“托卵”をテーマにした松本若菜主演のドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系、木曜よる10時〜)のジェットコースター展開から目が離せません。衝撃の第1・2話を、ストーリーを振り返りながら本音レビューしたいと思います。
※以下、ドラマ第2話までのネタバレを含みます。
◆夫に性行為を強いられた直後、夫以外の男性に抱かれた妻
「子どもが欲しい」と家庭に入った主人公・美羽(松本若菜)が、夫・宏樹(田中圭)からのモラハラに苦しんでいるところから第1話がはじまりました。
心を殺し、かごの中の鳥のような毎日を送るなかで、美羽はかつて想いを寄せていた幼なじみの冬月稜(深澤辰哉/Snow Man)と再会。
心を取り戻していくも突如、酔った夫から性行為を強いられてしまいます。明け方に茫然と歩く美羽は、その日にアフリカへと旅立つ稜と偶然会い、結ばれました。そして「一時帰国するから。迎えにいくから待ってて」という稜の言葉を支えにする美羽。
◆いや生きてるだろ! 突っ込まずにはいられない展開
第1話の終盤までに、まさかのダブル性行為。しかも24時間以内に?! これは“托卵”というより、ただの不倫では?……と突っ込んでいたら、ラストで美羽の妊娠が判明(ここは予想通り)。からの、稜が死亡したニュースが流れて……いやいや! 絶対生きてるだろう! と突っ込んだ視聴者は多いでしょう。
更にラストで宏樹にわざわざ「あなたの子よ」なんて言うし。違う人の子の可能性匂わせすぎじゃないか? 美羽よ。
◆松本若菜の“悪女”が、思っていたのとだいぶ違った
公式HPのイントロには「“托卵”という禁断の決断を下す悪女の物語」とあります。しかし第1話を見て松本演じる美羽を“悪女”と断ずるには、少し違和感があるように思えました。
夫からの扱いに葛藤し、かつて恋をした稜と結ばれて彼の子を宿す美羽(出生前親子鑑定により確定)。入院中の母親(多岐川裕美)を抱えて、ひとりで子どもを育てるのは無理と思って“托卵”を選択する彼女に、共感はできなくとも、彼女の業は理解できるから。
前クールのドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)で、真っ直ぐでキュートな主人公を演じた松本。今回は“悪女”というより、葛藤しながらも幸せのために誤った選択を重ねてしまう女性を巧みに演じています。
◆人物の心理描写は丁寧なのに、展開はジェットコースター
そして第2話では、更にスピーディな展開に驚かされました。序盤は稜の子を宿した美羽が離婚を迷う様子や、宏樹のモラハラの背景(会社で上司と部下の板挟みに苦しみ、美羽にツラく当たってしまっていた)や葛藤する様子が、丁寧に描写されていました。
しかし30分を過ぎたころに急展開。稜に想いを寄せていた同僚・莉紗(さとうほなみ)により、稜の生存が伏せられていたことが分かります。いや、生きているとは予想していたけど、発覚はやっ! しかも、ほなみが隠していたのか! えぐっ。
そんなツッコミも束の間。美羽は母とのやりとり、そして「お金は出すけど、子育てには参加しない」と宣言した宏樹との会話を経て、“托卵”を決断。用意していた離婚届を、出生前親子鑑定書と一緒に燃やしたと思ったら、次のシーンでは出産。えっもう?! 妊娠期ほぼ描かないんだ……。
最後は「子育てに参加しない」と断言していた宏樹が、赤ちゃん抱っこして、号泣しているし。
◆人間の振れ幅を表現する俳優陣はさすが!
第2話まで観て、登場人物の一面だけを強調しない、多面的な描き方は秀逸だと感じました。前述した松本はもちろんですが、特に宏樹を演じる田中圭はさすが! 第1話のはじめは「なんだこのモラハラ野郎!」と思わせる嫌味たっぷりな言動でしたが、びしょ濡れで帰宅した妻にタオルを用意して拭くシーンをはじめ巧みな表情の変化で、単なる嫌な奴ではない“含み”をもたせています。
第2話ではモラハラ行動に至ったと思われる経緯や葛藤、最後の号泣シーンまでを表情豊かに演じ、観る者を惹きつけました。
◆第3話の予告にも戦慄! ますます目が離せない
そんな宏樹とは対照的に描かれ、美羽の癒し的存在である稜。第2話ではアフリカで活動中に「俺、日本に大切な人がいる。その人と一緒になる」と豪語するシーンがありました。学生時代から想い合っていたとはいえ、一度結ばれただけでそこまで言えるのか?! と違和感を覚えていたら、第3話予告でちょっと怖くなりました。
予告には、帰国した稜の姿と「何度でも会いに行く」「待っててくれてると思うんだ」の台詞が。死んでいなかったとはいえ、一夜を共にしただけで突然連絡がとれなくなった自分を、美羽が待っていると思えるものでしょうか? 結婚している美羽への執着が垣間見えて、ぞくっとしました。
稜には、他にどんな一面があるのか。そして稜の同僚・莉紗や、宏樹が通う喫茶店のマスター(北村一輝)、美羽の友人・真琴(恒松祐里)は、果たしてどんな人物なのか。徐々に登場人物たちの本性があぶり出されていくであろう、今後の展開がますます楽しみです。
<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>
【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201