スタートからの6週間は橋本環奈の陰鬱な表情と「ギャルになる、ならない」の行ったり来たりでストレスがたまっていたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』。第7週あたりから、とりあえず雰囲気だけは明るくなったのでだいぶ見やすい作品になりましたが、神戸に移り住んだ第8週に入り、その明るさがなんだか鼻につくようになってきました。
うーん、好意的に見たい気持ちはあるんだけどな。第37話、振り返りましょう。
■免許は大丈夫か
神戸に空きテナントが出たことで、床屋として再出発することにした結ちゃんパパ(北村有起哉)。震災前は「BARBER YONEDA」という看板を掲げて主に角刈りなどをしていましたが、今後は女性にも利用してほしいとの願いから「ヘアサロン ヨネダ」に改名したそうです。この店名はママ(麻生久美子)が考えたそうですが、ヘアサロンを名乗るからにはパーマとかするんだよな。理容師と美容師では別の国家資格になるわけですが、免許は大丈夫なんでしょうか。ずっと自分の仕事を「床屋」って言ってたし、元から理美容のダブルライセンスを持っていたとは思えないんですよねえ。
なんでわざわざこういうことをするんだろう、と思うわけですよ。ドラマを作ってるときに「ヘアサロンにしましょう」ってことになったら、誰かが「それだと免許が別だけど」って指摘するはずだと思うんですよ。だったら「美容免許も取ったし」って、ひと言セリフを入れればいいだけなのに、それを疎かにするんだよな。なんかね、そんなフィクションを作る上で当たり前の指摘を、言えない雰囲気があるんじゃないかと邪推してしまうわけです。そういう気持ち悪さがずっとある。好意的に見たい気持ちはあるんだけど。
進みます。姉・アユ(仲里依紗)の話。
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アユは2年半前の夏、震災で亡くなった親友・マキちゃんのお墓に家族みんなでお墓参りに行きたいという理由で突然、糸島に帰ってきたことがありました。神戸に一家が引っ越し、アユさえ神戸に来ればいつでもお墓参りに行ける状況となりましたが、もう「去年の2月から」連絡がないそうです。ママが「神戸に引っ越したよ」とメールしても無視なんだって。で、何をしてるかといえば付き人と2人で世界中を遊びまわってる。
何を見せられてきたんだろう、と思うわけですよ。マキちゃんのお墓参りに行きたいと言って、泣いたアユ。「マキちゃんのことは私だって悲しい」と涙ながらにアユに食って掛かった結ちゃん(橋本)。あのシーンを「忘れろ」ということなんでしょうか。アユはいいとしても、あんだけ泣いて怒鳴り散らしたんだから、結ちゃんだけでもマキちゃんのお墓参りに、真っ先に行きなさいよ。震災を語るためにわざわざ神戸に舞台を移したのに、姉妹2人に大きな傷を残した「マキちゃんの死」を、なかったことにするつもりなのかと思っちゃうんですよ。つじつまが合ってないんです。
結ちゃんは結ちゃんで「バイトしよっかな」とか言い出して、パパママに「慣れるまで学業に専念したら?」って言われたら「学業って(笑)大げさな(笑笑)」という態度ですし、授業初日にはギャル盛りメイクにネイルくっつけて通学するわけですが、これはマジメちゃんに「なめとんか」と言われるための展開作りでしょうから、まあいいや。鼻にはつくけどな。
■それを見せられるんか
結ちゃんが、お友達にカッパと付き合っていることを自慢した上で「うちが栄養士になって支えたいなぁ」とか言いながらポヤーンとするシーンがあります。その後、神戸での初デートでカッパが「ヘアサロン ヨネダ」を急襲し、パパママに「結婚を前提にお付き合いをさせていただいております」と宣言する。
そういうのを見せられるんか、とゲンナリしちゃうんですよ。そんな簡単にゴールを設定してくれるなよ、と。
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やっぱりこう、長いドラマを見るということは、その主人公の自己実現や成功、あるいは目覚めのようなゴールを期待するわけです。エリート野球選手の妻になって食事面をサポートすることだって、全然ダメな夢じゃないけど、それは勝手にやってよドラマにすることじゃないだろと思うし、仮に今後「最初はただカッパを支えたいだけだったけど、もっと多くの人を」みたいなことを言い出すんだとしたら、ドラマの側から「野球選手の妻になって栄養面からサポートしている女性」という存在の価値を貶めることになる。それを避けるためには、今度はカッパに再起不能のケガをさせて「今まで勉強してきたことを世間に役立てたい」とするしかない。また物語のフックのために登場人物を痛めつけることになる。
せっかく結ちゃんが明るくなったのに、また暗澹たる気持ちになってきましたよ。がんばれ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)