サッカー日本代表にパリオリンピック世代は割って入れるか 福田正博が期待の選手は?

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2024年08月29日 07:20  webスポルティーバ

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福田正博 フットボール原論

■サッカー日本代表は、9月5日から2026年のワールドカップ出場をかけた、アジア最終予選に臨む。来年6月まで続く本予選では、パリオリンピックでプレーした選手たちがメンバーに割って入り、チームを活性化できるかが重要だ。福田正博氏にA代表で活躍してほしい期待の選手を挙げてもらった。

【細谷真大には上田綺世と1トップを争ってほしい】

 U−23日本代表は、パリ五輪準々決勝でスペインに0−3で敗れた。結果は真摯に受け止めなければならないだろう。オーバーエイジを使わなかったことも今後の課題として残った。ただし、選手個々で見ると、A代表へのステップアップを期待したくなる選手がいた。

 まずは細谷真大(柏レイソル)だ。オリンピックの舞台でも、本来持っている力をしっかりと発揮した。先発出場したグループステージ1戦目、2戦目では得点を決められなかったが、チームのためにしっかりと働いてくれたし、途中出場した3戦目のイスラエル戦では勝負を決めるゴールを奪った。スペイン戦でも判定に泣かされたが、幻のゴールを含めて細谷らしいプレーを随所に見せてくれた。

 細谷のよさはDFラインの裏に抜けてのプレーやフィニッシュワークにあるが、苦手にしてきたポストプレーでも格段の成長を遂げている。いまや海外の屈強なDFを背負ってもボールをしっかり収めてくれるのは心強い。

 日本代表にとってポストプレーというのは不可欠なものだ。体を張ってボールを収めて攻撃への基点となることで、両ウイングや2列目の選手たちの特長を生かせるからだ。ただ、これまでを振り返ると、大迫勇也(ヴィッセル神戸)が1トップを張った時代に長らく代わりがつとまる選手がいなかった。いまは上田綺世(フェイエノールト)がようやく成長してきたが、細谷への期待も高い。

 身長178cmと格段に大きいわけではないが、フィジカルの強さがある。スピードもあって、ポジション取りも長けている。あとは海外選手と対戦する数をもっと増やし、そのなかで経験値を高めていければ、日本代表に不可欠な選手になる可能性は高いだろう。

 すでにA代表でのプレー経験はあるが、ここからはチームにしっかり定着してもらいたい。細谷と上田が刺激し合いながら成長をしていけば、日本代表のレベルを押し上げることになるはずだ。

【藤田譲瑠チマには圧倒的な存在感を見せてほしい】

 中盤のポジションは東京五輪世代が充実し、選手層が厚くて割り込むのは容易ではない。だが、藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)には期待をしている。パリ五輪で攻守において示した圧倒的な存在感、キャプテンとしての落ち着きなどは、遠藤航の後継者になれる可能性がある。

 藤田の特長は、他の選手に比べて圧倒的にボールをさばけることだ。プレービジョンが明確で、彼ほど縦パスを積極的に入れられる選手はなかなかいない。プレーの強度も高く、ボールを奪う能力もある。足元にボールが吸いつくようなコントロール技術があり、狙ったところに正確で速くて強いパスを出せる。

 藤田が秘めるポテンシャルは魅力的だが、A代表に入って中心的な存在になるためには、課題もある。そのひとつが所属クラブで安定して出場できるようになることだ。日本代表は一過性のパフォーマンスで選ぶものではない。今シーズンはまずは、シント=トロイデンでもパリ五輪で見せたような圧倒的な存在感を示してもらいたい。

 もうひとりは高井幸大(川崎フロンターレ)。

 現状の日本代表センターバック(CB)陣には、冨安健洋(アーセナル)、板倉滉(ボルシアMG)、町田浩樹(サン・ジロワーズ)、谷口彰悟(シント・トロイデン)、伊藤洋輝(バイエルン)らがいる。

 この顔ぶれに割って入れる力は、高井にはまだない。しかし、現在19歳ながらもU−23代表に入ってパリ五輪を戦った彼には、将来の日本代表を背負ってもらわなくては困るし、そこに向けた投資をしてもいいのではと思わせるものがある。つまり試合に起用する機会は少ないかもしれないがA代表に帯同させ、刺激を与えてレベルアップを促すのだ。

