高橋巧筆頭に3連覇狙うTeam HRC。「誰が乗っても速く走れると思っていた」新加入の名越と荒川が感じた課題/鈴鹿8耐テスト

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2024年06月17日 18:00  AUTOSPORT web

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名越哲平(Team HRC)/2024鈴鹿8耐 合同テスト
 2024年の鈴鹿8時間耐久ロードレースの開催まで、残すところ約1カ月ほどに迫ってきた。直近の2大会で2連覇を成し遂げたTeam HRCは、優勝チームの最有力候補としても注目を集めている。今年は高橋巧、名越哲平、ヨハン・ザルコという新たな布陣で3連覇に臨む彼らが、6月4〜5日に鈴鹿サーキットで実施された鈴鹿8耐テストにて公に走り始めた。

 Team HRCは、2022年鈴鹿8耐でホンダにとって8年ぶりの優勝をもたらし、2023年も完璧なレース運びで2連覇を達成した強豪チームだ。毎年、長島哲太や高橋といったホンダのエースライダー、そしてMotoGPやWorldSBKで活躍するイケル・レクオーナやチャビ・ビエルゲを起用し、盤石の体制で臨んでいた。

 ところが、今年は全日本ロードレース選手権において高橋は、JAPAN POST HondaDream TPから第2戦もてぎでトライアウトに参戦して鈴鹿8耐の出場権を獲得。そして長島はTeam HRCが履くブリヂストンタイヤではなく、ダンロップタイヤの開発ライダーに就任してDUNLOP Racing Team with YAHAGIから参戦。そのことから事前テストでは別のライダーが参加しているとの情報もあり、ライダーラインアップに注目が集まっていた。

 そこで、6月4〜5日のテストを前に発表された体制は、高橋を継続起用し、名越哲平とMotoGPライダーのヨハン・ザルコを迎え入れるというものだった。ズバ抜けた速さを見せ、2連覇に貢献した走りを見せた長島の名前はなかったが、新たな布陣が敷かれた。引き続きTeam HRCから参戦する高橋は、今年の体制について次の様に語った。

「そもそもトライアウトを受けると(JAPAN POST HondaDream TPから)聞いていませんでしたし、監督からレースウイークに入って言われました。僕は今年もHRCとの契約があるので、そちらを優先するということは最初に伝えていました」

「去年までは哲太選手がしっかり引っ張ってくれていて、ペースもタイムも速かったので、自分もそういう風にしていかなければなりません。ですが、ここまでテスト回数も多くなく、雨が降ったりと整ったコンディションで正確な判断ができていないのが正直なところです。でも、Team HRCなので大丈夫だと思います」

 そう語る高橋とともに、3連覇を目指す要員として抜擢された名越はプライベートテストから参加していた。全日本ロードでも活躍しており、前年度の鈴鹿8耐ではSDG Honda Racingから参戦し、2位を獲得した経験も持っているため、期待がかかる存在だ。

「元々、僕はHRCの契約で全日本ロードも走っていて、まずはTeam HRCで走るというよりも鈴鹿8耐のテストに参加するお話を頂きました。結果を残せば、チームの一員として迎え入れるということも言われていたので、気合は入っていました」と名越。

 また、今の時点では発表された体制に名前はないが、2022年に全日本ロードのST600王者に輝いた荒川晃大もプライベートテストから参加していた。よって、6月4〜5日のテストでも高橋と名越、そして荒川の3名がマシンを走らせることとなった。ザルコは、前日までイタリアでMotoGPのムジェロ公式テストが実施されていた兼ね合いもあり、現地に姿はなかった。

 今回の事前テストでは、プライベートテストで高橋がメインにテストとセットアップしたマシンを持ち込んでいた。1日目にはプライベートテストよりもタイムが伸びないという課題もあった様で、原因究明も行っていたというが、マシン自体はほぼ本戦に近い状態だったという。

