バッテリー駆動の「ポータブルクーラー」を検証、“真夏日の部屋”はどのくらい冷える?

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2024年07月14日 07:11  ITmedia NEWS

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山善「ELEIN コンパクトクーラー YBC-C04」。今回は、真夏日の30℃の部屋を冷やしてみる

 梅雨入りが例年より遅かった今年は、まだ多くの地域が梅雨明け前だが、すでに猛暑・酷暑が始まっている。7月初頭の首都圏でも40℃近い暑さを記録。そうなると欠かせないのがエアコンだ。


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 快適さだけでなく熱中症を防ぐためにも、エアコンは今や生活必需品となっている。しかし、ルームエアコンの利用にはハードルがある。室外機の取り付けが必須なため住宅の構造によっては取り付けられないし、壁に穴を開ける工事も必要だ。


 そこでコロナ禍で注目を集めたのが、工事不要で使えるスポットクーラーだ。今回、試したのは、昨年試用したポータブルクーラーと異なり、“バッテリー駆動でどこでも使える”点が特徴。山善の「ELEIN(エレイン)コンパクトクーラー YBC-C04」(以下コンパクトクーラー、実勢価格6万9700円、バッテリー別)だ。


●共用バッテリーでいろんな家電を動かせる


 今回試したコンパクトクーラーは、今年5月に発表されたバッテリー家電シリーズ「ELEIN」の1アイテム。第1弾はコンパクトクーラーのほか、扇風機やソーラーパネル、ポータブル電源というラインアップ。さらに今月には「ポータブル保冷温庫」の発売も予定されている。


 ELEINシリーズの最大の特徴はバッテリーを共有できること。今回のコンパクトクーラーも容量90Whの「リチウムイオンバッテリー YBD-5A」(実勢価格1万1000円)を最大4つまで装着でき、バッテリー駆動で使うことができる。


 コンパクトクーラーは、本体サイズが幅23×奥行き47.4×高さ32.2cm、重量8.5kgの持ち運びができるクーラーだ。付属のACアダプターでの稼働できるほか、本体側面に専用バッテリーが装着できる。バッテリーの場合、1つで強モード30分、4つ装着することで約2時間稼働する。


 冷房機能は非常にシンプルで、周辺温度-10℃の冷気が吹き出る。消費電力は200Wで、冷房能力は400W(0.4kW)だ。冷風運転は強度をHIとLOWの2段階で設定可能。また、風量も2段階で設定できる。タイマー機能も備えており、1/2/4時間が選べる。


●30℃の室内で検証してみた


 実際に、鉄筋コンクリートの集合住宅1階にある6畳の部屋でコンパクトクーラーを試用した。まずは室温約27℃の部屋で運転を開始。吹き出し口からの冷気の温度を計測したところ、約14℃だった。室温よりも10℃以上低い温度だったが、これはクーラーの周りの室温が低下したためだと考えられる。


 続いて真夏日の日中に運転した。室温が30℃になったところで、コンパクトクーラーを稼働させてみた。部屋の入り口に本体を固定し、付属のダクトを本体後部に取り付けて、ドアから室外に向かって排熱した。付属の排熱ダクトは直径約10cmあり、その分ドアは開いたままになってしまうため、部屋は密閉できない。温度計は本体の吹き出し口から約1.5m離れた場所の椅子の上に置いた。運転モードは冷風運転HIだ。


 このコンパクトクーラーは、本体の下部から空気を吸い込み、上部から冷気を放出する。風力はそれほど強くない。スタートから約30分の時点で温度計は約27℃に。その後1時間ほど様子を見たが、27℃から大きく下がることはなかった。


 電源を入れると排気音が響く。動作音はメーカー公称値で約53dB(A)。Aは人間の可聴域を考慮した補正ありという意味。そして50dBを分かりやすく表現すると「役所の窓口周辺」「始動時のエアコン室外機周辺」の音量とされている。試用したところ、“会話はできるが、テレビを見たり音楽を楽しむのは少々厳しい”と感じた。音が気になる場合は本体を部屋の外や離れた場所に置いて、ダクトを吹き出し口に取り付けて使う方が良さそうだ。


●洗面所やキッチン、アウトドアでも使える


 本体サイズやパワーから見ても、6畳の部屋の室温を大きく下げるのは難しいと感じた。しかし、しっかりと冷風は出ているので、ピンポイントで涼しくすることはできる。実際、テスト位置の椅子に座るとしっかり冷気を感じられた。


 ダクトが2本付属しているため、排気口と吹き出し口のそれぞれに装着できる。吹き出し口のダクトをサーキュレーターなどに向け、人に冷風が直接当たるようにして使っても良さそうだ。ポータブルなので、夏場に室温が上がりやすいカウンターキッチンの中や洗面所などでも使える。


 本体重量は約8.5kgで、持ち運びのできる重さだ。キャスターなどはないもの、本体上部に大きなハンドルがあるのでしっかりと持てる。中肉中背の妻に持ってみてもらったところ、「階段の上げ下げはあまりしたくないけど、隣の部屋に運ぶぐらいは問題ない」との感想だった。両手で持てばそれほど負担は感じないという。


 この可搬性とバッテリー駆動を生かして、アウトドアシーンでも利用可能。テントの中や車中泊の車内冷房としても活用できる。ただしバッテリーでの駆動時間は、1つ30分(冷風運転HI)と短いため、あくまで短時間での利用となるだろう。主にアウトドアでの利用を想定するなら、あらかじめ多数のバッテリーを充電しておくという使い方もできる。


 大型のスポットクーラーと比べると「部屋を冷やしたい」というニーズにはやや力不足な面は否めない。しかし好きな場所に移動して冷風を送る、という使い方は非常に便利。しかも最大2時間ならコードレスで使える。熱中症リスクを低減するためにも、エアコンのない空間で過ごすときに活用したい製品だ。


(コヤマタカヒロ)


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