け出すのに膨大な時間がかかるのだなと再認識しました。親から子へ、または大人から子どもへのハラスメントについて、ご意見をお聞きしたいです。

漫画・龍たまこさん(以下、龍):わたしは今42歳ですが、うちの父くらいの世代になると、「子どもの人権意識」というのは非常に希薄でした。子どもは、農村地帯においては労働力であり、親には絶対服従するものであり、1人の人間として扱われてはいなかったと思います。

今はそこまでではなくなったと思いますが、自分の子どもを自分の分身のように扱い、子どもを自分の思い通りにしようとしたり、自分が叶えられなかった夢を子どもに託したり、子どもと自分との間で自他境界ができていないパターンは多く見られると思います。

◆「自分は正しいことをしてる」と思っているときこそ危険

龍:すべての親が肝に銘じなければならないことは、親からどんな目に遭わされても、それでも子どもはそこからなかなか逃れられないということ。子どもには生活力が無いので、親に養ってもらわないと生きていくことができない。簡単に支配と服従の関係ができあがってしまうんです。

大人と子ども、男性と女性、上司と部下。その関係性において力のある方が何かを命令すれば、力の弱い者がそれを拒否するのは難しい。だからこそ、力のある側がいつも気をつけなければならないと思います。

自分は子どもが3人いますが、親子関係おいては簡単に「支配」と「服従」の関係を作り出せることがわかっているからこそ、自分の言動をできるだけ振り返るようにしています。「よかれと思って」「正しいことを」していると思っているときこそ、危険だと実感しています。

◆適切な行動も、時代が変われば“不適切”になる

原作・中川瑛さん(以下、中川):親から子へ、そして大人から子どもへのハラスメントに関して、私の考えは少し複雑です。社会の常識や環境が変化していく中で、親が子どもに伝えるべきことや、子どもたちがどのように振る舞うべきかという観点も変わってくると思います。

例を挙げると、例えば新卒一括採用社会なのかどうかや、男女雇用機会が不均等なのかどうか、そういった環境次第で、どういった教育が適切かというか、子どもためを思うと良いか、というのは変わっていくと思います。その時々で、正しい教え、これで子どもが生きやすくなるはずだと信じてとった行動が、社会の変化に伴って違ってしまう、ということは容易に想像できます。

善悪とか、良し悪しというのは本当に変わっていきます。環境問題や社会の持続可能性を考えた時、私たちの現在の行動が未来世代にどのような影響を与えるか。今私たちが普通だと思っている行動が、将来的には疑問視され、批判されるかもしれません。例えば、食肉・畜産業や、飛行機の利用やプラスチック製品の使用、安価な服の購入などは、今は日常的な行動かもしれませんが、これらが地球の持続可能性を損なう行動として将来批判される可能性があります。

◆自分が正しいと思わずに、いつでも学び直しや相談を

中川:ハラスメントの多くは、悪意から行われていません。むしろ良かれと思って、それが普通・常識だと思って行われています。そして、その時々の普通を次の世代に引きつごうとするとき、後から見て加害的な振る舞いが許容されていることはよくあります。このような構造になっているように思います。

このように、その時その時で正しいと思って行うことが、後から見て問題があったとされることは、今後も起こり得ると思います。そのため、自分が正しいと信じて行動することの危険性を認識し、学び直しや相談を重要視する必要があると考えます。自分の時代はこうだったけれども、これからは違うのかもしれない……という不安や疑問を抱えながら、子どもと接することが重要です。

しかし、そのためには社会的な支援や相談ができる環境の整備も同じように必要です。個人にだけ責任を押し付けるのは無理があります。子育て支援に典型的なように、そういった不安を共有したり、相談したりできる場所を作っていく必要がありますし、政策的に支援される必要があるでしょう。

◆間違いを認め、謝り、言動を変えていく

中川:それでも、その時その時に一生懸命に学んだとしても、後から批判されることもあるでしょう。その時には、その批判の背景にある痛み、傷つき、悲しみなどに目を向け耳を傾けることが大事だと思います。ハラスメントは、したくてしているわけではない。だとしても傷ついた人はいる。その人の傷つきを知ろうとし、ケアしようとし、再発をしないように、これから関わる人との関わりを変えていこうとすることが求められていると思います。

なぜなら、その変容が、実は子どもに渡せる一番の教育になるからです。人は学び変わることができる、間違いを認め、謝り、言動を変えていくことができるということが、他者と関わる上での一番の信頼となり、また、自分も間違えてしまった時に学び直そうと思える勇気につながるからです。
【龍たまこ】
3人の子どもを育てるマンガ家。1981年生まれのシングルマザーで、保育士の資格を持つ。ライブドア公式ブログ「新・規格外でもいいじゃない!!-シングルマザーたまことゆかいな子ども達-」をほぼ毎日更新中。著書に『規格外な夫婦~強迫症夫と元うつ病妻の非日常な日常~』(宝島社)、『母親だから当たり前? フツウの母親ってなんですか』(KADOKAWA)。X(旧Twitter):@ryutamako、Instagram:@ryu.tamako2

【中川瑛】
モラハラ・DV加害者変容に取リ組む当事者団体「GADHA」代表。妻との関係の危機から自身の加害性に気づき、ケアを学び変わることで、幸せな関係を築き直した経験から団体を立ち上げる。現在は加害者個人だけではなく、加害的な社会の変容にも取り組んでいる。著書に『孤独になることば、人と生きることば』(扶桑社)、『ハラスメントがおきない職場のつくり方 ケアリング・ワークプレイス入門』(大和書房)。X(旧Twitter):@EiNaka_GADHA

<構成/女子SPA!編集部>

【女子SPA!編集部】
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa

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