斎藤前知事の失職に学ぶ「令和のリーダー」が守るべき“たった一つ”のこと

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2024年10月23日 21:51  All About

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パワハラ疑惑やおねだり疑惑などが指摘されている斎藤元彦前兵庫県知事。疑惑の真偽のほどは定かではないものの、リーダーとしての資質が疑われ失職に至りました。令和の今、リーダーとはいかにあるべきか、斎藤前知事の件を引き合いに考えてみましょう。
パワハラ疑惑、おねだり疑惑に端を発し、いよいよ失職、出直し選挙となった斎藤元彦前兵庫県知事は、ある意味で今年最も注目を集めた組織リーダーかもしれません。

トップやリーダーといわれる人たちはいかにあるべきなのか、時代の変遷と共に変わりつつあるその「あるべき」について、斎藤前知事の件を引き合いに考えてみましょう。

“昭和のリーダー”に強く求められていたもの

疑惑の真偽のほどは定かではないものの、斎藤前知事のパワハラ、半強制的なおねだり問題に関しては兵庫県議会の百条委員会において具体的な言動が複数提示されており、度合いはともかくとして、相手にそう感じさせるような行為があったことは間違いないのではと思われます。

指摘されたパワハラ、おねだり共に、昭和の時代なら黙認され通り過ぎていたであろうことですが、令和の今にあってはモラル意識の領域でコンプライアンスに抵触する可能性ありとして、リーダーの資質が疑われ失職に至ったわけなのです。

斎藤前知事は1977年生まれの46歳です。いわゆるポスト団塊ジュニアに属する人で、親はどっぷり昭和世代。昭和の教師からの教育を受けて育ち、社会人としても昭和の上司に仕えた世代です。

バブル経済崩壊後の日本経済が沈んでいた2000年前後に社会に出た世代なのですが、それはちょうどグローバル・スタンダード、コンプライアンスといった言葉がささやかれ始めた時期でもあります。

しかしながら彼が属していた官僚の世界は、前例踏襲を旨とする旧態依然とした昭和な組織文化が主流を占めていたと考えられ、今回の行動の根源は前知事が社会人として過ごした環境が、大きく影響しているのではないかと思われます。

前知事の先人として同時代を過ごした筆者の記憶をたどれば、昭和のリーダーはとにもかくにも強いリーダーシップこそが必要かつ絶対的な要件であるように思われ、多少の暴走や高圧的な物言いも組織統率のためには許されるという風潮があったと思います。

「トップは“天皇”」「上司の命令は絶対」という組織運営も、決して珍しくありませんでした。

百条委員会が実施した県職員約9700人に対するアンケートに書かれていた、「俺は知事だぞ」「知事の言うことが聞けないのか」といった前知事の発言が本当にあったとすれば、前知事の言動は時代錯誤ともいえる“昭和のリーダー像そのもの”であったということになるでしょう。

「言いたいことが言えない」状況

事の発端となった告発文書が出されたり、先のアンケートで数々の乱暴な言動が明らかになったりしたのは、強すぎる知事に対しては直接「言いたいことが言えない」という状況であったことがうかがい知れます。

「言いたいことが言えない」状況、これは最近の組織統治の問題点として「心理的安全性の欠如」と呼ばれています。

すなわち、「心理的に安全な状態」とは、何を発言しても頭ごなしに否定されたり、つぶされたりせず、自身に不利益が降りかかってくる心配がない、安心して思ったことを発言できる状況をいうのです。

「心理的安全性の欠如」の発生の大きな原因の一つは、リーダーの強すぎる言動であり、最悪のケースでは組織ぐるみの不祥事にもつながります。一例を挙げるなら、昨年大きな話題となった中古車販売会社「ビッグモーター」の損害保険不正請求などの不祥事です。

同族経営トップの有無を言わさぬ強権経営が、明らかな原因となっていました。トップの指示・命令に疑問を感じてもそれに反論することが降格・減俸・左遷など自己の不利益につながると察知し、多くの社員が無言のうちにこれに従ったことで不祥事が広がったのでした。

「心理的安全性の欠如」は、強いリーダーが不在の組織でも発生します。

トヨタグループをはじめ続発する自動車業界の認証不正や、神戸製鋼、三菱電機などで起きた検査不正の類いは皆、強権とは程遠いサラリーマン・リーダーの組織でありながら、指示を出している本社や親会社に物が言えず不正に走ったものです。

昭和の時代に形作られた、「親会社>子会社」「本社>現場」というコミュニケーション不足な無言の旧日本的ヒエラルキーが、「言いたいことが言えない=心理的安全性が欠如」した状況を作り出したのです。

「心理的安全性」を向上させるたった一つのポイント

このように「心理的安全性の欠如」は、組織のトップが強いリーダーであろうとなかろうと起こりうるわけですが、共通していえることはリーダーのコミュニケーションの取り方に問題があるということです。

強いリーダーの場合には一方的な命令コミュニケーションが圧となり、そうでないリーダーの場合にはコミュニケーションの欠如が無言の圧を生んで、共に「言いたいことが言えない」という組織風土をつくり上げてしまうのです。

しかし、働き方改革の定着で「働きがいだけ」でなく「働きやすさ」の実現が求められる令和のリーダーにとっては、「心理的安全性の向上」は最も重要な施策であるといえるのです。

では「心理的安全性」を向上させるために、リーダーはどうしたらいいのでしょうか。この問題のポイントは、たった一つです。リーダー自らが積極的に「聞くコミュニケーション」を心掛けることに尽きるのです。

「聞くコミュニケーション」とは、自ら話す、指示することばかりに注力するのでなく、まず相手の意見を聞く、相手の提案を聞く、相手の不満を聞くといった姿勢を日頃から大切にすることです。これが定着することで、「誰もが言いたいことが言える」組織づくりは実現できるようになるのです。

これから出直し選挙に臨むという斎藤前知事ですが、「誰もが言いたいことが言える県政づくり」が選挙の争点に浮かび上がるのではないでしょうか。

<参考>
兵庫県議会 文書問題調査特別委員会

大関 暁夫プロフィール

経営コンサルタント。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントや企業アナリストとして、多くのメディアで執筆中。
(文:大関 暁夫(組織マネジメントガイド))

このニュースに関するつぶやき

  • 斎藤前知事の件は週刊現代の記事にもあった通り、「早急な改革に対する反対勢力がデマや印象操作を拡散し、腐敗し切った県議会やバックの政党も保身と利権を優先してその反対勢力側に付いた」という状況であろう。
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