 そんな状況のなか、名越と荒川にとって公の場で他のチームと交えての走行は今回が初めて。まずは慣れることに専念していたようだが、ふたりにとって2連覇を達成しているホンダCBR1000RR-Rにどのような印象を抱いていたのだろうか。まず、昨年Team HRCの速さをコース上にて間近で見ていた名越は、想像と違う点があったという。

「誰しもが憧れるファクトリーのチームという意味で、すごく気になっていました。走り始めは昨年の優勝マシンに乗っていて、全日本ロードだと一発タイムをどうしても狙いたくなりますが、チームは決勝に照準を合わせているので、『走るために一発はいらないから、どれだけアベレージを落とさずに走れるかだよ』と言われ、見ているところが違うなと感じました」

「乗りやすいバイクと速いバイクは違うと思いますが、攻めれば攻めるほどマシンの挙動が抑えられ、ゆっくり走っている方が変な挙動が出たりするので、すごく扱い辛い車両だと感じています。誰が乗っても速く走れるのか思っていましたが、速く走らせるのに特化したバイクになっているので意外と難しいですね」

 マシンに対して少々難しい印象も抱いている様子だが、今回の2日間のテストにおいて2分06秒579というベストタイムを叩き出していた。名越は「狙っていたわけではなく、前に晃大選手が走っていたので必死に追いつこうと思い、周回していたらたまたま出ました」と説明。

 ただ、名越の言葉通り、鈴鹿8耐は耐久レースという点において予選では1発タイムも求められるが、決勝では自身のスティントにおいてどれだけ安定したペースで走れるかというアベレージタイムも求められてくる。そのため普段の全日本ロードレースとは違い、長時間のスティントを何度か担当しなければならないため、また走らせ方が変わってくる。

「2日間で3度1時間のスティントを走行しましたが、1回目はフィジカルがまだフレッシュな状態で、チームが想定していた以上のペースで走ることができて、非常に良い流れでした。でも、午後に本番想定で走った際は、タイムが落ちてしまいました」

「課題として出されていたアベレージタイムは一応超えることはできましたが、エースの巧選手と比べるとまだ0.1秒ほど遅いので、そこはしっかりどんなコンディションにも対応して、アベレージを上げていきたいという課題はあります」

 今回のテストで多くの周回を重ねたことで、課題も見えてきたという名越。そんな彼と同様に、テストに参加していた荒川もまた、自身の課題が明確になったという。

「元々、僕はST1000でダンロップタイヤを使用しています。そこからブリヂストンタイヤに履き替えた車両に、サスペンションやブレーキはオーリンズ製とブレンボ製からSHOWA製のものを使用したマシンで走っているので、走らせ方や操作の仕方が少し違うので苦戦しています」

「走らせ方をそのバイクに合わせ込めていない感じですね。課題のひとつとして、ブレーキで少し止めすぎてしまう傾向があり、旋回スピードをあまり上げていくような走らせ方が出来ていません。もう少しブレーキを離して、コーナーに飛び込めるようにしたいです」

 荒川は普段、マシンにおいてはJSB1000よりも改造範囲が狭いST1000クラスを戦っている。そのため、鈴鹿8耐を2連覇しているマシンではまた勝手や走らせ方も異なるため、現時点では少々厳しい状態にあるようだ。

 根本的な走らせ方が出来ていないという荒川だが、「巧選手と名越選手は、僕と全く違う走らせ方をするので、そこで僕のダメな部分がかなり浮き彫りになっています。なのでしっかり練習して自分なりに吸収出来ればと思っています」と、前向きな姿勢も見せていた。

 今回のテストで、本番さながらの雰囲気のもとで走り始めを行ったTeam HRCの高橋、名越、荒川の3名。各々がテストで様々な心境を抱え、課題も見えた有意義なテストとなったようだ。次回の6月19〜20日に行われるテストでは、ヨハン・ザルコが合流する予定だというが、3連覇に向けた完全体のTeam HRCの動きに注目したい。

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