動画カメラの“本命”か──ソニー「ZV-E10 II」はスマホ世代に向けた秀逸な入門機

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2024年08月18日 11:41  ITmedia NEWS

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“もふもふ”を付けた「ZV-E10 II」。前モデルを3年分モダンにしてイマドキの仕様となってリニューアルした

 個人の見解であるが、ソニー「VLOGCAM」シリーズの本命がやってきた、といって過言じゃないと思う。「ZV-E10 II」だ。


【その他の画像】


 2020年の「ZV-1」以来、ソニーのVLOGCAMはコンパクトカメラ型が3モデル(無印ZV-1、ZV-1 II、ZV-1 F)、ミラーレス一眼が2モデル(APS-CのZV-E10、フルサイズのZV-E1)と5機種登場していたが、1型センサーのコンパクト機だといまひとつスマホとの差別化要素が弱いし、フルサイズセンサー機だと価格も上がるし、レンズも重く高価になるしで、ちょっとハードルが高い。


 その点、ZV-E10はクオリティー的にもスマホと差別化できるし、コンパクトカメラ的な操作感で扱いやすいし、レンズを交換することでより撮影範囲を拡げられる。ただ発売以来数年が経ち、その後続々登場したVLOGCAMに比べると完成度で劣る点があったのだ。


 要するに、ちょっと古いところができたわけで、そこをぐっとてこ入れしてきたのがZV-E10 IIなのだ。


 でもって、これがなかなかVLOGと名付けながらも、カジュアルに写真も動画も撮れる楽しいカメラだったのである。


●ZV-E10 IIがαと違うところ


 基本的なところからいくと、ZV-E10 IIは本質的にはAPS-Cサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼。同社のαシリーズと違うのは、ボディ内手ブレ補正がないことと、メカシャッターを持たないことだ。


 手ブレ補正は手ブレ補正対応レンズで行う。動画時は電子的な補正をかけるので光学式手ブレ補正はなくてもなんとかなるといえばなる。


 動画時にアクティブ手ブレ補正をオンにすれば、画角はかなり狭くなるけれども、歩きながらの撮影くらいなら問題ない。派手に動くとさすがにアクションカム系には及ばないが、その辺は使い分けたい。


 メカシャッターレスについては、特に高速なセンサーではないのでローリングシャッター歪みはそれなりにあるけれども、そこは大きな問題ではないと判断されたのだろう。


 操作系もVLOGCAMならではの工夫がなされている。


 真上から見るとよく分かる。


 シャッターボタンの回りに注目。


 電源スイッチとズームレバーを設置。電源スイッチはZV-E10では本体正面のスライドスイッチだったが、ZV-E10 IIではシャッターボタン回りに設けられ、グリップしたまま手探りでさっとオン/オフできる。


 特徴的なのはズームレバー。電動ズームレンズ(レンズキットの薄型レンズがそれだ)なら、レバーでズーミングできる。


 標準ズームレンズを使っている限り、使用感はほぼコンパクトカメラだ。動画撮影時も電動ズームはズーミングが安定するのでいい。


 2番目の特徴は撮影モードダイヤルがないこと。


 あるのは静止画・動画・スロー&クイックの3つのポジションがあるスライドスイッチだけだ。PとかAとかSとかそんなこと知らなくても使えるよ、というメッセージだ。


 各種撮影モードはメニューから選ぶことができる。簡単な解説付なのも初心者向きでいい。


 3番目の特徴はマイク。


 本体上面に3つのカプセルマイクが内蔵されており、動画撮影時は付属のウインドスクリーン(通称:もふもふ)をアクセサリシューに取り付ける。


 これがあると、屋外での動作撮影時の音声が全然違う。風の音を軽減し音声をきちんと拾ってくれるのだ。


 前モデルと比べて進化した点も挙げたい。それはタッチパネルを使った操作系だ。最新のVLOGCAMと同様のタッチ操作が導入された。


 撮影やフォーカス・連写、さらに検出する被写体の選択などよく使うものを選べる。


 自撮り時も画面上のボタンでほぼ操作を賄える。なお三脚にしているのが別売りのシューティンググリップ。動画撮影時はグリップになる。。


 よくできているのは「おまかせオート」での「画像調整」機能だ。「おまかせオート」だとすべてカメラ任せになるのかと思いきや、そうじゃないのである。


 左下にある「画面調整」ボタンを押せば、背景ぼかし(絞り値のコントロール)、明るさ(露出補正)、色合い(ホワイトバランス)、クリエイティブルックの4つのボタンが下に現れる。


