今年の「東京コミコン」のオープニングセレモニーは例年と一味違ったが、最終日午後に行なわれた「マーベル・ギャザリング・ステージ」も同様に異例だった。予定より15分前倒しで、映画『クレイヴン・ザ・ハンター』のプレゼンテーションが急遽開催されたのである。主演アーロン・テイラー=ジョンソンによるPRコメント動画が公開、さらに冒頭8分が世界初上映され、スペシャル感溢れる幕開けとなっていた。
続けてマーベル85周年記念の特別映像上映後、マーベル・コミックス編集長C・B・セブルスキーが登場。マーベルの様々なキャラクターに扮したコスプレイヤーも“アッセンブル”し、セブルスキーとコスプレイヤーによるQ&Aやフォトセッションが行なわれた。
同ステージのトリを飾ったのは、MCUの世界でドクター・ストレンジを演じている俳優ベネディクト・カンバーバッチによるトークイベントだ。初日のオープニングセレモニーでは濃紺色のデニムジャケットにキャラメルカラーのパッチワーク付きパンツ、そこに赤いスカーフを巻き、可愛らしい雰囲気だったカンバーバッチ。しかし、今回は上下ホワイトに薄く色づいたサングラスをかけたスタイリッシュな格好で登場。
最初の質問は、昨年の「東京コミコン」について。最も印象に残っていることについて尋ねられると、「とにかくすべて、です。ここに集まる人々の数も(すごい)ですし、お会いする大勢の方々一人ひとりが素晴らしくゴージャス。そんな皆さんが一堂に介することが本当に素晴らしいと思います」「これだけのたくさんの人たちがいるのに、私は居心地が良く安全だと感じています。それってなかなかないことだと思うのです。そして、ここにいる一人ひとりの方々と私は繋がりを感じています。例えば写真の撮影会やサイン会、手を振っている時など……皆さん一人ひとりと結びつきを持つことができているということ、そしてこの地球に住んでいて『ハロー』と言える、この間柄を実感できていることが素晴らしいなと思っています」と感動的なコメントを述べた。
続いては、マーベル作品に関連した質問が。アベンジャーズメンバーを演じた俳優たちの中でプライベートでも会う人について尋ねられると、一瞬「プライベートだから(言わないよ)」と冗談を飛ばして渋りつつも、トム・ホランドやロバート・ダウニー・Jr.、ジョシュ・ブローリン、マーク・ラファロ、スカーレット・ヨハンソン、トム・ヒドルストンの名を挙げた。
なお、ヒドルストンとはロンドンのご近所さんで、同じく育児に奮闘中なのだとか。映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』で披露した“1400万605分の1のサイン”はアドリブなのか、という質問は「(脚本にあったから)ノー」だったが、ポーズの再現で会場を沸かせていた。
そして、次にドクター・ストレンジに会えるのはいつか、という質問は「私からは言えないです」とコメント。この件に関しては、公式からの新情報を待つほかないようだ。
最後には、「東京コミコン2024」アンバサダーの斎藤工より、コミック原作の役を演じる時に心がけていることについて、という俳優ならではの質問が投げかけられる。カンバーバッチは、「良い質問ですね。原作のある役柄はいわばすでに青写真があるので演じやすいと思います」と話し、このように続けた。「私なりにそのキャラクターがどういう人物なのか、脚本を読む前にじっと見つめてみます。そして、実際に脚本が手に入ってから、(人物を紐解く)糸口がないかという視点で読んで(キャラクターの)背景を創っていき、私の年齢的な面も考えて肉付けをしていきます。それからは脚本家や監督たちやキャストメンバーと対話を行なっていき、イメージを膨らませていきます。まるで旅路のようだと考えています。最初は直感的に『こういう人間なのではないか』と思うのですが、そこから色々と考えて肉付けをするのです」「結局、最初に戻る時もありますが、そういったプロセスを行なっています」。
通訳の方が対応している最中など、客席の前後左右と満遍なく見渡し、大きく手を振ったり、ハートポーズを送ったりと、ファンへの想いを全身で表現していたカンバーバッチ。退場の合図となるダンスミュージックが流れると、指鳴らしをしたりちょっと踊ってみたりと、最後までお茶目な様子でファンたちを大いに喜ばせていた。
(山根由佳)