林陵平のフットボールゼミ
サッカー日本代表はW杯アジア最終予選のアウェー・インドネシア戦で4−0と大勝。4つのゴールが決まった技術的背景や、戦術的理由を、人気解説者の林陵平氏に徹底解説してもらった。
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【非常にうまかった守田と鎌田の立ち位置】
難しいゲームをしっかり4−0で勝ちきった、日本の強さをすごく感じました。
インドネシアの試合も事前にたくさん見ましたが、本当にいいチームでした。チームとして出来上がっている相手に対して、日本がしっかり勝ったなという印象です。
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インドネシアの初期配置は3−4−2−1、日本も3−4−2−1なのでミラーゲームの形になりました。そのなかで立ち上がりすごくうまく入ったのは、ホームのインドネシアだったかなと思います。
日本がボールを保持した時に、全体がベタ引きで5−4−1というよりも、状況に応じてローブロック、ミドルブロック、ハイプレスをうまく使い分けていた。そこで日本としては少し戦いにくさがあったのかもしれないですね。
まずは、インドネシアにビッグチャンスがありました。ロングボールに抜け出して完全に1対1。肝を冷やしましたけど、これは鈴木彩艶が本当にいい対応をしました。相手が右足で横にかわして丁寧に流し込もうとしたんですけど、ここで鈴木がキックフェイントに対して簡単に倒れてしまわずに、我慢して斜め前に移動した。
この時、横への移動ではなく、斜め前に移動したのがすごく大事で、一瞬で少しでも相手に寄せることで防げるコースが変わってきます。この1対1を防いだのは、すごく大きかったです。
日本は前節のオーストラリア戦で、相手が5−4−1を敷いてきた時に苦しみました。その要因は人の配置が少し後ろに重すぎたのがあったと思います。守田英正が下がって後ろを4枚にした4−3−3みたいな形でした。
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そこで今回はその反省を生かし、守田がDFラインに下りずに、できるだけ後ろは3枚にして3−2−5の形を取り続けました。この日の守田のポジショニングはすばらしかったです。そして鎌田大地もそれに連動して動ける選手なので、守田と鎌田のふたりが中盤にいると、状況に応じて立ち位置を変えて、相手の嫌なポジションに常に立ち続けられます。
17分には、守田と鎌田の入れ替わりからチャンスを作りました。鎌田が左下に下りてきてボールを引き受け、その間に守田が2列目に。鎌田が遠藤航へ落としたボールが守田へと渡り、相手DFライン前でフリーでボールを持つ状況なりました。シャドーの鎌田には相手の右センターバック(CB)がついていましたが、鎌田と守田の入れ替わりで2列目に守田が入るとマークにつけなくなるのが面白いところです。
このような形で、今回は日本が相手の2ボランチの後ろのスペースに入ることができた。そうなると次は、相手のDFラインの裏のスペースを狙えるので、このあたりが非常にうまかったと思います。
【日本代表の質の高さを示した前半の2ゴール】
35分のゴールシーンも、今回の日本代表がうまくいった点を表わすシーンでした。
遠藤がボールを持って、守田と鎌田が相手の2ボランチの後ろに立ち位置を取った状況でした。あとは町田浩樹のポジショニングがよく、この時は左前にあがりました。これが遠藤の真横だとパスを受けても相手が邪魔になって、ゴール前へボールが入れられなかった。そこをさらにひとつ前のスペースへ入ったので、遠藤のパスを受けゴール前へ斜めのボールを入れることができました。
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やはり3バックの選手が攻撃参加することによって、前線にはより人数をかけられます。町田からの斜めのボールを守田がヒールで鎌田に預けて、鎌田は前に運んだあとシュートも打てましたが、最善の選択肢を選んでクロス。小川航基が詰めていたところオウンゴールになったとはいえ、非常にいい形でした。
40分のゴールシーンは、これも鎌田が常にシャドーの位置に立ち続けるわけではなく、状況に応じて下りてボールをピックアップしにくるところからです。マーカーの背後をとった三笘薫に鎌田からのスルーパスが入り、クロスから南野拓実がゴール。
ここはファーサイドからニアサイドに入ってきた南野のスペースの見つけ方がよかったです。そしてトップスピードで入ってきながら、左足でインフロント気味のシュートをうまく決めた。現在の調子のよさ、技術の高さがわかるシーンでした。三笘の右足アウトサイドのクロスもよかったです。ドリブルを仕掛けながらも顔が上がっているので、南野が入ってきたのをしっかり見つけることができました。
【交代出場の選手たちも活躍】
後半も日本は2ゴール。
49分の守田の得点は、前線からプレッシャーをかけたところで相手GKのキックミスを拾って決めました。ここは守田のファーストタッチがすばらしかったです。コントロールが決まったので、相手を見てしっかりかわしてシュートを打つことができました。
もう1点は69分に交代出場の菅原由勢が決めました。これはインドネシアが後半から少し戦い方を変えたのが関係しています。基本的には5−4−1になるというよりも、5−2−3で日本の各選手をマンツーマンで捕まえにきました。
得点シーンは、菅原が右サイドでボール持って伊東純也がタッチライン際に流れてきた時に、マークしていた相手の左CBがかなり食いついて自分の持ち場を離れた。そこで大きく空いた内側のスペースを菅原と伊東がシンプルなワンツーで突いて、菅原が抜け出しました。
79分に旗手怜央と大橋祐紀が入りましたが、途中から代わった選手はゴールを挙げた菅原も含めすごくいいプレーをしていたと思います。特に旗手はゲームにうまく入れていましたし、後半の頭から左ウイングバックに入った前田大然も、守備の部分で本当にチームのためによく走っていました。
少し気になったのは、伊東はやはりシャドーの選手ではないと個人的には感じました。もちろん中央でのプレーもできますけど、この3−4−2−1だと、彼はウイングバックのほうが縦へのスピードを活かせて得意なのかなと思います。ただ、これは菅原を右ウイングバックで出すために今回は右シャドーを試した部分があるでしょう。
このような形でうまくゲームをコントロールしながら、日本は4−0で勝利しました。「日本、強かったな」というのと、最終的には本当に守田&鎌田がすばらしかった。あとは左CBの町田。「もう外せないでしょ!」というぐらい安定したプレー見せているので、今の日本にとって大きいのかなと思います。
さらには遠藤ですね。この試合ではそこまでプレーに出てこなかったかもしれませんが、やはり彼がいることによって守田が動きやすくなるし、後ろのリスク管理のところを含めて、遠藤がいると中盤が安定してチームは引き締まるというのも感じました。