 この4つを平易な言葉で表示してくれるのでカメラに馴れてない人でも感覚的にセットできるのだ。


 おまかせオートといいながら、それなりにいじれるわけで、カメラについて詳しく知らなくてもいいよ、というメッセージを感じるモードだ。


 今回、縦位置にも対応。縦だとちょっとボタンのバランスがイマイチだけど、縦位置撮影(特に縦位置動画)を撮るときにいい。


●コンパクトデジカメ感覚でさくっと撮れるスナップ機かも


 カメラとしては実にソニーのミラーレス一眼なので写りは優秀。前モデルに比べてちょっと画素数が増えたセンサーになっているが使っていて違いを感じることはまあないだろう。


 VLOGCAMなので、おまかせオートで撮ってみた。


 レンズはキットレンズの「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS II」。IIとあるように新型になっており、前モデルよりちょっと軽くなった。薄型の電動の沈胴式パンケーキズームという特徴を活かしつつ、AF性能の向上やブリージング補正機能に対応するなど最新のボディに合わせてリニューアルされたものだ。


 24-75mm相当で薄くて軽い割に利用範囲は広く、ZV-E10 IIと合わせるとコンパクトデジカメの様に気楽に使える。


 モニターを開いて低い位置から暑くて誰もいない公園のブランコ。背景ぼかしオンで撮影。


 そうそうEVFがないので撮影は背面モニターに頼ることになるのだが、晴天下ではモニターの明るさを「屋外晴天」にしないと暗くて見づらい。でもいつもそうするとバッテリーの消費がはやい。ボタン一つで「屋外晴天」モードのオンオフが簡単にできてほしいなと思う。


 AFは被写体検出AFとして人物・動物・鳥をフォロー。


 こちらは動物の瞳を認識したシーンだ。


 ISO感度はISO32000まで(拡張ISO感度で最高ISO102400)上げられる。


 ソニーの画作りの特徴としてクリエイティブルックに注目したい。


 かつて「ピクチャープロファイル」という画作りのバリエーションを用意しており、今でもそれは残っているが、ソニーとしては静止画にも動画にも使える「クリエイティブルック」推しのようだ。


 代表的なものを4つ挙げてみた。特徴的なのはSH(ハイキーで明るくとる)とFL(フィルム調ということだ)だ。


 SHはイマドキっぽい画作り。逆光気味の屋外で力を発揮するわけで、これなんか露出補正はかけてない。肌をぱーっと明るく撮りたいときなんかにいい。


 というわけで、ソニーのカメラを楽しむなら、クリエイティブルックのFLやSHあたりを使ってみるといいかと思う。


 標準ズームレンズは電動式のパンケーキだが、ダブルズームキットに含まれるのは細くて軽くて廉価な55-210mm。こちらは電動ではないが、軽くて扱いやすいのでもうちょっと望遠側が欲しいという人におすすめだ。


 Eマウントレンズの中ではかなり昔のものだが、ダブルズームレンズキットに含まれるので借りてみた(実際にはブラックボディにはブラックのレンズがセットになる)。


 VLOGCAMなので動画にはもちろん強い。


 従来通り、商品レビュー用設定やシネマティックVlog設定も搭載。


 最高で4Kの60pで600Mbpsまで対応(最高画質で撮るにはV90対応のカードが必要)している。


●スマホとカメラで完結するイマドキのカメラ


 ネットワーク関連の強化も見逃せない。


 最新のソニーのカメラ同様、「Creators'App」に対応し、カメラ単体で登録したアクセスポイント(5GHz対応)経由でクラウドに写真や映像を自動アップロードできるし、単体でライブストリーミングもできるのだ。


 スマホからWi-Fi設定をカメラに転送するだけで、カメラ側でパスワードを入れる必要がないのもいい。


 クラウドへの自動アップロードをオンにすると、設定したWi-Fiアクセスポイントにつながっており、電源が入っていると自動的にクラウドへ写真や動画をアップロードしてくれる。


 カメラのユーザー登録をすると25GBまで無料で使用可能だ。あらかじめレーティングしたものだけアップロードするという設定もできる。


 また、スマートフォンへの転送もWi-FiのみならずUSBでの転送も対応しており、USB接続だとより高速な転送ができる。


 PCがなくてもスマートフォンとカメラだけで一通りこなせる設計になっているのだ。


 つまるところ、VLOGCAMというとVLOGに特化したカメラという印象なんだけど、VLOGってのはキーワードにすぎなくて、実のところ、気軽に持ち歩いて、静止画も動画もきれいに撮って、ときにはシェアもしたいというスマホ世代に向けた秀逸な入門機なんじゃないかなと思う。


 ややこしいところはカメラにまかせてカジュアルに静止画も動画も撮って楽しもうという、イマドキのカジュアルなミラーレス一眼としていろいろと考えられているのだ。


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