ロジクール初の分割式“左手デバイス"が登場 プロ絵師による「MX Creative Console」レビュー

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2024年10月10日 11:11  ITmedia PC USER

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CLIP STUDIO PAINTを操作するためのマッピングを試しています

 こんにちは! refeiaです。今日は最新の“左手デバイス”を見ていきましょう。ロジクールから発表された「MX Creative Console」です。


【その他の画像】


 ディスプレイ付きのキーパッドとダイヤルデバイスの2台がセットになった製品です。このタイプのデバイスは基本的にダイヤルとキーパッドが一体になったものが多いので、分割されているのは新しい試みだと思います。発売日は10月24日で、価格は3万2780円(税込み)です。


 イラスト分野では主にディスプレイがない左手デバイスが注目されますし、自分も基本的にはそちらに気を配ってきました。よってディスプレイ付きデバイスをじっくり触るのは初めてです。


 そもそもディスプレイの有無は関係なく左手デバイスと呼ばれるものですが、それぞれ何に適しているのかも含めてチェックできるといいなと思っています。それでは早速見ていきましょう。


●MXブランドの幅を広げる製品


  まずは本機が冠している、「MXブランド」についてからです。名称にMXが入っている機種はMasterシリーズと呼ばれています。制作や創作、高度な知的作業などに対応できる品質と柔軟性を求めて設計されています。これまでも主にマウスやキーボードなどが展開されてきましたが、本機の導入によって、その幅が広がることになります。


 ディスプレイ付きボタンを採用したデバイスには、既に堅固なエコシステムを築いているライバルが存在します。Elgatoの「Stream Deck」シリーズと、Loupedeckの「Loupedeck」シリーズです。


 特にLoupedeckはダイヤルを採用した機種を主に展開していて、価格面でも仕様面でも近いものがありますが、実は2023年7月にLogitech(ロジクールのスイス本社)はLoupedeckを買収しています。


●外観と接続仕様をチェック!


 それでは外観と機能を見ていきましょう。まずはキーパッド「MX Creative Keypad」から。このデバイスには9個のディスプレイ付きキーと、2つのページ切り替えボタンがあります。ページはプロファイルごとに15枚まで作成できます。


 デバイスはUSBでPCと接続して使います。本体裏にUSB Type-Cコネクターがあり、ケーブルも商品に付属します。


 斜め置きスタンドも付属します。スタンドの後ろ端にケーブルクリップがあるので、本体の上にケーブルが飛び出さないよう設置することができます。


 次にワイヤレスのダイヤルパッド「MX Creative Dialpad」です。2つのダイヤルと4つのキーがあります。


 ダイヤルは、その見た目からしてマウスホイール的な動作を想像しますが、クリック感は無く、押し込みスイッチもありません。その代わりにカメラのピントリングのような一定で滑らかな操作感になっていて、素早くも、精密にも、意図した通りに動かせる上質さがあります。また、接続はBluetoothもしくは独自のLogi Boltです。3つのPCとペアリングして、切り替えて使用できます。


 使えるのは合計で2ダイヤル+13ボタンといったところですね。ただし、ダイヤルパッドはキーパッドのページ切り替えに連動してマッピングを切り替えることはできません。


●ドライバアプリの機能をチェック


 デバイスとしては見た目も筆者の好みで、質感も構成も良いので期待が膨らみますが、左手デバイスの実際の使い勝手はソフトウェアの出来にかかっています。記事執筆時点で試用できるのはβ版のソフトウェアですが、そちらも見ていきましょう。


 基本的な動作は他の左手デバイス同様、利用中のアプリに応じてマッピングを自動で切り替えて、アプリごとに効率的に操作できるようになるという動作です。また、Adobeのアプリとの深い連携をアピールしており、例えばLightroom Classicではアプリの状態に応じてマッピングが切り替わっていきます。


 そして、キーパッドで選択した調節項目をダイヤルで直接変化させることもできます。キーを押してダイヤルを回す、という直感的な操作です。


 特にLightroom Classicでは、マウスやトラックパッドで画面上のツマミを追い回す操作感との違いは大きく、使い込んでみたい魅力があります。一方でPhotoshopは、(記事執筆時点では)ダイヤルを回したときに操作履歴が大量のエントリで埋まってしまい、現実的にアンドゥをすることができなくなります。このあたりはソフトウェアの熟成に期待したいところです。


 マッピングのカスタマイズ画面を見ると、対応アプリではさまざまな機能を直接呼び出したり、パラメータを直接操作できたりすることが分かります。また、対応アプリでは選べる項目は本当に大量にあるので、マッピングを一から作るよりは、プリセットを自分に合わせて変更していく使い方が良いと思います。


