最愛の娘は、妻の“不倫”でできた子だった。全てを知った夫が「妻に与えた“最大の罰”」は|ドラマ『わたしの宝物』

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2024年12月05日 16:20  女子SPA!

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 夫以外の子を産み、夫には知らせずに夫とともに育てていく「托卵(たくらん)」を描いたドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系、木曜よる10時〜)。話題の作品を、夫婦関係や不倫について著書多数の亀山早苗さんが読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。

◆言葉が足りない人と、言葉が過ぎる人と……

 なにやらもどかしい。あと一言、きちんと話しておけば展開は変わったはずなのに。そしてなにやらうっとうしい。どうしてあちこちに顔を出して言わなくてもいいことを言うのか。ドラマ『わたしの宝物』の美羽(松本若菜)と、その“親友”である真琴(恒松祐里)のありようである。

 美羽と宏樹(田中圭)夫婦に爆弾投下し、ふたりを混乱の渦にぶちこんだ真琴を、美羽は拒絶することもなく、無表情のままだが受け入れている。真琴は、宏樹のもとへもやってきて「(娘の)栞ちゃんはどうするつもりですか」とまたも状況をささくれ立ったものにしていく。自ら騒ぎを引き起こしておきながら、今度は親切ごかしにあちこちをつないで歩く真琴に、なぜかモヤモヤイライラしてしまう。

◆夫婦はお互いの行いに、罰を与えたかったのだろうか

 6、7話で、とうとう美羽と宏樹の関係は崩壊してしまった。娘の栞と海に入ろうとした宏樹だが、思いとどまって自宅に帰る。そして美羽と対峙するのだ。「栞の父親は誰?」と。だが美羽は答えなかった。

 罪悪感のなせる業であり、すべての責任は自分でとるという意思表明なのかもしれないが、ここまで頑なになる必要があるのかどうか。宏樹は薬指から結婚指輪をはずしてカランとテーブルに置く。そして美羽を追い出し、ワンオペで娘を育てて仕事にも支障を来すようになっている。

「栞とは血がつながっていないから、一度離れたらもう戻れない」と彼は真琴に言い、美羽には「美羽に罰を与えたかったんだと思う」と白状する。もしかしたら、美羽の頑なさは、モラハラ時代の宏樹に罰を与えようとしたのかもしれないと、こちらは勝手に想像してしまう。

 泣くなり叫ぶなり、許しを乞うなり、感情を動かせばいいのに、美羽の心は動かない。それは自分への罰のつもりなのだろうが、穿った見方をすると夫を許していないともとれるほどだ。

◆「幼い娘までも傷つけてしまう」恐怖感

 美羽は余命いくばくもない母親に請われて、つい本当のことを話してしまう。栞は宏樹の子ではないと。そしてある日、病室に宏樹が栞を連れてやってくる。美羽の母が本当のことを知っているとは気づかないままに。

 美羽の母は亡くなり、便宜上、美羽は宏樹とともに自宅に戻る。栞を抱いて寝室で嗚咽する美羽の声を聞いて宏樹の顔が苦痛に歪む。このままだとむしろ、自分は再び美羽を傷つけるだけだ。それどころか栞まで傷つけてしまう恐怖感に襲われる。

 宏樹はひょんなことから、美羽の相手が冬月(深澤辰哉)だと気づく。その冬月とは仕事で関係があり、つい先日、冬月の優しさに触れて思わずワンオペの子育てがきついことを愚痴ったばかりだった。一方、冬月を愛するがゆえに嘘をついて彼の人生を変えてしまった莉紗(さとうほなみ)もまた、冬月の相手が美羽だと気づく。

 すべてを知っている真琴を含め、この5人の関係がどうなっていくのかが今後の見どころになりそうだ。

◆宏樹の繊細さと、繊細に見えて鈍感な冬月が対照的

 それにしても、相変わらず田中圭恐るべし、である。眉の動かし方、話の間のとり方、目の些細な動きでこれ以上ないくらい豊かな感情表現をするから、彼の表情から片時も目が離せない。美羽と冬月の心の動きは読めないままだが、宏樹だけが今の段階では心の内をさらけ出している。

 一方の冬月は、かなりの鈍感力である。栞が自分の子かもしれないという可能性をまったく疑っていない。最後に美羽に会ったとき、「私たち夫婦の問題だから、冬月には関係ない」と言われてしまったから、出る幕はないと感じているのだろうが、関係ないと言われれば実は関係あるのではないかと思わないだろうか。宏樹の繊細さと、繊細に見えてある意味鈍感な冬月のありようが対照的で興味深い。

 宏樹は言う。「あのとき、すべてを話してくれれば違っていたかもしれない」と。美羽に栞の父親が誰かを尋ねたときのことだ。「美羽は相手をかばった」と宏樹は受け取った。それについてもなんら言葉を発しない美羽。何かいえば言い訳になる、それは潔くないという判断なのだろうが、言い訳ではなく説明はするべきだった。

 宏樹の決断に従うつもりだと真琴に語った美羽だが、夫が出した結論は「離婚しよう」だった。美羽はそれを受け入れるのだろうか。

◆「悪い母親」という重いキーワード

 最終的には宏樹と美羽の関係が完全に終わってしまうわけではないことを示唆しつつ、冬月が去っていくような気がしないでもないが、それでも美羽は一生、十字架を背負っていくしかないのだろう。そして宏樹も苦しみから逃れることはできないのかもしれない。

 母にすべてを打ち明けたとき、美羽は「私は悪い母親なの」と言った。そして母もまた、「私も悪い母親よ、気づいてあげられなかった」と悔いる。「悪い母親」というキーワードは重い。何がいい母親で、何が悪い母親なのかは、子どもの側が決める問題ではないのだろうか。あえて言うなら美羽は「悪い女」であって、「悪い母親」ではない。そういう「ひっかかり」を作りながらも、このドラマはどこへ向かっていくのだろうか。
<文/亀山早苗>

【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio

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  • マイミクのルナパパも息子娘どっちも托卵らしい
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