ディズニー『塔の上のラプンツェル』地上波の視聴率は? 実は「残酷な原作」を大幅改良していた

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2024年10月12日 00:01  日刊サイゾー

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ラプンツェルを演じる中川翔子

 10月11日午後9時より日本テレビ系『金曜ロードショー』枠で放送されるディズニー映画『塔の上のラプンツェル』。地上波放送は6回目で、最高視聴率は同枠で2020年5月に放送された4回目で、平均世帯14.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、最低はやはり同枠で22年3月に放送された5回目の8.2%だった。

 約2年半ぶりのテレビ放送とあって放送前から心待ちにしているファンも多いようだが、原作のグリム童話のストーリーを知っている人はどれだけいるだろうか。そこで、映画をより楽しむための予備知識として、原作との大きな違いを紹介する。

※以下、2022年3月25日に公開した映画ライター・しばりやトーマス氏による記事の再掲。

『塔の上のラプンツェル』は貧しい農夫の子供だった!?実は残酷な原作を大幅改良

 日本テレビ系『金曜ロードショー』で放送される映画を楽しむための基礎知識、今週放送されるのは2010年公開のディズニーアニメ『塔の上のラプンツェル』だ。

 ディズニー・アニメーション・スタジオ制作の作品といえば今では粒ぞろいの傑作群として知られているが、1990年代半ばから2000年代の低迷期ときたらひどいもので、『ポカホンタス』(95)『ヘラクレス』(97)『アトランティス 失われた帝国』(01)『トレジャー・プラネット』(02)……いずれもスッカスカの内容か、興行的に大失敗したとか目も当てられないやつだらけ。95年には元ディズニーの社員だったジョン・ラセターのピクサーが、『トイ・ストーリー』で世界的な大ヒットを飛ばし「ディズニーアニメは時代遅れ」なんて言われてた時もあったぐらい。

 しかし本作が『ライオン・キング』(94)以来のヒットを記録、次いで12年の『シュガー・ラッシュ』、13年の『アナと雪の女王』と評価も興行も大成功の作品を連発し、低迷期を脱することに成功。『塔の上のラプンツェル』は10年代以降のディズニーアニメにとっての転換点となった作品である。

 製作総指揮のグレン・キーンはディズニーで一アニメーターとして活躍し、先述した低迷期にも中心メンバーとして活動していた。それゆえなんとかディズニーアニメの黄金時代を取り戻したいと考えたのだろう、初めて企画の立ち上げから関わって完成させた力作だ。

 原作はグリム童話の『髪長姫』。残酷な内容で知られるグリム童話なので、ディズニー作品のメインターゲットであるお子様たちに受け入れられるよう、内容と登場人物は大幅に変えられている。

 ある王国の王妃は出産を迎えた時、重い病にかかってしまう。王はどんな病も直す「金色の花」を探すよう命じ、兵士たちはその花を抜き取ってくる。花から取られた水を飲んだ王妃は回復し元気な女の子を生んだ。その娘はラプンツェルと名付けられる。

 花の力を独り占めし、若さを何百年も保っていた老婆ゴーテルは、花を取り返そうと城に忍び込む。ところが花の力はラプンツェルの金色の髪に宿っており、髪を切ると失われてしまう。ゴーテルはラプンツェルを攫い、森の奥深くにある塔の中に幽閉してしまう。王国では攫われたラプンツェルがいつか帰ってくることを祈り、毎年誕生日に灯りを灯したランタンを空に飛ばすのだった。

 18年後、成長したラプンツェルは塔に閉じ込められたままだったが、毎年自分の誕生日になると遠くの空に浮かぶ灯りが何なのか知りたがる。だが、自分を母親だと信じ込ませているゴーテルは、外の世界は危険だらけだと塔の外へ出ることを許さなかった。

 ある日、王妃のティアラを盗んだ泥棒のフリン・ライダーは偶然見つけた塔に逃げ込みラプンツェルに出会い、ティアラを塔のどこかに隠されてしまう。

 空に浮かぶ灯りの見える場所まで連れて行ってくれたらティアラを返す、という条件をライダーに飲ませたラプンツェルは初めて塔の外の世界に足を踏み入れる。

 原作では、ラプンツェルは貧しい農夫の子供で、ライダーにあたる人物は王子様という設定だが、本作では立場を逆転させている。これはディズニーアニメの前作『プリンセスと魔法のキス』(2009)が興行的に伸び悩み、

「プリンセスというタイトルだと、男児へのアピールが弱い」

ということで、プリンセスであるラプンツェルよりも男性ヒーローであるライダーを前面に押し出すことにしたのだが、原作のように白馬に乗った王子様が助けにくるなんて、今時じゃない! と思ったかもしれない。ちなみにライダーは、本当に白馬(暴れ馬だけど)に乗って現れるのだ。

 ラプンツェルは長く伸びた髪を利用して昇降機のように使って人を上り下りさせたり、髪を木の枝などに引っ掛けて空中を移動したりするワイヤーアクションを披露する。スーパーファミコンのゲームで『ミッキーのマジカルアドベンチャー』(92)というのがあって、ミッキーマウスがワイヤーを使ってラプンツェルみたいなアクションを使う場面があったけど、それを彷彿とさせるなあ。ひょっとしてゲームのオマージュだったのか(絶対違う)。

 ファミリー映画なので原作の残酷な部分は極力抑えられたが、クライマックスにはえげつない描写が残っていて、単にお子様向けでは終わらせないグレン・キーンのクリエイター魂を感じたね。

 日本のアニメファンにはディズニーを無視しているようなオタクもいるけど、「塔に囚われたプリンセスを泥棒が救い出す」というストーリーって『ルパン三世 カリオストロの城』にも似ているから、オタクも差別しないで観てほしいな!

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