JR東日本首都圏本部は6日、鉄道地下トンネルの塩害に対する新しい吹付け補修工法の開発と導入について発表した。従来の補修工法と比較して、工期の大幅短縮と20〜30%のコストダウンが可能という。
海岸に接する地域の鉄道地下トンネルは、鉄筋コンクリートの継目部やひび割れからの塩分を含んだ漏水により、鉄筋腐食に伴う構造耐力の低下などが懸念されるため、定期的なメンテナンスを行っている。しかし、鉄道営業線内のメンテナンス工事は、短い作業時間(90分程度)、狭い空間、特殊車両(軌陸車)で機材を運搬する必要があるといった制約条件がある。
そこで、JR東日本首都圏本部東京土木設備技術センターは、現場第一線における技術開発として、材料メーカーのデンカと共同で、施工の効率化を期待できる鉄筋コンクリート構造物の新しい補修材料と吹付け工法を開発したとのこと。
具体的には、鉄筋の腐食の原因である塩分・水分の浸透を抑制する材料、補修材の硬化を加速させる材料、ひび割れを抑制するための短繊維を配合した粉体を新たに開発。粉体と水を混ぜ合わせてポンプで圧送し、ノズル先端で最適な配合量の添加剤を混ぜ合わせて吹付ける工法を開発した。
この新工法は、添加剤をノズル先端で加える方式に変更することによって圧送ホース内の流動性を向上させた結果、約3倍の吹付け量を実現。圧送距離は従来の20mから80mへ向上し、1時間あたりの吹付け量が従来の0.2〜0.3立方メートルから0.7立方メートルへ向上したという。
粉体と最適な配合量の添加剤の配合よって硬化を早めたため、最大吹付け厚さが増加。固まり始める時間(凝結始発時間)が従来の48分から22分に短縮され、吹付け(側面)の厚さは従来の40mmから120mmへ増加したという。
この新工法は、総武快速線馬喰町〜錦糸町間の地下トンネル区間の鉄筋コンクリート壁メンテナンス工事に導入されており、鉄道営業線内のメンテナンス工事における導入事例は鉄道業界で初めてとのこと。なお、JR東日本とデンカ共同で特許出願済みであり、国土交通省主催第7回インフラメンテナンス大賞技術開発部門優秀賞を受賞している。(木下健児)