試合後に下を向く日が多かった、ヤクルトファンの未来を明るく照らす出来事がありました。それは、9月8日の澤井廉選手の初ホームランです。
澤井選手は、高校時代に通算31本塁打を記録。中京大中京高から中京大に進学後、さらにバッティングで存在感を放ちます。大学でも30本塁打を記録し、各方面から注目を集め、プロ野球12球団から調査書が届いたそうです。
2022年のドラフト会議で上位指名が確実視され、将来のクリーンナップを担う選手としてドラフト3位でヤクルトに入団。村上宗隆選手との"SM砲"の結成が期待されました。
翌年は二軍でホームラン王に輝くなど将来を期待されましたが、秋に右膝をケガして、しばらくリハビリに専念します。実戦に復帰したのは今年の5月。ライバルたちに後れを取ってしまったものの、8月にようやく一軍に復帰し、先日に待望の初ホームラン。まだまだ若い選手ですが、翌日のスポーツ新聞には澤井選手の初ホームランを報じる記事がいくつも掲載されたことからも、ファンの期待の大きさがわかります。
澤井選手の注目すべき点は、2年目らしからぬ大物ぶりでしょう。澤井選手は初ホームランを放った試合後のコメントでも「村上選手のように、ホームランでチームを勝たせられるような選手になりたい」と、その大器ぶりを見せつけました。
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また、私をはじめとした澤井選手フリークが注目しているのが「バットフリップ」です。バットフリップとは、ホームランを打った後に、その勢いのままバットを放り投げる行為を指します。近年では、大谷翔平選手がホームランを打った後に、宙に放り投げたバットがクルクルと回る軌道が美しいと話題になったことも。
メジャーリーグでは、バットフリップは挑発行為と取られることもあり、過度な行為は禁物とされています。ただ、澤井選手のそれは、まさにバットがついつい回ってしまった、といった"つつましさ"さえも感じる芸術的で美しい回転なのです。
澤井選手は大物になるに違いない、と感じるのは、彼の真面目さゆえ。趣味が「筋トレ」で、大学ではスポーツ科学部で筋肉や運動のメカニズムを学びました。大学ではウエイトトレーニングや食事へ意識を高め、体重を20キロも増量。下半身がパンパンでジーンズが履けなくなったとか。
「【軸】【重心】【脱力】のどれかが崩れると、自分の場合は打球が飛ばない」と自身のバッティングを冷静に分析するなど、常に自分へ矢印が向いているんですね。その姿勢は「まさにプロだな」と思いました。ちなみに、澤井選手の座右の銘は「やるか、めっちゃやるか」です。
今年のヤクルトは厳しい順位となっていますから、この先の楽しみは個人タイトルや若手の活躍に集約されていきます。ホームラン王は村上選手、最多安打は長岡秀樹選手に期待です。そして、澤井選手をはじめとした未来の主力たちが、1試合でも多く活躍することを祈るばかり。
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ちなみに、やはり熱心にヤクルトを応援している私の母は、ヤクルトが勝利した夜はアイスクリームを食べる、という"儀式"を欠かしません。最近では、お気に入りの奥川恭伸投手が勝利した試合と澤井選手がホームランを打った試合は、なんと2つ食べていいことにしたとか!
傍から見たら消化試合でも、若手にとってはチャンスとも言えます。優勝争いから離れてしまったとしても、いつまでもシーズンを楽しむ姿勢は、両親から学んだのかもしれません。
まだまだ残り試合から目が離せそうにありません。それではまた来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
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