現代の製造業界では、安全のため工場内にガス検知技術の統合が必須となっている。多くの場合、カメラやロボットシステム、センサーを活用して危険なガスの漏れや周囲の変化を検知するのだが、こうしたテクノロジーには人間のような“嗅覚”が備わっているわけではない。
そこで米国のヘルスケア企業Ainosは、AI搭載の“デジタルの鼻”「AI Nose」を開発。今年8月には、日本の半導体製造工場における22種類の揮発性有機化合物(VOC)のサンプル761個を79%の精度で識別したと発表した。
有害なガス漏れを監視・防止する「AI Nose」何百もの嗅覚受容体と何兆もの匂いを区別する能力を持つ人間の鼻は、何世紀にもわたって病気の特定に欠かせない役割を果たしてきた。しかし、テクノロジーで人間の鼻を再現するのは、非常に難しいという。Ainosは、医療用途で10年以上の開発期間を経てAI Noseを開発し、産業分野への進出を遂げた。
AI Noseは有害なガス漏れを監視・防止する機能を備えたテクノロジー。作業員の安全を確保しながら効率的な工場運営を実現する、スマート製造における重要なツールとなる可能性を秘めている。
AI Noseはフォトレジストといった化学薬剤の漏れを迅速に検出し、製造工程における汚染リスクを軽減し、製品の歩留まりを向上することが可能。リアルタイム対応により、重大な健康リスクをもたらす化学物質の漏洩リスクを防ぐ。
また、製造設備のケーブルの過熱を検知して、電気故障による火災リスクを軽減できるのもポイントだ。
スマート工場のロボットシステムに統合予定[caption id="attachment_243779" align="aligncenter" width="1888"] Image Credits:Ainos[/caption]近い将来、AinosはAI Noseをスマート工場のロボットシステムに統合する予定だ。AI Noseを搭載したロボットは、周囲の環境をインテリジェントに感知し、より複雑なタスクをこなせるという。
AI Noseによってロボットに人間のような嗅覚を装備することで、人間の作業員との共同作業能力を向上。このロボットの性能向上は、より安全な作業環境を確保し、人類に利益をもたらす。
Ainosの取締役会長・社長でCEOであるChun-Hsien(Eddy)Tsai氏は「今後、当社の開発者やスマート製造施設からのより多くのデータでAI Noseを訓練することで、さらに精度を向上させる余地がある。AI Noseは、匂いをデジタル化できる、AIの感覚的な“鼻”になる可能性があると信じている」と語る。
「AI」と「Nose」を組み合わせた社名米国カリフォルニア州サンディエゴに本社を置くAinosは、AI を活用した新しいポイントオブケア検査 (POCT)と低用量インターフェロン治療薬(VELDONA)に重点を置いた多角的なヘルスケア企業。1984年に設立され、現在、申請中のものを合わせて60件以上の特許を保有している。
臨床段階の製品パイプラインには、ヒトおよび動物の経口治療薬「VELDONA」、ヒトの希少疾病用医薬品、AI Noseテクノロジープラットフォームを活用した遠隔医療向けPOCTソリューションが含まれている。
なお「Ainos」という社名は「AI」と「Nose」を組み合わせたもので、次世代のAI駆動型POCTソリューションによって個人がより効果的に健康を管理できるように支援するという同社の取り組みを反映している。
参考・引用元:
AccessWire
Ainos
(文・Haruka Isobe)