カタールの競馬組織が勢い加速 BCクラシック前哨戦Vでさらに存在感

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2024年10月02日 21:00  netkeiba

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▲合田直弘が海外競馬の「今」を詳しく解説!(c)netkeiba
【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】

◆「ワスナン・レーシング」の正体

 カタールの首長シェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニの競馬組織「ワスナン・レーシング」の勢いが加速している。

 9月28日(土曜日)にチャーチルダウンズ競馬場で、で、11月2日にデルマー競馬場で行われるG1・BCクラシック(d10F)へ向けた、ケンタッキー州における最終プレップとなるG2ルーカスクラシック(d9F)が行われ、ワスナン・レーシングが所有するヒットショー(牡4、父キャンディライド)が勝利を収めた。

 G2ブラックアイドスーザンS(d9F)など2重賞を制したアクトレスの2番仔となるヒットショーは、ゲイリーとメアリーのウェスト夫妻による生産馬である。生産者の所有馬として、B.コックス厩舎から2歳秋にデビュー。3歳初戦のG3ウィザーズS(d9F)を制し重賞初制覇後、G1ケンタッキーダービー(d10F)5着、G1ベルモントS(d12F)4着などの成績を残した馬だ。

 4歳3戦目となった、8月4日にマウンテニアパーク競馬場で行われたG3ウエストバージニアガバナーズS(d8.5F)を制し2度目の重賞制覇を果たした後に、ワスナン・レーシングが購買。G2ルーカスクラシックは、馬主が替わって初めてのレースだった。レース後にコックス師は、次走は未定とコメントしたが、G1・BCクラシック参戦の可能性が残されている。

 同じく9月28日(土曜日)に、サンタアニタ競馬場で行われた、G1・BCクラシックへ向けた地元の前哨戦となるG1カリフォルニアクラウンS(d9F)を制したのも、ワスナン・レーシングが所有するサブサナドール(牡5、父フォーティファイ)だった。

 サブサナドールは、アルゼンチン産馬。祖国でG1エストレラスジュヴェナイル大賞(d1600m)など3つのG1を含む6重賞を制した後、23年秋に北米のJ.サドラー厩舎に移籍。北米における2戦目となった、3月3日のG1サンタアニタH(d10F)でアタマ差2着になった後に、ワスナン・レーシングが購買。同時に、R.マンデラ厩舎に転厩している。転厩2戦目となった、8月17日にモンマスパーク競馬場で行われたG3フィリィップ・H・イズリンS(d8.5F)を制し、北米重賞初制覇を飾った後、G1カリフォルニアクラウンSも制して北米G1初制覇を果たした。同馬の次走について、管理するマンデラ師は「おそらくBCクラシックになるだろう」とコメントしている。

「ワスナン」の名前が、競馬サークル内で盛んに取り沙汰されるようになったのは、昨年の春のことだった。有力な現役馬の何頭かが、直接交渉によって「ワスナン」に購買されたことが、業界内で話題となったのである。だが当時は、「ワスナン」の背後にいるのがいったい誰であるか、明らかになっておらず、旺盛な購買意欲を見せる新興勢力の正体が誰であるのか、ファンもおおいに注目することになった。

「ワスナン」が、カタールの首長であるシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニの組織であることが、広く認知されたのは、昨年のロイヤルアスコット開催期間中だった。開催2日目のG2クイーンズヴァーズ(芝14F34y)を、ワスナンが所有するグレゴリーが優勝。さらに開催3日目のG1英ゴールドC(芝19F210y)も、ワスナンのクラージュモナミが制覇。これらの成功を受ける形で、ワスナンから、組織の所有者がカタールの首長であるとの公式発表がなされたのである。

 カタールと言えば、シェイク・ジョアンの「アルシャカブ・レーシング」、シェイク・ファハドの「カタール・レーシング」など、既に何人かの王族メンバーが、馬主や生産者として活躍していたが、ついに首長が競馬への本格的な参画を果たしたわけだ。

 今週末にフランスのパリロンシャンで開催されるアーク・ウィークエンドは、スポンサーがカタールだ。当然のことながら、ここにも「ワスナン・レーシング」は攻勢をかけてくる。

 まず、5日(土曜日)に行われるG2ダニエルウィルデンシュタイン賞(芝8F)に出走を予定しているのが、メイクミーキング(セン4、父ダークエンジェル)だ。2歳時から重賞戦線に顔を出していたが、8月25日にドーヴィル競馬場で行われたG3クインシー賞(芝8F)を制し、待望の重賞初制覇を果たしての参戦となる。

 6日(日曜日)のG1アベイドロンシャン賞(芝5F)に出走するのが、ローグライトニング(セン4、父コーディアック)だ。前年の同競走では5着だったこの馬。前走は、9月15日にパリロンシャン競馬場で行われたG3プティクヴェール賞(芝5F)が3着だった。

 そして、同じく6日(日曜日)に行われるG1オペラ賞(芝10F)に出走するのが、フォールンエンジェル(牝3、父トゥーダーンホット)だ。G1愛1000ギニー(芝8F)を含むG1・2勝馬で、9月14日にレパーズタウン競馬場で行われたG1メイトロンS(芝8F)は2着だった。G1オペラ賞は同馬にとって、初めての2000m戦となる。

 アーク・ウィークエンドで、ワスナン・レーシングの水色と茶色の勝負服が躍動するか。見どころのひとつと言えそうだ。

(文=合田直弘)

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