「令夫人」が政権最大のリスクに 【平井久志×リアルワールド】

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2024年12月07日 10:20  OVO [オーヴォ]

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 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は日本では日韓関係を改善に導いたとして人気が高いが、韓国では急速に支持率が低下、任期半ばにして困難な政権運営を強いられている。

 世論調査会社「韓国ギャラップ」が11月5~7日に行った世論調査の結果、支持率は17%にまで低下、不支持は74%で政権発足以来、最高になった。

 不支持の理由としては「金建希(キム・ゴンヒ)夫人を巡る問題」が19%でトップだった。韓国では大統領夫人は「令夫人(ヨンプイン)」と呼ばれることが多い。韓国の大統領は絶大な権力を持つ。そして、大統領と令夫人は一心同体のようにみられる。保守系大手紙「中央日報」は「政権の最大リスクになった大統領夫人」と報じた。

 金建希さんは大統領選挙当時からスキャンダルが多かった。過去の求職活動で経歴を詐称した疑いで謝罪に追い込まれた。さらに株価操作事件への関与疑惑や、インターネットメディアの記者との通話で女性が性的被害を訴える「#MeToo運動」について「表面化するのは金を渡さないからだ」などと発言したことが報じられた。尹錫悦氏は当時、大統領になってもファーストレディーとしての活動を控え「妻の役割」に徹すると話し、選挙戦を乗り切った。

 しかし、実際に令夫人になると、大統領の外遊に同行するなど行動の範囲を広げていった。若い令夫人の登場は、メディアでファッションが話題になるなど、一部ではファンクラブができるなどした。

 だが金建希夫人が2022年9月、ある牧師からブランド品のバッグを贈られる動画が23年11月に公表されると、再び苦境に陥った。牧師側が隠し撮りした動画だったが、大統領夫人になったのに、素性のよく分からない牧師と簡単に会い、ブランド品を受け取ったことが国民の厳しい批判を受けた。

 こうしたことも影響してか、今年4月の総選挙では与党の「国民の力」は300議席中108議席しか取れず、惨敗した。

 そうした中で、大統領選挙前に金建希夫人と政治ブローカーが交わした通信アプリの記録がまた暴露され、夫人が「分別なく騒ぐオッパ(兄さん)を許してください。無知ならあのようになる」と述べ、この「オッパ」が大統領ではないのかと問題になった。さらに野党は、尹錫悦大統領とこの政治ブローカーとの音声記録まで暴露、尹錫悦氏が選挙へ違法に介入したと攻勢を強めている。

 尹錫悦大統領は11月7日に「私の周辺のことで国民に心配をかけて申し訳ない」と謝罪したが、野党などが夫人のことを悪魔化していると反論し、夫人をかばった。だが、国民は投票で大統領を選んだが、夫人を選んだわけではない。夫人の役割にはそれなりの自制が必要な理由だ。

 韓国国会は11月14日、金建希夫人の株価操作への関与疑惑などについて「特別検察官」に捜査させる法案を野党単独で可決した。同じような法案可決は3回目だが、尹錫悦大統領は拒否権を発動するとみられる。国会がこの法案を成立させるには出席議員の3分の2の賛成が必要だが、与党からどれだけ造反が出るかが今後の焦点だ。

 一方、ソウル中央地裁は11月15日、公職選挙法違反の罪に問われた最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表に対し、懲役1年、執行猶予2年の判決を言い渡した。李在明代表はこの他にも4件で起訴されている。韓国国民は尹錫悦政権に愛想を尽かし始めているが、多くの「司法リスク」を抱えた野党代表に拒否反応を示す人も多く、政治不信は深まるばかりだ。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 49 からの転載】

平井久志(ひらい・ひさし)/共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞、朝鮮問題報道でボーン・上田賞を受賞。著書に「ソウル打令 反日と嫌韓の谷間で」(徳間文庫)、「北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ」(岩波現代文庫)など。

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  • 元々部族や階級が入り交じった歪な思想を持った国民性だしな。 光州事件も裏で元特権階級の流れを持つ奴の煽動が原因らしいし。
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