 それほど大事に育てたい逸材だ。身長は192cmで、現代サッカーのCBに求められる資質をすべて備えていると言っていい。フィード能力、ボールを運ぶ能力、空中戦の強さ、体のぶつけ合いに負けないフィジカル強度、スピードで縦を突く相手FWへ対応する足の速さ、足元でのボール扱いもうまい。

 関根大輝(柏レイソル)も楽しみな選手だ。パリ五輪では思ったような活躍はできなかったが、期待値は高い。日本代表の右サイドバック(SB)には菅原由勢(サウサンプトン)、毎熊晟矢(AZ)、橋岡大樹(ルートン・タウン)らがいて、菅原と毎熊は179cm、橋岡は184cm。

 クロスボールへの守備や攻守におけるセットプレーにおいて、日本代表のSBには高さもほしいなか、関根の187cmはひと際魅力的だ。攻守においてアグレッシブに動ける点も買っている。ただ、現時点で菅原、毎熊、橋岡を押し退けてまで使いたいかと言われると疑問符はつく。まずは守備の強度と安定感をスケールアップさせていきながら、A代表入りに向けたアピールをしていってもらいたい。

【斉藤光毅はもっともA代表に近い?】

 GKの小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン)もA代表入りに向けてステップアップしてもらいたい選手だ。昨季まで所属したベンフィカのセカンドチームでも出場機会は乏しく、試合経験の面で不安もあったが、五輪予選やパリ五輪を通じてポテンシャルの高さを示してくれた。

 惜しむらくは、スペイン戦で最初のシュートを防いでくれていたら、と思う。あのシュートはコンパクトで鋭い振りから放たれた対応が難しいシュートだが、小久保が触れるものだった。あのシュートに反応が遅れたのは、やはり試合経験の少なさが影響したかと思う。それだけに今季から移籍したシント・トロイデンでは試合経験を積んでもらいたい。

 彼のよさのひとつは、姿勢のよさにある。足元でボールを受ける時でも姿勢が崩れず視野を広くとれるため、相手FWからするとプレッシャーをかけにくい。こうして相手FWが飛び込んでこないと、小久保も安定してプレーできる。この部分での安心感は、鈴木彩艶(パルマ)よりも上だろう。

 ただ、ポテンシャルは証明したが、小久保がA代表に入るためには大迫敬介(サンフレッチェ広島)、前川黛也(ヴィッセル神戸)、谷晃生(FC町田ゼルビア)といった先輩たちの壁を越えなくてならない。また、日本代表守護神には、同世代の鈴木彩艶もいる。ただ、小久保が成長を遂げれば、日本代表GK陣のレベルは一気に高まるだけに、さらに飛躍してくれることを期待している。

 現状のパリ五輪世代で、もっともA代表に近いのは斉藤光毅(クイーンズ・パーク・レンジャーズ)だろう。日本代表の2列目は選手層がもっとも厚く、現状の斉藤ではスタメンで試合に出るのは難しいと思うが、彼のドリブル突破の能力はジョーカーとしての魅力がある。

 日本代表の左FWには三笘薫(ブライトン)がいて、中村敬斗(スタッド・ランス)も頭角を現わしている。ただし、中村はどちらかといえばゴール前に入っていくプレーが持ち味。斉藤にはサイドを切り裂いてチャンスメークができる選手として、三笘に代わってのジョーカーという役割があってもいいと思っている。

【まったく甘くないアジアでの戦い】

 日本代表は9月5日からW杯アジア最終予選に臨む。日本代表が戦うグループCには、オーストラリア、サウジアラビア、バーレーン、中国、インドネシアがいる。アジアからの出場枠は最大9に増え、3グループに分かれた最終予選は各グループで2位までに入れば出場権を自動的に手にできる(3〜4位はプレーオフへ)。

 多くの人たちは、出場権獲得は簡単だと思われるかもしれないが、実際はそう甘くはない。アジア全体のレベルが高まってきているなかでは、ホーム&アウェーで行なわれる最終予選では何が起きても不思議ではない。

 前回のカタールW杯予選では、初戦ホームでいきなりオマーンに敗れ、3戦目もサウジアラビアにアウェーで敗れた。僅差のスコアのゲームが続き、グループ2位で本大会出場を決めている。

 戦いは来年6月まで続く長丁場。そのなかでは故障者や調子を落とす選手も現われるはずだ。その時に今回のパリ五輪世代がしっかりと存在感を示し、日本代表のレベルをさらに高いものへと押し上げてくれることを期待している。

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