長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価し、ベスト5のドライバーを選出した。今回はカタールGPの週末を振り返る。
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長いシーズンを戦い続けて疲労が蓄積している上に、終盤、ラスベガスとルサイルという、11時間の時差がある開催地での連戦に臨んだことが、ドライバーたちに影響を与えたように思われる。特に日曜日のレース中に、異常なほど多くのミスが発生し、カタールでひとつもミスを犯さなかったドライバーはいなかった。
【2024年F1第23戦カタールGP ベスト5ドライバー】
■評価 9/10:ドライで久々の勝利を挙げたフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):スプリント予選6番手/スプリント8位/予選1番手/決勝1位
満点ではないが、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はカタールの週末におけるベストドライバーと評価できる。スプリントイベントでは不調だった。レッドブルが明らかにマシンセットアップを誤っており、フェルスタッペンですら、どうすることもできず、グリッドよりさらに順位を落とした。しかしレッドブルはメインイベントに向けて完璧な立て直しに成功し、フェルスタッペンは予選最速タイムをマーク。その後、物議を醸すペナルティによってポールポジションを失った。
強い決意を持ってグリッドについたフェルスタッペンは、スタート直後にジョージ・ラッセルを追い抜き、自分よりペースが速いランド・ノリスを後ろに抑え続けた。ノリスがペナルティで後退したことで、フェルスタッペンは久々にドライコンディションでの優勝を達成。なんと約半年前のバルセロナ以来のことだった。
■評価 9/10:メインイベントでのパフォーマンスが光ったルクレール
シャルル・ルクレール(フェラーリ):スプリント予選5番手/スプリント5位/予選5番手/決勝2位
シャルル・ルクレール(フェラーリ)はほぼ完璧だったが、スプリントイベントではチームメイトに予選とレースの両方で敗れたため、10点はつけられなかった。スプリントでは、ルイス・ハミルトンとの美しいバトルの後、カルロス・サインツの後ろの位置を取り戻した。その後のメインイベントでは、ルクレールがチームメイトをリードし始めた。
予選でも決勝でも素晴らしいパフォーマンスを見せ、レースではノリスのペナルティによって2位を手に入れたのは確かだが、自分よりペースで勝るピアストリを抑え続けたのは立派だった。
■評価 8/10:最後に失速も土曜日までが素晴らしかったラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):スプリント予選2番手/スプリント3位/予選2番手/決勝4位
ジョージ・ラッセル(メルセデス)は、完璧な形で週末をスタートした後、ハミルトンを、予選だけでなくレースでも圧倒した。
スプリント予選ではノリスに次ぐ2番手、スプリントではマクラーレン勢に続く3位を獲得。メインの予選ではフェルスタッペンに僅差で敗れた。その後、フェルスタッペンにペナルティが出るように仕向けて、自分がポールポジションを手に入れたが、そのラッセルの手法については疑問に思う者もいるだろう。
レースで彼のチャンスを台無しにしたのは、スタートだった。すぐさま3番手に後退し、どちらのコンパウンドでもペースが不足していたため、4位フィニッシュが精一杯だった。
■評価 8/10:ミスなく貴重な10点をつかんだガスリー
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):スプリント予選8番手/スプリント9位/予選11番手/決勝5位
ピエール・ガスリー(アルピーヌ)は週末を通して非常に良い走りをした。ただ、メインレースの予選では、チームの戦略ミスによりQ3進出を逃した。
この週末にアルピーヌが持ち込んだ唯一の新しいフロントウイングを使用したガスリーは、すべてのセッションでチームメイトを大きく上回った。日曜日のレースでは多くのドライバーたちがミスを犯して大きな代償を払ったが、ガスリーはミスなく良いレースをした。
彼が直面した最も恐ろしい出来事は、セーフティカー先導中にセルジオ・ペレスが目の前でスピンしたことだった。これによりガスリーはコース外に出て、タイヤを汚してしまい、リスタートでコースオフ。そのためにラッセルに抜かれたものの、サインツからの攻撃に最後まで耐え抜き、アルピーヌにとって非常に貴重な10ポイントをつかんだ。
■評価 7/10:完璧になるはずの週末をミスで台無しにしたノリス
ランド・ノリス(マクラーレン):スプリント予選1番手/スプリント2位/予選3番手/決勝10位
この週末、ランド・ノリス(マクラーレン)は、マクラーレンがコンストラクターズタイトルを確保するために大きな貢献を果たすはずだった。全体の99.9パーセントで、最高のパフォーマンスを発揮したが、最後にミスが起きた。
スプリントではトップを走行しながら、ピアストリがラッセルに抜かれないよう、DRSを与えて助け、最後のラップでピアストリに勝利を譲った。これはピアストリがサンパウロで譲ってくれたことへのお返しだった。