●よく工夫されたリングメニュー


 プリセットでは、基本的にダイヤルの右下キーにはリングメニュー「Actions Ring」の呼び出しが割り当てられています。これもカスタマイズ可能で、キーと同様の機能を割り当てられます。


 また、ダイヤルで調整できる項目をこのリングメニューに割り当てると、クリックしたままマウスを動かすことで直接調節することができます。


●対応アプリの拡張が課題


 このように、本機の魅力のキモはアプリとの深い連携にあります。ただし、執筆時点で対応アプリは少なく、発売以降はAdobeの制作ツールや配信/ビデオ会議ツールなどには対応するとアピールされてはいますが、それ以外の幅広いアプリに、どのようなペースで対応していくのかは分かりません。


 また、「マーケットプレイス」という機能もあり、Logicool自身が制作したプラグイン以外に、第三者が制作したプラグインやプリセット、ディプレイ用のアイコンセットなどを入手できる機能も用意されています。ユーザーが増えてエコシステムが広がるほど、より広い用途で便利になる機会も増えていくことでしょう。


 もちろん非対応のアプリでも、キーボードショートカットやキーマクロを割り当てていくスタイルも可能です。ディスプレイがあるおかげで割り当てを忘れないで済む利点もあり、キー自体も押した感触がシッカリしているので操作感は悪くありません。


●使ってわかった利点と相性


 実際に使っていると、やはり配置の自由度が本機の強みだと感じました。例えば、次の写真ように配置すれば、右手で調節機能を呼び出すと同時に左手でダイヤルに手を添えて、タイムラグなく操作できます。


 この配置がベストかどうかはともかく、好みや自分の操作スタイルに柔軟に対応できるのも本機の魅力でしょう。また、ディスプレイ付きのキーは「押せるチートシート」のようです。複数のアプリを使ったり、毎日長時間使うわけでもないアプリを使う機会が多い用途では、主だった機能を時間をかけずに操作したり、覚える時間を削減するのに役立ちます。


 一方で、自分にとってのイラスト制作のような、1つのアプリで長時間描き続ける、使うキーの偏りが大きいような用途に限っては、利点はあまり感じられませんでした。どちらかというと通常のキーボードやTourBoxのような、常に手を添えて使うように作られたデバイスで最適化した方が良いと思います。


 また、イラスト用途では、ペンタブレットを買えばショートカットやマクロ機能も手に入り、ダイヤル的な操作は装飾キーやペンを使ったショートカットの方が優れている場合が多いという事情もあります。


●まとめ


 それではまとめていきましょう。MX Creative Consoleは、ディスプレイ付き左手デバイスとしては後発製品であるものの、ダイヤルデバイスとキーデバイスを分割することによって、圧迫感のないデザインや、配置の自由度から来る使い勝手などの美点を獲得しました。


 現状ではAdobeのツールや配信ツール、ビデオ会議ツールなどで主に公式プラグインが提供されており、それらではアプリとの深い連携によって便利に利用することができます。複数のアプリを駆使して制作していくクリエイターや、日々の業務の質や効率を改善したい人、手元が忙しくなりがちなワンオペ配信などで特に利点が発揮されるでしょう。


 一方で、イラスト製作のような、1つのアプリをひたすら長時間利用したり、頻繁に操作するキーが極端に偏っているような用途では、必ずしも相性が良いとは言い難いです。その場合は常に手を添えて使うタイプの左手デバイスを優先して検討したり、他に使いたい用途も加味しながら本機を検討するとよいでしょう。


 また、本機が真価を発揮するためには、アプリとの高度な連携やカスタマイズの起点となるプリセットが必要ですが、現状ではそれほど多彩なアプリに対応しているわけではありません。対応していなくてもキーボードショートカットやキーマクロを割り当てて使うことはできますが、お目当てのアプリがある場合は、対応しているか確認しながら検討してもよいでしょう。


 ところで、こういう意識高い系デバイスでは忘れがちですが、ワイヤレスでコンパクトなダイヤルパッドは、リラックスしてコンテンツ消費を楽しむのにも便利です。


 YouTubeやアニメを見るときに椅子にもたれてリモコン代わりにしたり、ふんぞりかえってマンガを読みながらページめくりに使ったり──「生産性デバイスでそういうことするの!?」と言われそうですが、ガジェットを買ったらたくさん使うのが一番です。臆せず使って使用頻度を上げていきましょう。



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