元乃木坂46で俳優の樋口日奈が、趣ある町中華の名店をめぐる番組『町中華で飲ろうぜ』(BS-TBS 毎週月曜よる10時)に、今年4月からレギュラー出演中。“たまちゃん”こと玉袋筋太郎と共に番組を盛り上げた、高田秋、坂ノ上茜の2名が卒業したことを受け、樋口と清田みくりが2代目メンバーに就任している。
2022年10月にアイドルグループを卒業し、その後多くのドラマや舞台で俳優として活躍する一方で、『町中華で飲ろうぜ』ではいい飲みっぷり・食べっぷりで視聴者を魅了している樋口。充実の現在に迫った。
◆どこの現場に行っても「見てるよ」って声を掛けられる
――まず『町中華で飲ろうぜ』という人気番組に出演が決まった時の感想を教えてください。
樋口日奈(以下、樋口):初代の高田秋ちゃんがきっかけで『町中華で飲ろうぜ』を以前より拝見していました。番組ファンの方も多いというのは感じていましたし、出演が決まってうれしいという気持ちがありつつ、やっぱりどこか“お邪魔させてもらう”という感覚もあったので、はじめのほうはこれまでの番組の雰囲気を大事にして、違和感を与えないようにと気をつけていました。“なんか、変わっちゃったな……”と視聴者の方に思われないように。そういうプレッシャーはありました。
――番組ファンが多いというのはまさにだと思います。“町中華”と言っても、当たり前ですが、同じ店は絶対になくて、キャストと店員さん、お客さんの一期一会の出会いがどこかあたたかさを感じさせますよね。
樋口:本当にそうです……! どこの現場に行っても「見てるよ」と声を掛けられるんです。そこで改めて、“たくさんの人に愛されている番組なんだな”と感じました。同じ業界で働く方々にも多くの番組ファンがいて、大先輩の方々からも「『町中華』出てるね!」と仰っていただくことがあり、私にとっても転機になったというか、いろんな人に知ってもらえるきっかけになったと思います。
◆実家ではゼロ中華「ロケ弁で酢豚を知った」
――ファン層の広がりを感じているというか。
樋口:以前から私のことを応援してくださっていて、見てくれている方もいますが、『町中華』をきっかけに知ったという方をSNSで見かけて、乃木坂46を卒業していろんなジャンルに挑戦していくというひとつの目標があったので、新たな扉を開けられたと思っています。
――先ほど、高田さんのことを「秋ちゃん」と仰ってましたが、親交がある?
樋口:あります! 秋ちゃんがプライベートで町中華に行っているのをInstagramで見ていて、それがきっかけで気になったお店を保存したりしていました。番組に参加する前から、町中華に興味を持たせてくれました。
もともと、実家では食卓に中華が出てこなかったんです。芸能界に入ってから、ロケ弁で酢豚を知ったくらいで。そこからいろんな人に話しを聞いたり、スタッフさんにお店に連れて行ってもらったりして、“中華ってこんなに美味しいんだ”と知ることができました。舞台の稽古終わりによくひとりで行ったりもしています。
◆町中華は「実家に帰ったような居心地になる」
――樋口さんは乃木坂46に1期生としてメンバー入りして、グループの新たな歴史を作ってきたと思いますが、『町中華で飲ろうぜ』はすでにあったものに新メンバーとして参加しました。そういう意味でまったく異なる感覚があるかと思います。
樋口:そうですね。それこそ「青森ねぶた祭で飲ろうぜ〜歴代メンバー大集合SP」でロケ終わりにみんなでご飯に行かせてもらったとき、私とみくりちゃんとしては先輩が来てくれてうれしいし、心強さがあったんですけど、秋ちゃんと坂ノ上茜ちゃんは私たちに気を遣ってくださっていて。実際は後輩からすると初代の先輩がいるとやりやすい。そういう気持ちを知ることができたんです。
――収録を重ねる上で改めて発見した町中華の魅力は?
樋口:番組のロケ以外で訪れても感じるんですけど、お客さんがあたたかいし、お店の人もすごくウェルカムに迎えてくださるんです。記憶に残るというか、1回しかそのお店に行っていなくても、お店の方の顔まで覚えられるのは町中華ならではだなって。実家に帰ったような居心地になるのが魅力ですよね。お店を訪れた時に満席だったりすると、相席もしていたんですけど。
――えっ!?
