「興奮している気持ちですね。今までは悔しい思いの中、見る側だったので、楽しみにしています」
初めてのワールドシリーズを前に、そう意気込みを語っていた大谷翔平が見事ワールドシリーズを勝ち抜き頂点に立った。
「ニューヨーク・ヤンキースとロサンゼルス・ドジャースというアメリカ東西の伝統球団が43年ぶりに頂点を争いました。大谷選手をはじめ、両チームにはスター選手が多く所属しており、世界中の野球ファンからの注目度はかなり高い。観戦チケットはいちばん安くても約12万円です」(スポーツ紙記者)
伝統ある球団同士の対決ということもあるが、なぜここまで注目される組み合わせなのか。メジャーリーグ研究家の友成那智さんに聞いた。
「ドジャースも以前はブルックリンに本拠地を置いていました。同じニューヨークでも対極の2チームでした。都心部の近くにお金をかけて大きな球場を造ったヤンキースに対して、当時のドジャースはお金もあまりなく、ブルックリンは下町。ホームランを量産するヤンキースに対して、かつてのドジャースは盗塁などの機動力を使った野球で対抗していました。そういった対比がファンからしてもわかりやすく、おもしろい。今でこそチームカラーは変わっていますが、そうした歴史もあって盛り上がったのです」
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国内外の記者から取り囲まれた大谷
“伝統の一戦”の前日会見では、選手ごとにブースが用意されて取材が行われたが、大谷のブースではその人気ゆえにちょっとした“トラブル”が起きていた。
「日米のほかにも中南米など、多くの報道陣が大谷選手の取材をしようと集結。警備員が合図をすると、メディアの待機場所から一斉に“スタート”。あっという間に何重もの報道陣が大谷選手を囲んでいました。少しでもいい場所を確保しようと押し合いが始まり、警備員が注意するなど、かなり混乱していました」(前出・スポーツ紙記者)
大注目の大谷ではあるが、現地で長年取材をする梅田香子さんによれば、このワールドシリーズで知名度や人気もさらにアップするという。
「移動や時差があり、選手側からすると大変ではありますが、東西の2チームが対戦するということで、テレビ中継は高視聴率が期待できます。これまでニューヨークなどの東海岸で大谷選手が出る試合が中継されるにしても、遠征で来たときくらいでした。今回のワールドシリーズでは毎試合中継され、これまで以上の人が見ることに。本当の意味で全米のスターの仲間入りを果たすことになりますね」
大谷にとって、2024年はまさに激動の一年だった。
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「10年総額7億ドル(契約合意時のレートで約1015億円)という超大型契約でドジャースに移籍すると、キャンプ中だった2月に元バスケットボール選手の真美子さんとの結婚を発表。幸せなニュースがあったかと思えば、3月に韓国での開幕戦を戦った直後、通訳の水原一平被告が違法賭博に関わっていたとして解雇。その後の調査で大谷選手の口座から約1700万ドル(約26億円)を不正に送金していたことが発覚し、12月に水原被告に対して量刑が言い渡される予定です」(在米ジャーナリスト)
結婚で成績を落とした長嶋茂雄、落合博満
周囲の環境も大きく変化する中で、前人未到となる50本塁打&50盗塁の“50―50”という偉業を成し遂げた。
スポーツライターの小林信也さんは、シーズン前には結婚による“リスク”を語っていたが、今年の結果についてこう話す。
「開幕前は“活躍して当たり前”というような空気感がファンの間ではありました。なので“そんなに簡単ではない”ということを言い表すために、長嶋茂雄さんや落合博満さんなどの名選手でも結婚した次のシーズンは成績を落としていた事例をお話ししました。ですが、そんな心配を吹き飛ばしての大活躍で、まさに感服です。それだけ強い意志や使命感が大谷選手の中にあったのでしょう」
今年はさまざまな変化が起こったが……。
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「ドジャースに移籍したこと、犬を飼い始めたこと、結婚したこと、すべてが大谷選手にとっていい転機になっています。水原氏の事件もありましたが、そのタイミングで結婚していたことも、いい巡り合わせ。そういったところに彼の運のよさが表れています」(小林さん)
パートナーに選んだのが真美子夫人だったというのも、よかったようだ。
「真美子さんは大谷選手が野球に集中できるように配慮しているみたいです。シーズン中に“どこかに連れていってほしい”などのわがままを言ったり、“大谷の妻”として表に出すぎる感じもない。結婚した年にこれほどの成績を残せたのは、そういう性格や理解のある真美子さんをお相手に選んだからでしょう」(前出・在米ジャーナリスト)
大谷が「やり残していること」
どんな苦難や困難があっても、それを乗り越える進化を遂げてきた大谷。次はどこに向かうのかというと……。
「来年は投手としてワールドシリーズに挑戦する夢があるでしょう。大谷選手も打者としてやりたいことは十分できたので、今度は投手としてやり残したことをやる番。手術を受けた肘も、キャッチボールを見るとよくなっていると感じました。本人は今から投げたくてうずうずしていると思いますね。このまま復活すれば、その年に最も活躍した投手に贈られる『サイ・ヤング賞』も十分に狙えます。昨年も肘をケガする前まではかなりいい投球をしていましたから」(梅田さん)
友成さんも“二刀流”復活に期待をしている。
「次はMVPとサイ・ヤング賞の同時受賞でしょう。来年は手術から復帰1年目なので、投手としての出場は制限されるかと思いますが、再来年以降は十分に期待できます。2つの賞を同時受賞すれば、まさに二刀流の極致ですね」
打者として、いまだかつてない結果を残した2024年。次に目指すのは投手としても頂点に立つこと。二刀流の復活に期待がかかるが、来年は開幕から期待ができそうだ。
「来年のメジャーリーグ開幕戦は東京ドームで行われることが決まっています。東京ドームは、プロ野球12球団の本拠地の中でもホームランが出やすい球場。2025年の第1号ホームランが日本で見られる可能性もかなり高いです」(前出・スポーツ紙記者)
フィクションを超越した“大谷翔平物語”は、まだまだ続きそうだ。