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野田秀樹(68)が作・演出・出演し、松本潤(41)が主演したNODA・MAP公演「正三角関係」のロンドン公演が10月31日から11月2日まで、英国ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で行われた。4回の公演のチケットはすべて売り切れで、カーテンコールでは満員の観客は総立ちで拍手と歓声を送った。野田は「(演劇に)厳しいロンドンで、これだけのカーテンコールとスタンディングオベーションをいただき、素直にうれしい」と喜んだ。【林尚之】
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★長崎を舞台に
英語のタイトルは「Love in Action」。ドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」をモチーフに、1945年8月の長崎を舞台にした作品。花火師の「唐松族」の一家を主人公に、長男の花火師に松本、次男の物理学者に永山瑛太、三男の聖職者に長澤まさみ、そして父親に竹中直人という配役で、7月に東京芸場劇場で幕を開けた。
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★チケット完売
東京で2カ月の長期公演を行った後、北九州、大阪の公演を経て、満を持してロンドン入りした。松本のほか、永山、長澤ら出演者はアンサンブルを含めて28人、スタッフも30人という大所帯。ロンドンは野田が劇団「夢の遊眠社」を解散後、30代で演劇研修のために留学した思い出の地。これまで野田作品は22年に英国の世界的な人気ロックバンド「クイーン」の曲に想を得て、松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳が出演した「A Night At The Kabuki」などがロンドンで何度か上演されているが、それは初演から何年か経過してからのものが多かった。今回は日本での初演直後の新作公演とあって、英国の情報誌に野田のインタビュー記事が掲載されるなど、ロンドンでの前評判も高く、15ポンド(約2930円)から100ポンド(約1万9500円)のチケットは早々に完売する人気だった。
松本らは10月29日にロンドン入りし、30日にゲネプロを行い、一部シーンが報道陣に公開された。会場となったサドラーズ・ウェルズ劇場は1683年に開場した名門劇場で、客席数は1586。過去には市川團十郎が海老蔵時代に歌舞伎公演を行い、「A Night At The Kabuki」も上演されている。3日間の公演では、野田作品に精通した翻訳スタッフによる英語の字幕が舞台上に設けられ、観客は日本語で上演される舞台を食い入るように見つめた。時折笑いも起きたが、ラスト、長崎に原爆が投下された直後の場面の松本のひとり語りには静かに聞き入った。舞台が終わり、カーテンコールではスタンディングオベーションとなり、満員の観客の拍手と歓声が劇場を包んだ。
初日後、野田は「これほど初日を終えてほっとしていることはない」とコメントした。松本も「野田さんとここに来ることができて良かったと感じています」と振り返り、初日の本番前に野田とハグをしたことを明かし、「野田秀樹という演出家が、珍しくハグをしてからやろうと言ったことが印象に残っています」。今回の舞台のラストでは、長崎に原爆が投下された直後の場面が続いた。野田は「作品のモチーフを、ロンドンの観客がどうとらえるかドキドキしていた。けれど、終演後に観客の生の声で『欧米人のクリエーターたちが決して創ることのできないものを創ってくれた。何か目を覚ませと、頬ぺったでもひっぱたかれたみたいな気分だ』と聞いた時、『あっ、届いたな』と感じた」と手応えを口にした。
★言葉の壁越え
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ロンドン公演に続いて、12月2日から来年1月14日まで「正三角関係」の舞台映像を世界配信することも決まった。「A Night At The Kabuki」の時は、サドラーズ・ウェエルズ劇場での公演の映像を配信したが、今回は東京公演で収録された舞台映像となる。英語、中国語の字幕に対応し、言葉の壁を越えて、世界中で見ることができる。
■ロンドンでは「千と千尋」など“日本初”舞台が相次いで上演
今年のロンドンでは日本発の舞台の上演が相次いだ。5月には世界的にもヒットした宮崎駿監督のジブリ映画をもとにした、東宝制作の舞台「千と千尋の神隠し」がロンドン中心部にある2300人収容の大劇場コロシアムで幕を開けた。ジョン・ケアードが翻案・演出を手がけ、千尋役を橋本環奈、上白石萌音、川栄李奈、福地桃子が交代で演じ、8月24日まで4カ月もロングラン上演された。
また、梅田芸術劇場の制作による舞台2作品が、150年以上の歴史を持つチャリングクロス劇場で上演された。大阪を拠点とする梅田芸術劇場が、2019年にチャリングクロス劇場と提携し、共同で演劇作品を制作・上演する日英プロジェクトの一環。過去に人気演出家の藤田俊太郎が演出したミュージカル「VIOLET」が英国人キャスト、日本人キャストにより日英それぞれで上演されている。
今年は9月に若手劇作家加藤拓也の作・演出による新作「One Small Step」が英国人キャストにより、英語で上演された。10月には谷崎潤一郎の短編小説「刺青」に想を得て兼島拓也の脚本、河井朗の演出で「刺青/TATTOOER」が日本と英国の混合キャストにより都内で上演された後、ロンドンに劇場を移し、英語字幕付きで上演された。
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相次ぐ上演の背景には、ロンドンがニューヨークのブロードウェーと並ぶ演劇上演が盛んな土地柄で、これまで蜷川幸雄演出の舞台や野田作品もよく上演されるなど、日本発の舞台になじみが深い。さらには野田をはじめ、鴻上尚史、長塚圭史など数多くの演劇人が英国に演劇研修で留学するなど深いつながりがあり、蜷川は名誉大英勲章第3位、野田は名誉大英勲章OBEを受けている。
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