2025年から100%持続可能燃料を採用するBTCC、「将来は電動化でなく水素に光明」と最高責任者

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2024年11月29日 18:10  AUTOSPORT web

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2025年に100%持続可能な燃料を導入するとアナウンスしたBTCC
 世界最古のツーリングカー・シリーズとして名を馳せるBTCCイギリス・ツーリングカー選手権の運営団体TOCAを主宰し、近年はFIA世界自動車連盟のツーリングカー・コミッション理事も務めるアラン・ゴウは、2025年に100パーセント持続可能な燃料を導入するとアナウンスしたBTCCの将来に対し「この決断が我々の大きな功績になる」と断言し、将来的には「電動化ではなく水素燃料がシリーズの長期的な未来を保証する可能性がある」との考えを明かした。

 鳴り物入りで2022年に導入した共通ハイブリッド機構のプログラムを正式に終了し、新たに100%持続可能な燃料を導入する急転直下の英断を下したTOCAだが、実は2024年シーズン中には新燃料に対するトライアルが実施されており、最終戦手前の第9戦シルバーストンではダリル・デレオン(ダッカムス・レーシング・ウィズ・バーターカード/クプラ・レオンBTCC)をサンプルカーに指定し、続く最終ブランズハッチまで2戦分のデータ収集を進めてきた。

 結果として、BTCCはイギリスで初めて持続可能な合成燃料を全面的に採用する選手権となり、すべての車両がハルターマン・カーレス社が供給する新燃料『Hiperflo ECO102 R100』を採用。日本のトップカテゴリーたるスーパーGTとも同じ方向性を採用することとなった。

「かつての1990年代初頭に遡ると、我々はツーリングカー選手権で初めて触媒コンバーターを導入した。なぜなら、我々はロードカーとの関連性を保つ必要があったからだ」と、BTCCの映像制作全般を担当する『ダイアゴナル・コムズ』の企画にて、F1チームのプレスオフィサーも歴任する英国のジャーナリスト、マット・ビショップとのビデオインタビューに応じたBTCC最高経営責任者ことTOCA代表のアラン・ゴウ。

「BTCCの歴史を通じ、燃料だけを見ればバイオ燃料で走るクルマ、LPGで走るクルマ、そしてディーゼルの車両も存在した。我々はモータースポーツでさまざまな燃料が何をもたらすかを示すためにこれらすべてを試し、それらのクルマをレースに参加させた唯一の選手権だろうね」と続けるゴウ。

「過去30年以上にわたり、我々がその最前線に立ってきたことを誇りに思っている。そして、もし我々が100%持続可能な燃料(つまりエタノールの少量混合燃料でなく真に持続可能な燃料)を使用する世界初の主要ツーリングカー選手権になることができれば、それはBTCCにとって大きな名誉となるだろう」

 実戦でのトラックテストを経て、ハルターマン・カーレスが供給する『Hiperflo ECO102 R100』と名付けられた新しい燃料は、現在のTOCA共通エンジン・サプライヤーであるMスポーツや、シリーズで活動している他の3社のエンジンチューナー(マウンチューン/ニール・ブラウン/スウィンドン・レースエンジンズ)によるダイノテストに合格したという。

「パフォーマンスや信頼性に問題はない」(ゴウ)というこの燃料は、同国の自動車業界のみならず、世界全体が大きな不確実性を抱えるなか、シリーズの持続可能性向上を目指すべく2025年に一斉導入される。

■水素の活用に意欲的。「おそらく2〜3年以内」

 現在、イギリス国内でも量産車工場の閉鎖が相次ぐ原因の一端は、英国内で製造業者が販売する新車の一定割合は「ゼロエミッションでなければならない」とするゼロエミッション車規制にあるとされている。この規制では、目標を達成できない製造業者には多額の罰金が科される可能性がある。

 そのため自動車ブランドの各社は、主に電気自動車への切り替えを通じてこの目標を達成しようとしており、ジャガーはすでにガソリン車とディーゼル車の生産を中止し、2025年から完全な電気自動車ラインアップに移行する段階にある。

 ガソリン車の販売禁止期限が延期されているにもかかわらず、他のメーカーも今後数年でこれに追随する計画のようだが、イギリスに限らず電気自動車の急増に対応できるインフラがあるかどうかについて、欧州や世界でも多くの消費者が懸念を抱いている。

 ただし、これら問題に対する「他の」代替手段は、今後モータースポーツで活路が見い出される可能性があり、とくにトヨタは早くからスーパー耐久で水素自動車を走らせており、WEC世界耐久選手権とル・マン24時間レースの双方が将来的に水素クラスの導入を検討する契機を作ったと見られている。

 またワンメイクオフロード選手権として2025年のラウンチを控えるエクストリームHも、皮肉なことに電動BEVによるエクストリームEの直接的後継となり、こうした傾向も踏まえると、代替としての電動化ではなく水素技術が今後のBTCCで役割を果たす可能性がある。

「政治的な道を進むと、我々は皆EVに乗ることになるが、それは答えではないことが証明されている」と続けたゴウ。

「EVは、ことモータースポーツでは非常に限られた価値しかなく、長持ちせず非常に重いため、ほとんど採用されていない。そしてEVモーターに取り付けられた水素燃料電池または内燃機関に取り付けられ活用される水素こそが、おそらく次の大きな変革になると思う」

「我々は喜んで、チャンピオンシップ内で水素開発への扉を開きたい。そして、おそらく今後2〜3年以内にBTCCで水素要素が取り入れられると考えている。技術開発で参戦するのは数台だけかもしれないし、フィールド全体が入れ替わるとはまだ想像できないが、ル・マンのような他クラスでは水素が徐々に取り入れられ始めているのは明らかだ」

「15年前に『ハイブリッドを走らせる』だとか『100%持続可能な燃料を走らせる』とか『水素について話すことになるかもしれない』と言われたら、私は『お茶を飲んでゆっくり横になってください』と言われただろう(笑)」

「どのような道を進むにせよ、BTCCで得られる単発で、シャープで、エキサイティングなレースを損なう要素を導入することはないと断言する。近い将来……つまり今後5年ほどの間は、100%持続可能な燃料を使用した、より燃費の良い内燃機関こそが前進への道であることは間違いないね」

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