樋口:はい(笑)。席が空いていないこともあるので「相席でもいいですか?」と案内されて、サラリーマンの方とご一緒したことがありました。それでも馴染める居心地の良さがいいところだと改めて感じました。居合わせたお客さんとすぐに生まれる一体感も特別ですね。
◆初回のロケでお店の人に思わずハグ
――どこか親近感はありますよね。樋口さんのコミュニケーション能力が高いというのもあるとは思いますけど(笑)。
樋口:あはは(笑)。でも「あれ食べた?」なんて聞いてくださるのは町中華くらいだと思うんです。
――そういう素敵な人同士の触れ合いを見た後に、DREAMS COME TRUE「うれしはずかし朝帰り」が流れると、なんか沁みますよね(笑)。歌詞自体は番組にガッツリハマっているわけではないけど、絶妙にマッチしているというか。
樋口:私もあの曲大好きです! つい口ずさんじゃう(笑)。ロケをしているとお店の方は本当に同じ愛で返してくれるんです。初回のロケで、お店の人に思わずハグしちゃったくらいで。私は記憶がなかったんですけど。
◆愛が溢れるとみんなにハグしたくなっちゃう
――記憶なかったんですね(笑)。
樋口:そうなんです(笑)。たまさん(玉袋筋太郎)、スタッフさんに後日言われて知りました。すごく良いコミュニケーションを取ってくださると大好きになっちゃうんです。愛が溢れるとみんなにハグしたくなっちゃうというか(笑)。
――スポーツ選手が喜びを分かち合う時のソレに近いんですかね(笑)。
樋口:そうなのかも(笑)。放送を見たお母さんからは、「いつもの日奈だなって思った」と言われました(笑)。確かに私、愛が溢れると男女・年齢問わずハグしちゃうんです。お父さんにもハグするし、お母さん的には「あのままで良いんじゃない?」と言ってくれて、安心しました。
――樋口さんの等身大の姿ってことですね。
樋口:そうですね(笑)。
◆このままだとポンコツ姐さんになっちゃいそう
――新加入した清田さんは22歳。一方、樋口さんは26歳で年齢的にはお姉さん的な立ち位置ですが、樋口さんが「2代目町中華姐さん」で、清田さんが「2代目伝道師」になるのでしょうか?
樋口:坂ノ上茜ちゃんと秋ちゃんも同じくらいの年齢差ですよね。私的には姉さんでいきたいと思っていますが、たまにポンコツな部分が出ちゃうんですよ……(笑)。
――この場にいない方のことを言うのもなんですが、高田さんもそういった魅力があったような(笑)。
樋口:どこか通じるものがあるのかな。私的にはしっぽりと町中華で飲んでいる女性を目指していたんですけど、ちょっと程遠い感じになっちゃいました(笑)。このままだとポンコツ姐さんになっちゃいそう。
◆『ラヴィット!』酒焼け事件の真相
――朝の番組『ラヴィット!』(TBS)ではハブ酒の飲み過ぎで声を枯らして出演されたこともありました。
樋口:あれは、大反省です。『ラヴィット!』出演日の前日がお休みで、その前に飲み過ぎてしまいました。“1日あれば復活できる”と思って、これまであんまり飲んだことのないお酒を飲んでみようと、日本酒とかハブ酒をメインにすごく飲んでしまったんです。そうしたらその後1週間くらい声が枯れてしまって……風邪でもないし痛くもないんですけど、声だけは枯れていて。
――酒焼けというやつですね。
樋口:ですね。でもあんまり飲んだことのないお酒の限界がわかったことはいい勉強になりました。お酒に関わる仕事をする上では、色んな種類を飲んでみることも大事だと思っているので、これからも気をつけながら楽しんでいきます。
◆2つの居場所があるのは本当に幸せ
――2022年に乃木坂46を卒業し、『町中華で飲ろうぜ』にレギュラー出演。目の前の景色・取り巻く状況が大きく変化していると思いますが、その点についていかがですか?
樋口:まず私自身が“楽しい”と思えるお仕事をさせていただけることはすごく幸せなだと思います。お酒を飲むのも、美味しいご飯を食べるのもすっごく好きですし、乃木坂46を卒業して、こういった新たなジャンルのお仕事に挑戦できるということは本当にありがたいなって。
一方で、俳優として頑張りたい気持ちももちろんあります。お芝居では普段の私とは別の人格を演じるので、町中華で楽しくお酒を飲むというお仕事は、唯一“私の素を出せる場”なんだなと思います。お芝居だけだと私のパーソナルな部分は知られなかった。町中華で素を出せるからこそ、安心してお芝居で他者を演じることができます。そんな2つの居場所があることは本当に幸せですし、存分にギャップを楽しみたいです。
――ちなみにあまり中華が出なかったという樋口家の面々から感想はありましたか?
樋口:毎回、放送を楽しみにしてくれているようで、お父さんはお母さんに「明日はニラレバにするか」とか言うらしいです(笑)。番組に影響されちゃって。
――中華料理が出ない樋口家に変化が訪れたんですね。
樋口:そうなんです。お母さんも中華にあまり馴染みがなかったんですけど、家族で「行きたいね」となって、地元の中華料理屋さんに行ったそうです。樋口家にも町中華の風が吹きました(笑)!
<取材・文/中山洋平 撮影/藤木裕之>
【中山洋平】
1983年生まれ。群馬県前橋市出身、埼玉県川越市育ち。主にエンタメ分野のニュース・インタビュー記事を執筆。サウナ、ビジネスホテル、ファッション、Mリーグ、ボウリング、The Beatles、サザンオールスターズ、坂道シリーズ、お酒を好む。X:@yhinakayama