11月25日、愛知県名古屋市にあるトヨタ自動車オフィスにてTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR WRT)の2025年WRC世界ラリー選手権への体制発表記者会見が行われ、日本人ラリードライバーの勝田貴元は2025年もレギュラードライバーとしてのフル参戦が決まった。
2015年からTGRラリーチャレンジプログラム(現WRCチャレンジプログラム)の育成ドライバーとして海外ラリーに進出した勝田。2016年からWRC2へのスポット出場を開始し、3年間シリーズを戦った後、2020年からは最高峰クラスへとステップアップし、今季は4年目の挑戦となっていた。
2024年シーズンは、初のレギュラードライバーとしてエントリーし、ラトバラ代表には「全戦表彰台を争う準備ができている」と期待されたなかで戦った。
全13戦で争われた2024年は、クラッシュとトラブルの影響もあってドライバーズランキングは6位となったが、各ラリーでは各所でトップ3に名を連ね、時には総合首位も争うほどの速さを見せた。
それは勝田自身もその手応えを「昨年とは比べものにならないほど」と語っており、チームのエンジニアもその走りを認めている。
2025年の参戦継続が決まった勝田は、発表会では次のように抱負を語った。
「今シーズンは非常に苦戦したラリーが多かったので、スピードを結果に繋げられなかったのが、チームの一員として、貢献できなかった思いが強いです」
「そこは悔やんでいる部分でもありますし、来季はその部分でもっと強くなりたいです」
「プッシュしているときには速さを出せる自信もついてきていますし、チャンスを取りに行けるような強い走りが目標です」
「来年は、ラリーを通してしっかりと戦えるよう、3日間の組み立てを頑張っていけば結果もついてくるのではないかと思います」
■参戦継続が決まったのは日曜。まずモリゾウから声をかけられる
すでにラリージャパンではチームから『絶対完走』の指令があったことを明かしている勝田。もしその条件を達成できなかった場合、来季フル参戦はおろか「走れなくなるかもしれない」と、シート喪失の可能性を告げられていたという。
「今回は、これからのフル参戦がなくなるかもしれないといった言い方ではなくて、『走れなくなるかもしれない』という風に言われていました。自分の人生がかかっているというのは、今までに経験したことのないような感覚でした」
「そんななかでのラリージャパンは難しいコンディションかつ、母国ラリーでいろいろな期待も感じていましたし、実際に多くのファンが見に来てくれました」
「なので競技が始まる前から『表彰台』という期待が高まっていましたけど、僕自身がプレッシャーをかけすぎていました。それはアタックできる状況で母国に戻って来られなかった自分のミスです。ただ……、それは自分のせいではありますけど、そういった心境に加え、今回はさまざまなプレッシャーが混ざり合っていました」
「今だから言えますけど、金曜日のお昼の時点で『早く月曜日になってほしい』と思っていました……。でも、本当にそんな精神状態のときにリエゾンやコースサイドから多くの人が応援してくれていて。とくに子供が手を振って笑顔を見せてくれると、僕も笑顔になれました」
そんな重圧がのしかかる精神状態のなかラリージャパンを4位完走で戦い抜いた勝田。この2025年体制発表会はラリージャパン終了直後の月曜日に行われたが、実際に継続参戦が決まったのは最終日曜日パワーステージを終えた「表彰台に戻ってきたとき」だったと言う。
「本当に“完走が絶対”だったので……。いちばん最初にモリゾウ(豊田章男会長)さんから『大丈夫だよ』と言われたときは少し泣きそうになりました。ラトバラ代表も同じように声をかけてくれましたし、すごく濃い一週間でした」
「ただ、ファンの皆さんに表彰台を見せられなかったことはすごく申し訳なかったです。来年ラリージャパンに戻ってきたときは『勝ちにいっていいよ』と言われるくらいの状況で臨みたいです。それを目指してしっかりと一年間を組み立て、頑張っていきたいです」
また、参戦継続を決めたラトバラ代表は、「タカ(勝田貴元)は終盤2戦で素晴らしいパフォーマンスを見せた。とくに日本では、相当なプレッシャーのなかでもしっかりとフィニッシュしてくれた。来年はさらに表彰台を獲得することができるのではないか」と期待を語っている。