令和に復活のトヨタ「ランクル70」を選ぶ意味は? 試乗で考えた

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2024年09月06日 12:31  マイナビニュース

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トヨタ自動車が8年ぶりに日本で発売した「ランドクルーザー70」は、デビュー当時の40年前から変わらぬヘビーデューティーなSUVの代表格だ。良くも悪くも変わっていなさそうなランクル70を令和の今、選ぶ意味はあるのか。デビュー直後から各世代に乗ってきた経験も踏まえつつ、新型ランクル70に試乗しながら考えてみた。


モダンなSUVとは明確に違う運転席



日本では2度目の再販となったランクル70。デビューは1984年なので、今年で40周年を迎える。この間に何度も改良を重ねてきているが、フルモデルチェンジをしていないので、クルマの本質は基本的に変わっていない。



筆者はランクル70のデビュー当時、SUVやミニバンなど(当時はRV=レクリエーショナル・ビークルと呼ばれていたジャンル)の専門誌の編集部にいたこともあって、このクルマには初期の頃から触れてきた。



その経験を踏まえて新型ランクル70を見ると、変えなくてもいい部分はそのままで、時代や社会に合わせて変えたほうが良い部分をアップデートしたクルマだと感じた。ロングセラーモデルとして絶妙な進化を果たしている。


ドアを開け、フロントピラーにあるグリップを使って高いフロアによじ登り、やはり高めにセットされたシートに座る。



インパネの奥行きが短く、フロントウインドーが立った運転席まわりは幅が狭い。もともとの全幅が5ナンバーと同じ4ナンバー枠内だったので、当然の話だ。この空間は、40年間で最も変わっていないところかもしれない。でも、新車でこの空間の取り方は逆に新鮮だし、窓の下端が低いので開放感にあふれている。


シートは幅がタイトなうえ背もたれが短め。身長170cmで胴長体型の筆者は、縦に長いヘッドレストを引き上げてのドライビングポジションになった。



後席の座面は前席以上に高めだ。1ナンバーだった前回の再販モデルと比べると、3ナンバー化で背もたれは長くなったものの、シートの位置は変わっていないようで、ひざの前の余裕は10cmくらいだった。

デビュー直後のディーゼルとは別物の滑らかさ



70シリーズのエンジンは、デビュー当初は3.4リッター直列4気筒ディーゼルの自然吸気とターボ付きで、その後は3.5リッター5気筒と4.2リッター6気筒のディーゼル自然吸気、再販モデルの4リッターV6ガソリン自然吸気を経て、今回の2.8リッター4気筒ディーゼルターボとなった。



つまり、4気筒ディーゼルターボという点ではデビュー当初に戻ったことになるが、当時の小型トラック用を積んでいた40年前と比べると、別物のようにスムーズでガラガラ音はなく、最新世代のディーゼルSUVと比べても遜色がない。


排気量は歴代最小だが、500Nmの最大トルクは歴代最大。おかげで力不足はなく、ターボは2,000rpmあたりからなだらかに効いてくれるし、昔は4速だったATが6速になったこともあって、思いどおりの加速を手に入れることができた。

インパネ中央下に増設されたスイッチパネルには、雪道など滑りやすい路面のための2速スタートや、逆に力が欲しいときのパワーホールのスイッチもある。車種に見合った電子制御の活用に好感を抱いた。


四角い車体と高めの目線のおかげで、市街地での車両の見切りはしやすい。縦長のドアミラーはリアタイヤまで映し出してくれてありがたいし、ノーズ先端の補助ミラーも車両の前方や側方が確認しやすい。これらはオフロードでも効果を発揮するだろう。


ただし、リサーキュレーティングボール式のステアリングの切れ味はおっとりしているうえに、直進に戻る力がほとんどないので、慣れが必要かもしれない。


もうひとつ気をつけたいのはラジオのアンテナだ。助手席側のドアの前に埋め込まれていて、ラジオを聞きたいなら走り出す前に引き出しておかなければならない。筆者も最初は忘れていて「感度が悪い」と誤解してしまった。この点も40年前と同じだ。


本領を発揮するのはやはりオフロード



乗り心地は、市街地では段差や継ぎ目を正直に伝えがちだが、逆に普通のクルマがガツンときそうな大入力でも最小限に収めてくれる。過酷なオフロードを前提としたサスペンションであることがわかる。



とはいえ、新型は3ナンバーの乗用車登録になったことに対応して、リアのリーフスプリングの枚数を減らしたこともあり、記憶にあるデビュー直後のモデルと比べると別世界と言いたくなるほど快適になっていた。



高速道路では100km/hが1,700rpmくらいに抑えられるためもあり、安楽に巡航できる。フロントがリジットアクスルのサスペンションは、ショックの吸収時にアクスルが首を振りがちだが、新型70シリーズの直進性は不満のないレベルだった。



取材で何度か行ったことがある河原も走ってみた。センターコンソールの奥にある副変速機のレバーを手前に引いて、舗装路で使うH2(ハイレンジ2WD)からH4に切り替える。発進時のスリップがなくなり、確実に前進できるようになる。それでも石が大きめの場所では駆動力が不足するので、今度はL4(ローレンジ4WD)に切り替える。


効果はてきめんで、アクセルを踏んでも歩くより遅いスピードで進める。それだけエンジンのトルクをジワッと路面に伝えることができるわけで、本格的にオフロードを走ろうと思ったらローレンジは必需品であることを再確認した。



しかも舗装路同様、トルクの盛り上がりは穏やかなので走りやすいし、ガソリンエンジン+MTだった再販モデルより扱いやすさは格段に上だ。



新型70シリーズは「らしさ」を取り戻したデザイン、3ナンバー+ATで万人向けになった仕様などが注目されているが、肝はやはりオフロードの走りにあることが確認できた。デビューから40年経ってもまったく色褪せないポテンシャルはさすがである。



森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら(森口将之)

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