昭和が続いていたら、来年は「昭和100年」。特に1980年代に生まれた文化や商品が、当時は生まれていなかった世代にも「レトロでカッコいい」とウケるなど、ノスタルジックブームが続いています。実際に子どもだった人たちが夢中になったあれこれを辛酸なめ子さんに振り返ってもらいました!
「ケント・デリカットとケント・ギルバートならデリカット派」だという、漫画家でコラムニストの辛酸なめ子さん。昭和の時代はどんな子どもだったのだろうか。
「埼玉の小学校で、運動ができて生命力が強い人が一番ヒエラルキーの上にいたので、存在価値があまり感じられない子どもでした。ちょっといじめられつつ、家に閉じこもっていたのですが、両親が厳しかったので、テレビドラマとかも見せてもらえなかったんですよ。当時流行ってた『毎度おさわがせします』(TBS系)も見られなくて、次の日の教室の話題がわからないこともありました」(辛酸なめ子さん、以下同)
おまじない、心霊写真に“儀式”も
そんな辛酸さんが当時凝っていたもののひとつが「おまじない」。スピリチュアルなものに惹かれていたのは幼少期からだったという。
「おまじないは結構、効果がありました。気になる人と近くの席になるおまじないをしたら3〜4回くらい連続でその人と近くの席になったんですよね。何度も近くになったので、離れるときに相手が寂しがったくらいです」
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こっくりさんなどのオカルト系や、超能力、UFOなども流行したのが昭和の時代。
「『あなたの知らない世界』(日本テレビ系)が好きで、心霊写真とかよく見てましたね。今はデジカメなので、オーブしか写らないんですけど、昔は顔がはっきり写ったものとか、海から無数の手が出ているようなものがあって。デジタルとフィルムでは何か違うのでしょうか……」
そんな中でも特に印象に残っている儀式(?)があるという。
「イスに座っている人を4人の人さし指で持ち上げるのですが、最初は持ち上がらないのに、みんなで手を重ねて念じた後は軽々と持ち上がるんです。おそらく潜在意識を高めるようなものだと思うのですが、現代はスマホでYouTubeばかり見ているので、そういった身体を使った実験をしなくなりましたよね」
現代の子どもと比べてよかったことはなんだろうか。
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「今思い返せば、スマホがなくて幸せだったのかな、と思います。本能的にも身体的にもいろんな感覚が発達した気がしますし、見えないものに畏敬の念を抱く、純粋な時代をもらえていたのかなと」
子どものころの経験が、現代の生きる術につながっていると分析する。
「あのころって、やたらと『えんがちょ』とか言ってましたよね。遊びでも『奈落』や『地獄』とかが身近でした。ケガレ意識ではありませんが、よくないものを避ける“儀式”は、現代の疫病を避ける気持ちにつながっているのではと思います」
しんさん・なめこ 1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家・コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。著書に『女子校育ち』(筑摩書房)、『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『煩悩ディスタンス』(小学館)ほか多数。
取材・文/高松孟晋
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