「青木宣親選手の思い出」6年4組3番、山本萩子【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第132回

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2024年09月20日 09:10  週プレNEWS

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引退する青木宣親について語った山本キャスター

9月18日の広島戦で、今シーズン限りでの現役引退を表明しているヤクルト・青木宣親選手(42歳)が、5回に代打で出場してセンター前にクリーンヒット。その後、2塁に進むとサンタナ選手のタイムリーで激走して同点のホームを踏み、ファンからは大きな拍手が送られました。

身長175cmと野球選手としては大きくありませんが、"安打製造機"の異名を取り、メジャーでも活躍。「ここぞ」というときだけでなく、常にヒットを打っているイメージがありました。

走力や守備の能力も高く、MLBで言うところの「ミート力」「長打力」「走力」「守備力」「送球力」の5つの能力に優れた"5ツールプレーヤー"という評価は、まさに青木選手のためにあるような言葉だと思いました。

東京六大学リーグで活躍し、「走攻守そろったユーティリティプレーヤー」という触れ込みで、2003年にドラフト4位で入団。ただ、当時は早稲田大の同級生だった鳥谷敬選手のほうが目立っていて、飛び抜けて注目されていた選手ではありませんでした。

スカウトにとってドラフトは、4巡目以降が腕の見せどころだと言います。チーム事情によりますが、「もしかしたら大化けするんじゃないか」と思える選手を思い切って指名しやすいからです。

初年度の青木選手は入団会見でも感じたように、ちょっぴりやんちゃでイケイケな印象でした。若さもあったかもしれませんが、「何かやってやる」というギラギラとした闘志を全身に漲らせていました。「この選手は何かをやってくれそうだ」と期待感を抱かせてくれたものです。世代もありますが、私の周りにはいつも、青木選手に憧れる男子がたくさんいたのを記憶しています。

2年目には、イチローさん以来となるシーズン200安打を達成。プロ野球新記録のシーズン169単打を記録し、最終的に202安打を放って最多安打のタイトルを獲得し、打率.344でセ・リーグ首位打者に輝きます。新人王にも選出され、スカウトの狙いが正しかったことを証明しました。

その後、2011年までに3度の首位打者を獲得し、名実ともに日本を代表する打者となった青木選手が、次に目指しのたのはMLBでした。

2012年にプレーしたミルウォーキー・ブルワーズを皮切りに合計7チームを渡り歩き、日本でも見せたシュアなバッティングと堅実な守備で活躍。6年間で7球団に所属したのは、日本人最多タイだそうです。2015年シーズンで試合中に頭部死球を受けて以降は、プレーするのがしんどそうな時期もありましたが......。

2018年には、MLB市場の停滞の影響もあって日本球界復帰が決まります。本人としては不本意だったかもしれませんが、日本に帰ってきたときの会見での「この球団を愛している」という言葉にファンは興奮しました。

復帰した後の目標は日本一。MLB帰りの青木選手は、久しぶりの日本球界でも躍動しましたが、今も私の脳裏に鮮明に残っているのは、目の前で見たランニングホームランです。

メットライフドームで行なわれた西武戦。打球はセンターに上がり、その瞬間はファンも、青木さん本人も「凡打だ」と肩を落としたはず。それが、西武の選手が打球を見失ったことで、まさかの世にも珍しい先頭打者ランニングホームランになりました。青木選手がホームインする瞬間が大好きなので、それを久々に見られたのも嬉しかったなぁ。

日本に帰ってきてからは、自分のことだけでなく、後輩の選手たちにも目をかけているのを感じました。自主トレを積極的に行ない、後輩たちにトレーニングの重要性を伝え、チーム力の底上げに寄与しました。

青木選手の薫陶を受けた選手たちの意識が劇的に変化したのは、ファンの目にもわかるほどです。村上宗隆選手の三冠王、山田哲人選手が発揮するキャプテンシーなどは、"青木イズム"を継承した影響も大きいでしょう。

2021年にはリーグ優勝を果たしますが、その優勝が決まる直前にフライングでベンチを飛び出してしまいました(笑)。その後、日本一にもなって先輩の石川雅規投手に肩を抱かれながら泣いていた青木選手。「このふたりがいるうちに日本一になれてよかったよね」と、母とふたり、泣きながら手を取り合ったのを覚えてます。

野球選手に引退はつきものですが、青木選手が引退を表明した日は何も手につきませんでした。私だけでなく、ヤクルトファンにとってそれほど大きな存在でした。

選手が引退する際、アメリカでは「おめでとう」と言います。「あなたの新しい人生の始まりに祝福を」という意味があるそうです。素敵な慣習だと思いますが......それでも言わせてください。青木選手、寂しいです。何度もバッティングセンターで真似をしたあのフォームが見れなくなること、チームを鼓舞する姿が見れなくなることが寂しいです。

まだシーズンは残っていますが、本当にお疲れさまでした。たくさんの思い出をありがとうございました。

いつかまた指導者としてチームに帰ってくるその日まで、ゆっくり体を休めてください。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

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