ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。今回は?百獣の王?武井壮さんとの対談7回目です。東京出身のひろゆきさんと武井壮さんですが、意外と地方への憧れもある様子。そして「地方のほうがビジネスで失敗する確率が低い」ということですが、その理由についても話しています。
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ひろゆき(以下、ひろ) 武井さんって、東京生まれ東京育ちですけど、大学は神戸じゃないですか。珍しいパターンですよね。
武井壮(以下、武井) だね。大学時代、俺みたいな人は周りにいなかったなー。
ひろ 東京から進学するとしても京都や大阪、名古屋といった大都市くらいですもんね。
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武井 東京の人で「四国の大学に行くわ」という人はまず聞かないもんね。「四国に就職するわ」という人もあんまりいない。この現象はなんで起きているんだろう?
ひろ 日本人の多くが「東京や大阪などの大都市に憧れすぎ問題」がある気がするんですよ。でも、東京や大阪に住まなくても別に楽しく暮らせるじゃないですか。
武井 むしろ「地方のほうが楽しく暮らせただろうな」と思うことのほうが多いかも。
ひろ コロナ禍で2拠点生活をしている人たちがけっこう増えたじゃないですか。で、みんな地方の素晴らしさを語るんですが「だったら、2拠点にしなくて地方に住めばいいじゃん」と思うんですよ。
武井 都会の日常の便利さみたいなものに支配されすぎているのかな? 都心では深夜でもお店は開いているけど、地方へ行くと居酒屋さんも21時とかで終わったりする。それを不便だと感じているのかもね。
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ひろ ちなみにアメリカだと地元に残る人が多いですよね。その街のヒーローは地元の大学のアメフト部のクオーターバックで、卒業後は消防署で働いて、街でずっと尊敬されているみたいな。
武井 それで、そのクオーターバックにフラれた女のコたちが「アイツとは絶対に付き合うな」と言ったりするらしい(笑)。
ひろ あはは。一方で、日本って優秀な大学生はみんな東京や大阪に行っちゃうじゃないですか。
武井 日本は進学や就職で都市部に行く人が多いけど、「手元にどれくらい財産が残るか」「10年後にどんな暮らしをしているか」などを考えると都会が必ずしもいいわけじゃないと思うんだよ。あと、地方にいるほうがビジネスで成功する確率が上がると思う。
ひろ ですよね。例えば、東京で一般的な飲食店をやろうとすると、初期費用は1000万円とかかかるじゃないですか。でも、地方なら「実家を改造しました」くらいでスモールスタートできる。失敗することを考えると東京に出るほうがリスキーだと思いますけどね。
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武井 よく「地方には仕事がない」っていわれるじゃん。
ひろ 確かにキラキラしたイメージの仕事は少ないかもしれませんが、若い人が地方に行くとけっこうこまごまとした仕事があるみたいですよ。高齢者が多い地域は、若い人にお金を払ってでもやってもらいたいちょっとした作業がかなりあるみたいです。で、それを請け負っていると毎日忙しいみたいな話を聞くんですよね。
武井 確かに地方ではいまだに「なんでも屋さん」がけっこう重宝されているという話を聞くからね。
ひろ 病院に行くために車を出してお小遣いを5000円もらうみたいなこともあるみたいです。
武井 この前、知り合いのプロゴルファーと一緒に愛媛県松山市に行ったの。それで、例えば東京でゴルフの練習をする場合、24時間やっている練習場で3000円払って100球打つみたいな人が多いよね。でも、そのプロゴルファーが松山市で運営しているゴルフ練習場は、倉庫を改装した室内練習場で、そこに地元のおじちゃんやおばちゃんたちが集まってきてゴルフの練習をするのよ。
ひろ その地域のご老人はパターゴルフじゃなくて、ガチのゴルフをしているんだ。
武井 そう。その地域の人たちは毎日のようにチケットを買って、プロとおしゃべりしながらレッスンを受けている。このモデルってレッスン費用がダイレクトに入ってくるから個人のビジネスとしてはちゃんと成立しているんだよ。
ひろ ですよね。大成功したいなら都会のほうがいいでしょうけど、ビジネスで失敗する確率が低いのは地方ですよね。そして、それって「不幸になる確率も低い」ということです。
武井 そういえば、フランスはどうなの?
ひろ フランスってバカンス文化が根づいてて、1年に1回、1ヵ月くらいバカンスに行く人が多いんですよ。で、バカンス先で何をしているのかというと、山とか海とか湖でダラダラしている。結局、みんな田舎が好きなんです(笑)。
武井 じゃあ、田舎で暮らせる方法を見つけたほうがハッピーなのかもしれないね。
ひろ なので、パリに住んでいる人も年を取るとさっさと引退して海外のスペインとかポルトガル、あとフランスだとマルセイユとか南のほうに行きたがるんですよ。
武井 ひろゆきって生まれはどこだっけ?
ひろ 生まれたのは神奈川県なんですけど、すぐに東京に行って、東京で育ちました。
武井 地方で生まれた人と都会で生まれた人は、やはり考え方が違うのかね。どうなんだろうね。
ひろ その地方が嫌で東京に出てきている人は、かたくなに自分の出身地を嫌いますよね。地方特有の人間関係に疲れて東京に来る人もいますし。
武井 まあ、社会的な村構造みたいなものが嫌で出ていくという人はいるよね。確かに東京にはそれがないもんね。
ひろ そのぶん、東京は困っている人も助けないんですけどね。
武井 東京を出ていく人の心理というのは、「やっぱり地方がいい」ということなのかな?
ひろ あとは「東京よりもいい都市」に行こうとするパターンですかね。優秀な人はニューヨークとかロサンゼルスに行くじゃないですか。
武井 よりいい場所にね。それこそパリもそうじゃないの?
ひろ いや、東京よりも上を目指してパリに来る人はいないと思います。というのも、パリってビジネスをするには別にいい場所じゃないんですよ。ゴリゴリとビジネスしたいなら、アメリカに行ってIT業界で働いたりすし職人になったほうが稼げます。パリは働かない人たちの街ですから。
武井 歴史と文化は素晴らしいけどね。
ひろ 歴史と文化があるので、大した努力をしなくても観光客が来てくれる。だから、いかに頑張らないで金を稼いで引退するかというダラダラした街なんですよ。
武井 ひろゆきにぴったりな感じがするよ(笑)。でも、ひろゆきは意外と働いているよね。
ひろ 僕は自分の部屋の中でダラダラしているだけです。なので、パリに住んではいるんですが、日本の地方にいるみたいな感じなんですよ。でも、ネットもありますし、何かあれば東京や大阪にも行けますから、そんなに苦労は感じていません。
武井 松山も街がコンパクトで飲食店とかもキュッと集まっているんだよね。みんなそこにやって来てワーッて飲んで食って帰っていく。それはそれで楽しいだろうなと思ったなー。
ひろ ですね。
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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA)
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など
■武井 壮(So TAKEI)
1973年5月6日生まれ。東京都出身。タレント、元陸上十種競技日本チャンピオン。格闘技、野球、ゴルフなど様々なスポーツの経験を持つ。公式Webサイトは【https://gogotakei.com】、公式Xは【@sosotakei】
構成/加藤純平(ミドルマン) 撮影/五十嵐和博 ヘア&メイク/奥野誠