メインレースのスタートでは、ラッセルを追い抜き、終始フェルスタッペンにプレッシャーをかけ続けた。しかしノリスは、ピットストレートでイエローフラッグを無視するという基本的なミスを犯した。確かにペナルティは非常に厳しい結果をもたらしたが、ルール違反を犯したのは事実だ。
このミスで、ノリスとマクラーレンは少なくとも17ポイントを取り逃し、終盤にフェルスタッペンに挑むチャンスも失った。完璧な週末を送っていたノリスだが、ルーキーが犯すような、決して許されないミスをしてしまった。
【ベスト6以下のドライバーとその戦い】
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):スプリント予選3番手/スプリント1位/予選4番手/決勝3位
=評価 7/10:週末を通してノリスに匹敵するペースを見せられなかった。スプリントでは、ラッセルを抑え続けるためにノリスの助けを必要とし、最後には勝利を譲られた。日曜日には堅実な走りをし、ミスを避けて、マクラーレンがチャンピオンシップをそれなりの差でリードし続けることを可能にする結果を出した。
カルロス・サインツ(フェラーリ):スプリント予選4番手/スプリント4位/予選7番手/決勝6位
=評価 7/10:スプリントではルクレールを上回ったが、メインイベントでは全く歯が立たず、レースではタイヤのパンクで後退した。
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):スプリント予選11番手/スプリント11位/予選8番手/決勝7位
=評価 7/10:スプリントイベントを好きではないアロンソだが、常にチームメイトを大きく上回るパフォーマンスを見せた。スプリントの予選とレースで11位を獲得した後、メインイベントではQ3に進出、ソフトウェアの問題に見舞われたものの、見事なレースで7位を獲得した。
周冠宇(キック・ザウバー):スプリント予選19番手/スプリント19位/予選12番手/決勝8位
=評価 7/10:ミスを犯すドライバーが多いなかで、ミスなく走ったことで順位を上げて、8位を獲得。ザウバーに、2024年初ポイントをもたらした。
バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー):スプリント予選13番手/スプリント12位/予選13番手/決勝11位
=評価 7/10:週末を通してほとんどの場面で周冠宇より速く、レース1周目の後には前の位置を走っていた。しかしローソンに接触されて後退、その後はチームメイトを助ける役割に徹した。
ケビン・マグヌッセン(ハース):スプリント予選15番手/スプリント10位/予選10番手/決勝9位
=評価 6/10:スプリントではペースがなかったが、メインイベントでは堅実な走りをみせ、ハースに貴重な2ポイントを持ち帰った。
角田裕毅(RB):スプリント予選17番手/スプリント17位/予選14番手/決勝13位
=評価 6/10:スプリントでは最大の結果を出すことができなかった。予選で良い走りをしたが、決勝ではマシンに競争力がなかった。
リアム・ローソン(RB):スプリント予選10番手/スプリント16位/予選17番手/決勝14位
=評価 5/10:今回も一貫性が不足していた。スプリント予選では非常に速かったにもかかわらず、両方のレースで、いくつか余計なミスを犯した。
フランコ・コラピント(ウイリアムズ):スプリント予選20番手/スプリント18位/予選19番手/決勝リタイア
=評価 5/10:古い仕様のマシンで走っていたため、戦うことができなかった。決勝ではターン1の混乱で被害を受けた。
ルイス・ハミルトン(メルセデス):スプリント予選7番手/スプリント6位/予選6番手/決勝12位
=評価 4/10:ラスベガスであれほど輝いていたドライバーがいったいどうしたことか。彼の心と魂は、すでに2025年とフェラーリに向かっているように見える。
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):スプリント予選9番手/スプリント7位/予選18番手/決勝リタイア
=評価 4/10:スプリントでは素晴らしかったが、レースでいくつか彼らしくないミスをした。ターン1のインシデントを引き起こし、その後、スピンアウトした。
セルジオ・ペレス(レッドブル):スプリント予選19番手/スプリント20位/予選9番手/決勝17位
=評価 3/10:ようやく予選でQ3に進出したものの、それ以外はまさに大惨事だった。SQ1で敗退、メインレースでは、セーフティカー先導時にスピンを喫した。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):スプリント予選12番手/スプリント15位/予選16番手/決勝15位
=評価 3/10:この週末、フラストレーションに支配されたアルボンは、レースでホイール・トゥ・ホイールのバトルの際に、普段より荒っぽい走りをし、ペナルティを受けた。
ランス・ストロール(アストンマーティン):スプリント予選14番手/スプリント13位/予選15番手/決勝リタイア
=評価 3/10:スプリントではアロンソに近付いたが、予選ではペースが大幅に劣っていた。決勝スタート時にアルボンとの間に接触が起き、その後はマシンバランスに不満を抱え、結局リタイアした。
エステバン・オコン(アルピーヌ):スプリント予選18番手/スプリント14位/予選20番手/決勝リタイア
=評価 2/10:アルピーヌを助けようというモチベーションが全く見られなかった。レースではターン1のインシデントによりリタイアした。