「“ある新興住宅地を舞台に、集団による同調圧力と忖度の恐怖を描いた衝撃の社会派ミステリー”と聞き、思わず乗せられちゃいましたね(笑)」
とは、江口洋介。主演ドラマ『誰かがこの町で』が12月8日よりスタートする。
「自分がやっている仕事に恥じたくない」
真崎雄一(江口)は政治家秘書だったが、ある出来事によって愛娘を失う。現在は法律事務所で、無感情に淡々と調査を行っている。そんな中、23年前に新興住宅地で起きた一家殺人事件の生き残りだという望月麻希(蒔田彩珠)が訪ねてくる……。
「僕は子どもが20歳を超えて、もう大きいですけど、やっぱり子どもを抱えるといろんなしがらみというか、地域コミュニティーが絡んでくる。それに集団圧力と忖度の恐怖って、別にこういう新興住宅地に住んでいなくても、普段みなさんが抱えている問題だとも思うし。
社会の中で生きていく以上、どうしても絡んできて、その息苦しさと戦いながらみんな生きている。そして、それが度を越すと殺人に至ってしまうという人間の脆さ。見終わった後は、きっと普段は蓋をしていたものに引っかかりを覚えるんじゃないかな」
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その町ではかつて別の少年誘拐致死事件も起きていた。防犯意識が異様に高い住民たちに煙たがられながら調査を進めていくと、第三の事件が……。
「やっぱり重い話ですからね。普段、韓国の恋愛ドラマをよく見ている人にはきついというか、見方が難しいかもしれないけど、3話まで見てくれたら、一気にラストまで行くと思うので!」
事件を追う中で、真崎はわからなくなっていた正義や暗い過去とも向き合っていく。その原動力は“娘に恥じない自分でありたい─”。江口自身は何に対して恥じない自分でありたいのだろう?
「うーん。その物差しは自分ですかね? やっぱり恥ずかしいまねはできないし、“これは俺だからできる”ってこともあるし。逆に“この役は俺じゃなくていいんじゃないかな?”と思っても、引き受けるとついつい夢中になっている自分もいたりして。それはやっぱり、自分がやっている仕事に恥じたくないからだと思うんですよね」
やや意外だが、連ドラの主演は約4年ぶり。脇でも輝く独特の存在感はさすがだが、主演と脇役の違いを聞いてみると、
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「脇でも素晴らしいでしょ? いやいや、ごめんなさい。ちょっと照れちゃって(笑)。それほど違わないって最近は思います。前は“すごく違う”と思っている時期もあったけど。その役に対して、何か自分の中で1個でもあればね、意外とできちゃうなと気づいて。ここ3〜4年はオファーが来た役はなるべく受けようと、頑張ってきたかな。
去年ぐらいからドラマもちょこちょこやっているし。社会派ばかりをやって息苦しくなったこともあったけど、春に放送された『からかい上手の高木さん』ではデビュー間もない子たちが現場にいっぱいいて。“可愛いな〜”なんて思いながら芝居をやっていくのも楽しかったし。
“ちょっとやってみようか”とフットワーク軽く、どこまでできるかを試してきた感じはありますね。その時々で“主演をやりたいな”“脇でちょっといいところだけ出ようかな”もあるけど(笑)、両方ができていると、飽きずに行ったり来たりができるんだよね」
行ったり来たりという意味では、音楽活動も当てはまる。アーティストデビュー35周年を迎えた昨年、音楽活動を本格再開。10月にはミニアルバム『RIDE ON!』を発売した。パッケージ作品のリリースは26年ぶりだ。
「作ってきた曲がたまったからというのもあるけど、“残していきたい”とすごく思うようになった。そして、自ら“区切る”という意識も。音楽のほうでエネルギーをグワーッと入れて撮影現場に戻ると、すごく新鮮に台本が開けたりする。
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だから自分のイメージだとか主役だとか、狭くしないほうがいいと思って。やっぱり、いろんなことに手を出すほど広がっていく。全部やってよかったと思うし、やったことによってまたちょっと違うものもやってみたい欲が出てきています」
12月末に57歳を迎えるが、江口洋介はまだまだ拡大中だ。
行きたい場所は?
「涼しくなって、やっと身体が動くようになってきて。“四季があるのはいいな”とつくづく思ったり。今年の夏の、あの猛烈な暑さのときには“一体、頭はどうなってたんだ?”と思うくらい、ボーッとしてましたから(笑)。やっぱり夏場のロケはこれから考えていかないといけないですよね。
秋や冬の味覚もいいなと思うし、京都で紅葉をゆっくり見たりもしたいし。けっこう植物は、特にサボテン系なんかは好きなんです。わびさびの世界の中で精神統一したり、のんびり散歩をしたり。何事にも追われずゆっくりしたいです(笑)」