トランプ前大統領の暗殺未遂で考える「まじトラ」。日本の企業人たちはどう受け止めているか

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2024年07月29日 07:40  週プレNEWS

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第1次トランプ政権期には経済制裁として中国製品に高率の関税を課すなど、米中経済戦争が過熱した


あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「米国の大統領候補選挙」について。

*  *  *

「もしトラじゃなくて、まじトラか、確トラだね」。ペンシルベニア州でのトランプ前大統領の暗殺未遂事件は衝撃的だった。聴衆の一人が死亡、二人が負傷し、20歳の容疑者トーマス・マシュー・クルックスは射殺された。

共和党の自作自演なはずはない。印象に残ったのは、負傷してから約1分後、シークレット・サービスに囲まれたトランプが星条旗を背景に拳を突き上げた写真だった。

「ざわ...ざわ...」。マンガ『カイジ』の擬音をリアルに感じた。私は企業人160人のLINEグループをもっている。そこではトランプ再選を前提とした企業の対策案が議論された。

もっとも多い意見は「どっちが大統領になっても追随するしかない」。企業人は安定して将来を読みやすいほうを好む。バイデン再選を予期していた人も多いが、これで「もしトラ」が「ほぼトラ」に変わり「まじトラ」「確トラ」に移ったようだ。今後も「ほらトラ」(ほら、トランプだ)と囁(ささや)かれるまで語呂合わせが続くだろう。

トランプ政権が再来し、ドル安への誘導により円高になれば現在の資源高は収まるかもしれない。ただし、大企業の為替差益は減少するだろう。また、米国は中国や日本からの特定製品の輸入に関税をかける可能性がある。

これは中国や日本をいじめているイメージでとらえられがちだが、実際のところ価格の上昇分は米国民が負担することになる。だから米国内の大減税がセットだろう。

そして、とくに脱炭素関係の産業が戦々恐々としているいっぽうで、軍事やエネルギー関連企業は恩恵を受ける可能性がある。何より企業人の関心事は、ウクライナ戦争が"ただちに終了"して世界が平穏になるのかだ。

トランプは7月15日からの共和党大会で正式な大統領候補に決定した。それにしても驚愕(きょうがく)したのはJ.D.ヴァンス(39歳)を副大統領候補に選出した点だ。

少年時代のヴァンスに扮(ふん)した子役が「J.D.! J.D.!」と連呼されている姿を、彼の自叙伝を映画化した『ヒルビリー・エレジー −郷愁の哀歌−』(Netflix)で見た人がいるかもしれない。

舞台はオハイオ州で、私が会社員時代によく行っていた地域でもある。主人公は、薬物依存症のシングルマザーと祖父母に田舎町で育てられる。母との喧嘩、母のヒステリーによる交通事故、失職、再婚と、祖母との生活。主人公は苦学してロースクールに進むが学費が払えず、弁護士事務所のインターンで稼ごうとするも、面接前日に母がオーバードーズで入院。保険に加入しておらず追い出されるが、家族は母親を引き取ろうとはしない......。涙なしには見られない。

米国では社会の分断が問題視される。また私たち日本人もよく「米国は格差社会だ」というが、米国の現実と悲しみは同映画をサンプルとすることで、物語としてはじめて実感できる。その原作者が副大統領候補とは、あらゆる「米国的な問題」の象徴として出来すぎた話だ。

ところで、死亡した容疑者はトランプ前政権発足時には12〜13歳だったはずだ。多感とも思い込みが過ぎるとも言える年代。その時代を、副大統領候補のように青春として思い出すこともあれば、容疑者のように行き場のない不満として犯罪にぶつけることもある。これも格差の象徴というわけか。

写真/時事通信社

このニュースに関するつぶやき

  • 原理主義者のバイデンより、トランプの方が「交渉」の可能性はある。相手のメリットを明確に提示すればお互いの落とし所を探れると思うぜ?
    • イイネ!9
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